最近、こんな数字を見ました。
米NBCニュースの最新調査で、18〜29歳の47%が「選べるなら過去に生きたい」と答えたそうです。 (そう、Z世代の約半分が、です)
調査期間は2026年3月30日〜4月13日。回答者32,433人、うちZ世代だけで3,009人をサンプリングした、そこそこガチな調査。 内訳は「50年以内の過去」が33%、「50年以上前」が14%。 で、未来に行きたい?たった15%でした。
あれ。
SNSと一緒に生まれて、スマホと一緒に育った世代が、なぜ過去に行きたいんだろう。
——
もうひとつ、別の数字も並べさせてください。
ハリス・ポール(社会心理学者ジョナサン・ハイト氏の研究チームと連携)が2024年に1,006人のZ世代に聞いた調査では、40%が「ソーシャルメディアは存在しなければよかった」と答えました。
プラットフォーム別にすると、もっと明確で——
X(旧Twitter):50%
TikTok:47%
Snapchat:43%
Instagram:34%
(SNSネイティブが、SNSを葬りたがってる)
でも面白いのはここから。同じ調査で、
YouTube:15%
スマートフォン:21%
メッセージアプリ:19%
つまり彼ら、テクノロジー全般を否定してるんじゃない。 「SNS的なつながり方」だけを否定してる。
ここ、すごく大事なところです。
「投稿しない、眺めるだけ」34%という数字
ハリス・ポールが今年3月(2026年3月)に出した最新調査「TikTok Troubles」で、もっと刺さる数字が出ました。
Z世代の34%が「投稿も返信もしない、ただ眺めるだけ」と回答。 これ、全世代で最も高い数字です。
そして31%が「見たいから見てるんじゃない、習慣で見ている」。
(これ、ちょっと、自分の話してます?)
ついでに、Z世代の82%は、SNSを「依存的(addicting)」という言葉で説明しました。 60%は1日4時間以上スクロールしている。
整理するとこうなります。
「過去に行きたい」47%。 「SNSなければよかった」40%。 「眺めるだけ」34%。 「習慣で見ている」31%。 「依存的だ」82%。
これ、SNSを楽しんでいる世代の数字、ですか?
で、なぜ若い人たちは「昔」に行きたいのか
ここで、ニュースに出てきた本人たちの声を聞いてみてください。
コロラド州の20歳、ベン・アイザックス氏は、NBCニュースにこう語りました。 スマホは、人々が対面で会話する能力や、電話の届かない場所に身を置く能力を奪った、と。
ミシガン州の25歳、アレックス・アバナシー氏は、1990年代の「iPod」を引き合いに出しました。 「複数の機能を詰め込んだスーパーコンピュータではなく、ひとつの目的のために設計されたテクノロジーには価値がある」
(なんか、すごい大人っぽいこと言いますね、25歳)
つまり彼らが過去に欲しいものは、こういうことらしいです。
電話の届かない場所
ひとつの目的だけのために存在するモノ
対面で話せる時間
比較される前の自分
これ、本当に過去に行かないと、手に入らないものなんでしょうか。
——
もうひとつ、同じNBC調査の数字を並べさせてください。
Z世代の**80%**が「米国は間違った方向に進んでいる」と答えています。全年代で最も高い数字です。 **62%**が「自分たちの世代の生活は、前の世代より悪くなる」と感じている。 楽観視できているのは、たった25%。
要するに、彼らは過去に憧れているんじゃない。 未来に絶望していて、過去に避難しているんです。
(逃避じゃなくて、避難。ここ、ちょっと違います)
心理学者クレイ・ラウトレッジ氏は、こう分析しています。 Z世代が憧れる時代は、SNSとコンピュータが日常生活を仲介し始める直前の時代だ、と。
つまり、彼らが渇望しているのは、過去そのものじゃない。 比較が常時インストールされる前の、自分の時間です。
誰の評価も入ってこない、自分のテンポ。 スクロールしない夜、スクロールされない朝。 "いいね"の数字に変換されない、ただの一日。
これ、過去に戻らなくても、取り戻したいものですよね。
そして同時に、私たちの夜と、地続きの感情でもあります。
昨夜、何分スクロールしてましたか
ここで、あなたに聞きたいんです。
昨夜、ベッドに入ってから、何分スクロールしてました?
