昔の私は、本当に頭の使い方が分かっていませんでした。
外資系コンサルティングファームに入ったものの、最初は本当に何もできませんでした。
パソコンも得意ではない。
資料も作れない。
会議で何を話せばいいか分からない。
そもそも、何をどう考えればいいのかも分からない。
新卒研修でも、周りの同期がどんどん発言している中で、私はほとんど何も言えませんでした。
グループワークでも同じです。
何を考えればいいのか分からない。
何を発言すればいいのか分からない。
自分の意見が正しいのかも分からない。
周りが優秀に見えて、自分だけが置いていかれているように感じていました。
資料を作っても直される。
考えが浅いと言われる。
論点がずれていると言われる。
会議でもうまく話せない。
正直、私は世界一コンサルに向いていないのではないかと思っていました。
でも今は、考えること、形にすること、戦略を立てること、人に伝わる資料を作ることが、楽しくてしょうがないと感じる時があります。
最初からできたわけではありません。
むしろ、何もできなかったところから、怒られ、直され、考え続ける中で、少しずつ「頭の使い方」を覚えてきました。
その中で、私にとって大きかったのが、エマソンの「自己信頼」という考え方でした。
エマソンとは誰か
エマソンとは、ラルフ・ウォルドー・エマソンというアメリカの思想家です。
簡単に言うと、
「他人の正解ばかりを追うのではなく、自分の中にある声や直感を大事にしなさい」
という考え方を、とても深く伝えた人です。
エマソンは、アメリカの文学や思想に大きな影響を与えた人物です。
難しく聞こえるかもしれませんが、私なりにすごく簡単に言うと、エマソンの考え方はこうです。
自分の中にふっと浮かんだ感覚を、簡単に捨てるな。
「これは大事かもしれない」
「これは違うかもしれない」
「この方向が良いかもしれない」
そういう自分の中の小さな声を、ちゃんと拾いなさい。
私は、エマソンの「自己信頼」をそのように受け止めています。
ただし、これは「自分の思いつきが全部正しい」という意味ではありません。
自分の直感を拾う。
でも、そのまま信じ込むのではなく、ちゃんと考える。
データや事実で確認する。
人に伝わる言葉にする。
そこまでやって初めて、自分の直感は仕事で使えるものになる。
私はそう思っています。
直感とは、ただの思いつきではない
仕事をしていると、ふとこう思うことがあります。
「これは売れるかもしれない」
「この切り口は面白いかもしれない」
「この説明では伝わらないかもしれない」
「この人の本当の強みは、ここにあるかもしれない」
「このサービスは、見せ方を変えたらもっと伸びるかもしれない」
こういう感覚が、最初にふっと浮かぶことがあります。
私はこの感覚を、とても大事にしています。
なぜなら、そこに自分なりの視点や、勝ち筋の種があることが多いからです。
ただし、直感だけでは仕事になりません。
「なんとなく良いと思います」
「なんとなく売れそうです」
「なんとなくこっちが良いです」
これだけでは、相手は納得できません。
だから、直感を拾った後に、ちゃんと理由を考える必要があります。
右脳でひらめき、左脳で説明する
私の頭の使い方を分かりやすく言うと、
右脳でひらめき、左脳で説明する。
この感覚に近いです。
もちろん、これは厳密な脳科学の話ではありません。
直感と論理を分かりやすく説明するためのたとえです。
まず、直感でつかむ。
「これはいけそう」
「これは違う」
「ここに違和感がある」
「この切り口なら伝わる」
「この方向なら人が動く」
こういう感覚を拾います。
次に、それを論理で整理します。
なぜそう思ったのか。
誰にとって価値があるのか。
何に困っている人がいるのか。
競合は何をしているのか。
どこにチャンスがあるのか。
なぜ今やる意味があるのか。
こうやって、ひらめきを説明できる形にしていきます。
直感だけだと、ただの思いつきになります。
でも、論理だけでも、人の心が動かないことがあります。
大事なのは、直感と論理の両方です。
自分の中に浮かんだ感覚を拾う。
それの理由や正しさを問う。
データや事実で確認する。
人に伝わる形にする。
これが、私にとっての「考える」ということです。
戦略は、直感・データ・腹落ちがそろった時に強くなる
私が戦略や企画を作る時に大事にしていることがあります。
それは、直感・データ・腹落ちの3つです。
まず、自分の中に「これはいけるかもしれない」という直感がある。
次に、市場や競合やお客様の情報を見ても、その直感を説明できる。
最後に、自分自身が「これは本当に良い」と腹落ちしている。
この3つがそろった時に、人に語れ、人が動く戦略になると思っています。
逆に、データだけでは弱いです。
数字はあるけれど、自分が本当に良いと思えていない。
資料はきれいだけれど、聞いている人の心が動かない。
それでは、戦略として弱いと思います。
一方で、直感だけでも弱いです。
「自分は良いと思います」だけでは、相手は動けません。
だから大事なのは、
自分の直感。
客観的な事実。
人が動けるストーリー。
この3つをつなげることです。
