正直に言うと、しばらくの間、私は四柱推命のことを誰にも話せませんでした。
採用コンサルタントという、ロジックと数字の世界で生きている人間が「占いで立ち直りました」なんて言えるわけがない。そう思っていたんです。
隠していた、2年間
社内表彰を受けてからも、私の鑑定は完全にプライベートな話でした。
友人に頼まれれば見る。家族の相談に乗る。でも仕事では一切口にしない。
「信用を失いたくない」という気持ちと、「でもこれは本物だ」という確信が、ずっと胸の中で綱引きをしていました。
転機は、ある候補者との面談でした。
限界まで追い詰められた候補者
Aさんは34歳の男性エンジニアでした。
技術力は高い。コミュニケーションも問題ない。でも、3社連続で最終面接で落ちていました。
「もう自分には市場価値がないんじゃないか」
面談室で、Aさんは静かにそう言いました。目が死んでいました。
私はいつものようにキャリアの棚卸しをして、志望動機の整理をして、面接対策をしました。でも話を聞きながら、ずっと気になっていたことがあった。
Aさんが落ちた3社は、全部、体育会系の営業文化が強い会社でした。エンジニア職での応募なのに、なぜかそういう会社ばかり選んでいる。
「Aさん、少し聞いてもいいですか。なぜこういうタイプの会社を選んでいるんでしょう」
「……給料が高いからです。あと、なんとなく、自分を変えられるかなと思って」
「自分を変えたい」の罠
その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かがつながりました。
Aさんは自分の気質を「弱さ」だと思っていた。だから真逆の環境に飛び込むことで、自分を矯正しようとしていた。
でも四柱推命的に言えば、それは種に「早く大木になれ」と言うようなものです。種は種のまま、適切な土と水と光を与えられてはじめて育つ。
私はそのとき初めて、仕事の場で四柱推命の話をしました。
「突然変なことを言うようですが、少し聞いてもらえますか」
Aさんの生年月日を聞いて、簡単に命式を説明しました。彼の日主は「己(つちのと)」。大地のエネルギー。じっくりと深く、信頼を育てることに長けたタイプ。
「Aさんが落ちているのは、能力の問題じゃないと思います。気質と真逆の環境を選び続けているからだと思う」
Aさんは黙って聞いていました。
3週間後
Aさんの志望先を、少し変えました。
スピード感より丁寧さを重んじる会社。技術への敬意がある文化。チームで長期的にものを作る環境。
1社目で内定が出ました。
「なんか、面接が全然怖くなかったです。自分のこと、ちゃんと話せた気がして」
Aさんからのメッセージを読みながら、私は祖母のことを思い出していました。
気質に合う場所に人を導くことが、本当の意味での「採用」なのかもしれない。
隠すのをやめた
その日から、私は少しずつ、四柱推命を仕事に組み込むようにしました。
もちろん全員に話すわけではありません。でも、候補者が行き詰まっているとき、なぜかうまくいかないとき——そういう場面で、命式という「別の地図」を持っていることが、確実に助けになっていました。
「占いに頼る人」と思われる怖さは、今もゼロではありません。
でも、Aさんのような人を一人でも減らせるなら、そんな怖さより大切なことがあると思っています。
自分の気質を知らないまま、間違った場所で消耗し続ける人を。
「なぜ私だけうまくいかないんだろう」と、一人で抱えている人を。