その時間、楽しかったですか。何か得るものがありましたか。 それとも、なんとなく開いて、なんとなく閉じた?
「投稿も返信もしない、眺めるだけ」——これ、Z世代の34%だけの話じゃないですよね。
夜中にベッドの中で、無言でフィードを下から上に流す指。 誰の何を見ていたかも、覚えていない。 でも閉じられない。 そして閉じたあと、なぜかちょっと疲れている。
(あれ。誰のために、何のために、この時間を使ったんだっけ)
誰にも頼まれてない夜勤
私はこの時間に、名前をつけることにしました。
「誰にも頼まれてない夜勤」
時給ゼロ。 評価する人もいない。 シフトも自分で組んでないのに、毎晩なぜか出勤している。 そして退勤時間も、自分で決められない。
すごい職場ですよね。 ブラック企業もびっくりです。
しかも雇い主は、自分自身。 (辞めさせてくれない上司も、自分)
これを月30日やったら、月あたり何十時間。 年単位で見たら、何百時間。
(数えるのやめましょうか、ちょっと怖くなってきました)
なぜ「毎日が早く感じる」のか
ここで、脳の話を少しだけ挟ませてください。
人間の意識って、たった5%なんだそうです。 残りの95%は、無意識。
5感(目・耳・鼻・舌・皮膚)から入った刺激は、扁桃体(情動)→海馬(記憶)→理性(言語化)の順に処理される。 理性で「今日のSNS楽しかったな」って判断する前に、体はもう「疲れた」「不快」「むなしい」を受け取り終わっている。
つまり—— 変えるべきは性格じゃなくて、5感に入れる刺激の方なんです。
それから、もうひとつ。 「タキアサイキア(時間知覚の遅延)」という現象があります。 感覚処理が活発だと、時間がスローに感じる。 子供の頃、夏休みが長く感じた、あれです。
逆に、大人になって毎日が早く感じるのは—— 感情の振れ幅が、狭まっているサインなんだそうです。
毎晩同じアプリ、同じレコメンド、同じ消費。 予測可能な刺激しか入ってこない時間が増えると、記憶が固定されない。 だから「最近、何してた?」って聞かれて、何も思い出せない。
(怖い話してますね、すみません)
Z世代が発明していた処方箋
で。
ここまで暗くしてしまったので、解決策の話をします。
もう一度、Z世代の数字を見てください。
否定されたのは、X(50%)、TikTok(47%)、Snapchat(43%)、Instagram(34%)。 否定されなかったのは、YouTube(15%)、メッセージアプリ(19%)、スマホ(21%)。
つまり彼らが嫌っているのは、「見られる/比べられる/いいねされる/されない」という構造のあるアプリだけです。
「全部やめろ」とは、誰も言ってない。 「見られ方をやめろ」と言ってる。
これ、すごく繊細な区別だと思います。 そして、すごく実用的です。
私たちもそれでいいんじゃないか、というのが今夜の結論です。
スマホを捨てる必要はない。 SNSを全部消す必要もない。 ただ、「夜勤シフト」に入っているアプリを、ひとつだけ確認する。
それは、見たいから開いてますか? それとも、習慣で開いてますか?
「習慣で開いてる」と気づいたアプリは、今夜のあなたのシフトから、外していい。 通知を切るだけでもいい。ホーム画面の二ページ目に追放するだけでもいい。 たぶん誰も、困らないです。
(雇い主の自分が、ちょっとだけ抵抗してくると思いますが)
Z世代は、SNSと一緒に育った世代です。 その彼らが、SNSのなかった時代に憧れている。
これは、私たちより20歳若い人たちが、先に発見してくれた処方箋です。
「全部やめる」じゃなくて、「見られ方をやめる」。 「過去に戻る」じゃなくて、「見たいものだけ選ぶ」。
あなたが今夜、退勤していいシフトは——
("見たいから"じゃなくて、習慣で開いてるアプリ、ありますか?
コメント欄に「Instagram」とか「X」とか、アプリ名だけでOKです。 なんなら絵文字ひとつでも。一文字でも。
私から先に書いておきますね——「X」です。 昨夜、気づいたら1時間半溶かしていました。 何を見たか、ひとつも思い出せません。
退勤します。おやすみなさい)