私はこれが、戦略を作る時の大事な頭の使い方だと思っています。
読書をすると、直感が浮かびやすくなる
この頭の使い方に気づけたことは、自分にとってかなり大きかったです。
そして、その直感を育てる上で大事だったのが読書です。
私は、本を読む目的は、知識を増やすことだけではないと思っています。
もちろん、本を読めば知識は増えます。
でも、それ以上に大きいのは、本を読むことで、アイデアや直感が浮かびやすくなることです。
本を読むと、自分の頭の中に言葉や考え方の材料が増えていきます。
すると、仕事で何かを見た時に、
「この話、もっと深く考えられそうだ」
「表面的にはこう見えるけど、本質は別のところにあるかもしれない」
「この課題は、違う角度から見るともっと面白くなるかもしれない」
「この人やサービスの強みは、まだ言葉になっていないだけかもしれない」
「この違和感を掘ると、新しい企画や戦略につながるかもしれない」
という形で、頭が動きやすくなります。
つまり、本は誰かの考えをそのまま使うためのものではありません。
自分の考えを深めるための材料であり、発想を広げるための燃料です。
本を読むことで、頭の中に問いが増える。
問いが増えると、物事を深く見られるようになる。
深く見られるようになると、直感やアイデアが浮かびやすくなる。
私は、この感覚に気づけたことが、自分にとって大きかったと思っています。
暗記しようとしなくていい。
一冊の中で、何か一つでも自分の仕事や人生につながる考え方が見つかればいい。
そう考えるようになりました。
ひらめきは、スマホにメモする
もう一つ大事なのが、ひらめきをメモする習慣です。
人は、良いことを思いついてもすぐに忘れます。
歩いている時。
電車に乗っている時。
お風呂に入っている時。
本を読んでいる時。
人と話している時。
仕事の資料を見ている時。
ふとした瞬間に、
「これ、使えるかもしれない」
「この切り口、面白いかもしれない」
「この言葉、あとで使いたい」
「この考え方、仕事に使えるかもしれない」
と思うことがあります。
でも、そのままにしておくと、だいたい忘れます。
だから私は、スマホにメモすることが大事だと思っています。
完璧な文章でなくていいです。
単語だけでもいいです。
一言だけでもいいです。
違和感だけでもいいです。
大事なのは、自分の中に浮かんだ小さな直感を逃がさないことです。
スマホにメモすると、その考えが頭に残りやすくなります。
後で見返した時に、
「あの時のメモは、この仕事に使える」
「あの時の違和感は、こういう意味だったのか」
「あの一言を使えば、この資料はもっと伝わる」
と思うことがあります。
ひらめきは、その場で完成していなくていいです。
まず捕まえる。
メモする。
後から育てる。
これだけでも、頭の使い方はかなり変わります。
相手の指示に応えるだけでなく、自分の見立てを加える
直感を拾い、考え、メモする習慣がついてくると、少しずつ仕事の中でも自分の考えが出しやすくなります。
ただ、仕事で大事なのは、いきなり自分の意見を言うことではありません。
まずは、相手の指示に的確に応えることです。
相手が何を求めているのか。
何を作ってほしいのか。
何を判断したいのか。
どこまで整理すればよいのか。
ここを外してしまうと、どれだけ自分なりの意見を出しても、仕事としてはズレてしまいます。
だから最初は、言われたことにきちんと応える。
これはとても大事です。
ただ、そこから一段上に行くには、言われたことをやるだけでは足りない場面があります。
相手の指示に応えた上で、
「この順番の方が伝わりやすいと思います」
「この説明だと少し分かりにくいので、先に結論を出した方が良いと思います」
「このサービスは、機能よりもお客様の悩みから伝えた方が刺さると思います」
「この企画は、若い人向けよりもシニア向けにした方が可能性があると思います」
「データを見ると、こちらの方向も検討できると思います」
というように、自分なりの見立てを加える。
これができるようになると、仕事の価値が変わります。
ただの作業者ではなく、相手の目的を前に進める人になれるからです。
もちろん、最初から鋭い意見を出す必要はありません。
最初は小さくていいです。
「こうした方が見やすいと思います」
「この順番の方が分かりやすいと思います」
「この言葉の方が伝わると思います」
そのくらいでも十分です。
大事なのは、自分の中に浮かんだ小さな違和感や直感を、そのまま消さないことです。
そして、それを相手に伝わる形にすることです。
直感だけだと、ただの感想になります。
でも、理由を考え、相手にとっての意味を整理し、判断しやすい形にすると、それは提案になります。
この力がつくと、仕事はかなり面白くなります。
自分の頭を使って、相手の成果に貢献できるようになるからです。
AI時代だからこそ、人間の直感には価値がある
最近は、AIを使えば文章も資料も企画も作れる時代になりました。
AIは本当に便利です。
分からないことを整理してくれる。
文章を整えてくれる。
アイデアをたくさん出してくれる。
資料のたたき台も作ってくれる。
私自身も、AIはとても大事な壁打ち相手だと思っています。
