「思ってたのと違う」が止まらない|整骨院の予約管理を紙からAIに変えた話

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1. 紙の予約表とExcel。今の整骨院のリアル


弟が整骨院の院長をしています。
しばらく通ううちに、ふと予約管理を見せてもらって驚きました。紙の予約表とExcel。患者さんからの予約は電話・窓口・LINE・HotPepperから入ってきて、それを手書きで一枚の予約表に書き写している。ホームページもまだない。
「これ、毎日やってるの?」と聞いたら「うん」と返ってきました。
私は放射線技師として15年、医療現場で「人が頑張ることでなんとか回っている」業務をたくさん見てきました。整骨院の現場もまさにそれでした。
「これ、AIでなんとかできるんじゃないか」——そこから始まりました。

2. 院長の希望「全部まとめて、AIで自動でやってほしい」


院長にヒアリングしました。出てきた希望はこんな感じ。

・LINE予約、Web予約、HotPepper予約を一つにまとめたい
・できればAIで全部自動でやってほしい
・ホームページもこれから作る

「全部AIで自動予約」は正直、現実的じゃありません。技術的には可能でも、高齢者も多く、スマホを持っていなければ電話か窓口予約が基本。AI自動予約が逆に混乱の元になり、運用の実態と合わない。「全部できる」と「全部やる価値がある」は違うんです。
そこは正直に伝えて、「予約システムとホームページをまず作ろう」と決めて、私はプロトタイプの設計に入りました。

3. プロトタイプを見せた瞬間「う〜ん…」が始まった

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聞いた要件をもとに、最初のプロトタイプを作り、院長に見せました。
個人的にはこの時点で、「あれも必要。これもあったら喜ばれるはず」と考え抜いて機能を盛り込んで、良い出来栄えだったと思います。
すると——
「う〜ん…」
ここから「なんか違う」が止まらなくなります。笑

「固定で毎週来る患者、毎回この施術メニューで決まってる、それを別管理にしたいんだよね」
「LINEの自動応答、入れてくれたけど、、、やっぱり自分で返信したい」
「予約の時間枠、マウスで摘まんで伸ばせるように(自由に変更)できない?」
「祝日の営業時間は普段と違うんだよ」
「あ、それと院の休診日もスタッフのシフトと別で管理してほしい」
「スタッフの急な休暇もあるから、その日だけ予約止められるようにしないと」

聞いていなかった要件が、プロトタイプを目の前にして次から次へと出てきました。そう、紙なら一瞬で対応できることでもシステムではそうはいきません。事前にきっちり決めておかないと...。ヒアリングのときに、事細かに「こういったケースではどうする?」などのすり合わせは行っていたのに、です。

4. 院長も初めて、私も初めて


ここで気づいたんです。
院長もシステム導入は初めて。「何を伝えるべきか」がそもそも分からない——だから事前にヒアリングをしても、本当に必要な要件は出てこない。
実物を見て初めて「あ、これだとうちは回らない」「現場の実態と合ってない」と分かる。これは院長が悪いんじゃなくて、当たり前のことだったんです。
私もそこに気づくのに時間がかかりました。
そこから方針を変えました。**「何が欲しいか」を聞くのをやめて、「1日の業務の流れを見せて」**とお願いしました。受付の動き、施術中の電話対応、会計の流れ——全部見せてもらいました。
そこで初めて、本当の課題が見えてきました。

5. たどり着いた形:院・スタッフ・患者、すべてを管理して初めて「予約システム」

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ただ、要望のすべてをそのまま実装したわけではありません。
私自身、医療従事者です。顧客の個人情報や予約枠を「誰でも簡単に動かせる」状態にしてはいけないことを知っています。
たとえば「予約時間の枠を自由に伸縮できるようにしたい」という要望。便利には見えますし、現場の忙しさを考えれば絶対に入れたい神機能ですが、それでは誤操作のリスクしかない。「個人情報も誰でも見られる状態」は論外です。
そういう箇所は**「これは違います」と院長にもはっきり伝え**、操作にロックをかけたり、権限を分けたり、ワンクッション挟む設計にしながら、”安全に使える形”に整えていきました。
お客様の声を全部聞くこと=良いシステム、ではない。これも、医療現場を15年見てきたからこそ言えることだと思います。
そうして完成したのが、今動いているシステムです。

・LINE・Web・HotPepperの予約を一元管理
・LINEは「AIが予約ボードを先に見て空き枠を提案するサポート役」に切り替え(自動応答ではなく、人が判断する補助にした。)
・LINEのメッセージを読み取って予約表に反映
・HotPepperからのメールを自動で取り込んで予約表に反映
・院の営業スケジュール・スタッフのシフト・固定患者を別々に管理
・同一患者の繰り返し予約(リピート機能)
・予約時間の枠を伸縮可能に(ワンクッションあり)
・操作権限を分けて、個人情報や予約データを安全に保護
・予約バッティング防止
・厳重なパスワード管理

「予約システム」は予約だけ管理すれば成立するものじゃない。院・スタッフ・患者、この3つすべてを管理して初めて成立する——それが分かった瞬間でした。

6. 現場で開発して学んだこと


この経験で学んだことは、シンプルです。
初期のヒアリングだけでは、本当に必要なものは絶対に見えてこない。
院長(現場スタッフ)が「本当に使いやすい」と感じるシステムにするには、現場での対話を重ね、軌道修正を恐れないこと。それしかありません。
そして、これが「現場経験のあるエンジニア」の価値だと、今は思っています。聞いた要件を実装するだけなら誰でもできる。でも「聞いていない要件」「現場の声」に気づける人は少ないのではないか、と。

最後に


もし同じような悩みを抱えている整骨院・クリニックの方がいたら、まずはお話を聞かせてください。システム化が正解とは限りません。
ちなみに後日談ですが、予約システムを作った後に日計表(Excelシート)に患者名を手打ちで入力していることを知り、「それ、予約システムから自動で取り込めるよ」と伝えたら、院長が「できるの!?」と目を丸くしておりました。実装したらとても喜んでくれました(予約システム導入より喜ばれたかもしれない笑)
「この部分だけ変えれば現場が回りそう」という小さな提案からでもお手伝いできます。この経験を活かし、お役に立てれば幸いです。

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