こんにちは!岡村晃平です。
デスクに向かって複雑な情報の糸を解きほぐしていると、ときどき指先が透き通っていくような感覚に陥ります。
私たちが客観的だと信じている数字や記録は、実は巨大なクジラが吐き出した泡に過ぎないのではないか。
そんな疑念を抱きながら、私は今日も画面の中の点と線を結び合わせています。
ふと窓の外に目をやると、街路樹の枝に一羽のフラミンゴが止まっていました。
その羽根は磨き上げられたスプーンのように銀色に輝き、首を傾げるたびに周囲の景色を歪ませています。
私がさっきまで計算していた売上の予測曲線は、そのフラミンゴが羽ばたいた瞬間、
空中に描かれたただの煙の輪となって霧散してしまいました。
私は慌てて手元の資料をまとめようとしましたが、手に持っていたはずのペンが、
いつの間にか一本の細長いアスパラガスに変わっていました。
みずみずしい緑色の感触が掌に伝わり、そこから大地の鼓動が直接脳内に流れ込んできます。
情報を整理し、未来を言い当てるという私の仕事は、
実はこのアスパラガスが成長する速度を測るような、静かな祈りに似ているのかもしれません。
論理という刃で世界を切り刻んでも、そこから溢れ出すのは甘い果汁だけで、
私たちが本当に欲しかった「正解」は、いつも指の間からこぼれ落ちてしまいます。
ふと足元を見ると、オフィスの床が一面のチェス盤に変わっていました。
駒の代わりに置かれているのは、使い古された革靴や、昨日誰かが落としたヘアピン。
それらが意思を持っているかのように、音もなくマス目の上を滑り、独自の対局を進めています。
私はそのゲームのルールを理解しようと試みますが、思考を巡らせるたびに、
背後の壁に掛かったカレンダーが、一枚ずつ青い蝶となって飛び去っていきます。
時間が逆流しているのか、あるいは私だけが止まっているのか。
銀色のフラミンゴが一度だけ高く鳴くと、部屋の重力がふわりと反転しました。
天井に背中を預けながら、逆さまになった世界を見下ろすと、
そこには私がこれまで作り上げてきた、完璧なはずの報告書が散らばっています。
でも、その紙面に並ぶ文字は、すべて光り輝くプランクトンに変わり、
暗い海の底へと沈んでいく準備を始めていました。
アスパラガスのペンで最後の一行を書き残そうとしましたが、
書き込まれたのは文字ではなく、まだ誰も見たことのない新しい色の染みでした。
その染みはゆっくりと広がり、オフィスの壁を侵食し、やがて宇宙の果てまで塗りつぶしていく。
次に私が目覚めたとき、私はまだこの銀色の羽根を持つ鳥の夢の中にいるのでしょうか。
それとも、チェス盤の隅で忘れ去られたヘアピンとして、永遠に次の出番を待ち続けるのでしょうか。