ただ、私はAIが人間とまったく同じように新しいものを生み出せるとは思っていません。
AIは、過去の大量のデータや言葉をもとに、もっともらしい答えを作るのがとても得意です。
でも、人間の直感は少し違うと思っています。
人間は、悩みます。
迷います。
失敗します。
人の表情を見ます。
自分の体験とつなげます。
なんとなく違う、なんとなく良い、という感覚を持ちます。
そして、考え抜いた後に、ある日ふっと答えが浮かぶことがあります。
数学者のアダマールは、数学の発見について書いた本の中で、数学者が問題について考え抜き、悩み、しばらく時間を置いた後に、突然ひらめくことがあると紹介しています。
有名な数学者であるガウスやポアンカレも、考え抜いた末に、ある瞬間に解決の糸口が見えたような話で知られています。
これは数学の話ですが、私は仕事や企画にも似たところがあると思っています。
考え抜く。
悩む。
情報を見る。
人の反応を見る。
本を読む。
メモをする。
また考える。
そうしているうちに、ある時、
「これだ」
「この切り口だ」
「この言葉なら伝わる」
「この順番なら人が動く」
と浮かぶことがあります。
この感覚は、ただ情報を組み合わせるだけでは出てこないものだと思っています。
人間が、現実の中で悩み、感じ、考え続けたからこそ出てくるものです。
私は、良い企画や良い戦略は、人間の気持ちや自然の原理に合っているものだと思っています。
人はなぜ動くのか。
なぜ欲しいと思うのか。
なぜ応援したくなるのか。
なぜ違和感を覚えるのか。
なぜこの言葉なら伝わるのか。
この感覚をつかむには、人間の直感が必要だと思います。
だから、AI時代になっても、人間が考える価値はなくならない。
むしろ、AIが何でも作れる時代だからこそ、
「自分は本当にこれが良いと思うのか」
「この切り口で人は動くのか」
「この言葉は相手に届くのか」
「この企画は本当に面白いのか」
を判断する人間の直感が、より大事になると思っています。
AIは答えを出す道具ではありません。
自分の直感を確かめる相手。
自分の考えを磨く相手。
自分の中にある違和感をはっきりさせる相手。
そう使うことで、AIはとても強い味方になります。
でも最後に決めるのは、自分です。
AIが出した答えに対して、
「これは違う」
「もっと現実的に」
「もっと分かりやすく」
「もっとファクトから考えて」
「この切り口の方が人が動く」
「この表現の方が自分は腹落ちする」
そうやって問い直す。
そのやり取りの中で、自分の考えがはっきりしていきます。
AIが考えてくれるのではなく、AIを使うことで、自分の考える力が磨かれる。
これが、これからの時代に大事な頭の使い方だと思っています。
考える力は、才能ではなく訓練で身につく
私は、考える力は一部の頭のいい人だけのものではないと思っています。
昔の私は、頭が悪かったというより、頭の使い方を知らなかったのだと思います。
考える力は、特別な才能ではありません。
直感を拾う。
理由を考える。
情報を集める。
話を整理する。
言葉にする。
資料にする。
人に伝える。
相手が動ける形にする。
この流れを何度も繰り返すことで、少しずつ身につくものだと思っています。
考える力が身につくと、仕事の幅が広がります。
課題を整理できる。
提案ができる。
資料が作れる。
人に説明できる。
企画が作れる。
戦略が作れる。
事業を前に進められる。
そして、この力は稼ぐ力にもつながります。
なぜなら、多くの仕事は、結局のところ「曖昧なものを整理して、前に進めること」だからです。
相手が何に困っているのかを整理する。
何をすべきかを考える。
それを分かりやすく伝える。
実行できる形にする。
この力がある人は、どんな仕事でも価値を出しやすくなります。
今できないからといって、向いていないとは限らない
私は、最初から考える仕事が得意だったわけではありません。
むしろ、最初はまったくできませんでした。
でも、怒られながら、直されながら、少しずつ頭の使い方を覚えてきました。
その結果、今では考えること、形にすること、戦略を立てること、人に伝わる資料を作ることが、自分の仕事になっています。
もし今、
仕事で何を考えればいいか分からない。
会議で何も発言できない。
自分の意見が出てこない。
資料が作れない。
周りと比べて、自分だけレベルが低い気がする。
そう感じている人がいたとしても、大丈夫です。
今できないからといって、向いていないとは限りません。
ただ、まだ頭の使い方を知らないだけかもしれません。
自分の中にある小さな直感を拾う。
理由を考える。
言葉にする。
人に伝わる形にする。
その繰り返しで、考える力は少しずつ鍛えられます。
AIが進化しても、人間の直感や考える力には価値があります。
むしろ、AIがある時代だからこそ、自分の中にある違和感やひらめきを拾える人が強くなると思います。
何もできなかった自分でも、少しずつ考える力を仕事にすることができました。
だから、同じように悩んでいる人にも伝えたいです。
自分の中にある小さな直感を、簡単に捨てなくていい。
その小さな感覚を拾い、考え、言葉にして、人に伝える。
その力を、一緒に磨いていきましょう。