BCP(業務継続計画)は作ったけれど、訓練まで手が回らない。
介護や障害福祉の事業所では、BCPの研修と訓練を、施設・居住系では年2回以上、訪問・通所などでは年1回以上行うことが目安になっています。それでも「準備が大変そう」「全員が集まれない」と、後回しになりがちです。
この記事では、机上訓練を30分で終わらせる進め方を、台本の例とあわせて紹介します。現役の看護師として、病棟の災害訓練や感染対策の訓練に参加してきた経験をもとにまとめました。
訓練は「机上」でもかまわない
訓練というと、避難や防護具の着脱など、実際に体を動かすものを思い浮かべるかもしれません。しかし国の通知では、訓練は机上を含めて実施の方法を問わないとされています。
机上訓練とは、「こういうことが起きたら、誰が何をするか」を、BCPを見ながら話し合う訓練です。会議室とBCPがあればでき、利用者のケアを止める必要もありません。
ただし、机上だけでなく実地の訓練も組み合わせることが望ましいとされています。まずは机上訓練を確実に続け、余裕が出てきたら、防護具の着脱や嘔吐物の処理などの実地訓練を加えていくのがおすすめです。
30分の時間割
30分で終わらせるコツは、扱う「状況」を3つに絞ることです。
・5分:進行役が訓練の目的と前提(利用者数・職員数・時間帯)を説明する
・20分:状況を3つ読み上げ、1つにつき約6分で「誰が何をするか」を話し合う
・5分:ふり返り。見直すことを決め、担当と期限を決める
参加者は管理者と各職種の代表など、4〜8人程度が話し合いやすい人数です。全員が集まれない場合は、訓練の内容と結果をあとで回覧すれば、ほかの職員にも共有できます。
台本の例:感染症の発生
冬の流行期の前に行う、感染症の訓練の例です。進行役は「状況」を読み上げ、参加者に「問い」を投げかけます。
前提
利用者【 】名、職員【 】名。地域でインフルエンザが流行し始めている。
状況1:朝9時、利用者Aさんが38度の発熱。昨日は他の利用者と一緒に食事をしていた
問い:最初に誰に報告しますか。Aさんをどこで、誰が対応しますか。
状況2:翌朝、職員2名から発熱で休むと連絡。今日出勤できるのは、いつもの6割
問い:BCPの業務の優先順位を見て、続ける業務・減らす業務・休む業務を決めてください。
状況3:マスクとガウンの在庫が3日分しかない。家族から「面会できるのか」と問い合わせが続く
問い:物資をどこから確保しますか。家族への説明は、誰が、どんな内容で行いますか。
状況を3つに絞ると、話し合いが深まりやすくなります。時間に余裕がある回は、状況を増やして60分の訓練にしてもかまいません。
進行役のコツ
進行役は、答えを言わないことが大切です。次の3つを意識すると、話し合いが進みます。
・「BCPのどこに書いてありますか」と聞き、必ずBCPを開いて確かめてもらう
・答えが割れたら、どちらが正しいかではなく「BCPに書いてあるか」を確認する
・書いてあれば○、あいまいなら△、書いていなければ×を付けていく
訓練の成果は、うまく対応できたことよりも、「BCPに書いていなかったこと」を見つけることです。×が多いほど、BCPを良くするための材料が集まったと考えてください。
記録に残すこと
訓練をしても、記録がなければ「実施していない」と見なされてしまいます。次の5つを残しておきましょう。
・実施した日時と、参加者の名前・職種
・訓練の方法(机上訓練)と、使ったシナリオ
・○△×の結果と、出てきた意見
・BCPの見直す箇所(どの章を、どう直すか)と、担当・期限
・BCPを直したら、その日付と内容(見直しの記録)
参加できなかった職員には、記録を回覧して確認のサインをもらうと、全員に共有したことも残せます。
1年のまわし方
年2回行う場合は、時期とテーマを分けると、毎回違う課題が見つかります。
・6月ごろ:台風・大雨と停電の訓練(台風シーズンの前に)
・11月ごろ:感染症の発生の訓練(冬の流行期の前に)
年1回の場合は、年ごとに感染症と自然災害を交互に行う方法もあります。感染対策の研修・訓練とまとめて行えば、集まる回数も減らせます。
最後に
本記事は、BCPの訓練の進め方の参考として情報を整理したものです。研修・訓練の頻度や方法は、サービス種別や指定権者(都道府県・市町村)の基準によって異なります。運用の前に、指定権者の最新の基準をご確認ください。
なお、この記事で紹介した進め方は、「介護・福祉のBCP研修と訓練資料7点」にまとめて出品しています。進行表つきの訓練シナリオ3本(感染症の発生/台風と停電/夜間の地震)、○△×を書き込める机上訓練ワークシート、訓練の実施記録とBCP見直し記録の様式が入っています。訓練の準備に時間をかけられない場合は、ご覧ください。