「部下に仕事を任せられない」に効く 3 冊|公開処方箋 #01

「部下に仕事を任せられない」に効く 3 冊|公開処方箋 #01

記事
コラム

「……結局、自分でやった方が早いんだよなぁ。」

はじめに

こんにちは!Sou です。
IT 企業で働くかたわら、相談者のお悩みに合わせた本を処方するサービス「処方選書カルテ」を副業として運営中です。


冒頭のひとり言に、心当たりはないでしょうか。

この連載「公開処方箋」では、よくあるお悩みをもとに架空の相談者を毎回 1 人設定します。
そして、私が実際に運営しているサービスと同じプロセスで書いたカルテを記事上で再現し、その中身をお見せする連載企画です。

今回の相談者は、実在しません。
でもこの悩みは、あちこちの職場に実在するはずです。

あなたの悩みと重なったら、このカルテはあなたのものだと思って読んでください。

今回のご相談

連載 1 回目の相談者は、タクミさん(30 代・生活用品メーカーの営業課長)です。
※ 架空の相談者であり、実在の人物ではありません

はじめまして。生活用品メーカーで営業課長をしています。
部下に仕事を任せたいのに、どうしても任せられません。任せてもクオリティが気になって、結局自分で手を入れて仕上げてしまいます。自分でやった方が早いし、確実だと思ってしまうんです。
そのせいで自分の仕事が回らず、毎日遅くまで残業しています。自分がチームのボトルネックになっているのは分かっているのに、どう変えればいいのか分からない。
それに最近、ふと思ってしまうんです。自分が動いていないと、ここにいる意味があるのかな、って。

「……わかりすぎて苦しい」という方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
マネジメントの定番の悩みに見えて、その正体は少し別のところにあります。カルテでは、相談者の悩みの本質を言語化するところから始めます。

診立て ー 手放せないのは「プレイヤーの物差し」

紙上ヒアリングを通じて見えてきた悩みの本質を、カルテでは 3 つに言語化しました。

・成果の物差しが、まだ「プレイヤー時代」のまま
・「任せる」の合格ラインが、自分基準の 100 点になっている
・「言いにくいことを言うしんどさ」を、自分で巻き取ることで回避している

1. 成果の物差しが、まだ「プレイヤー時代」のまま

タクミさんはプレイヤー時代、社内表彰の常連。営業成績を買われて課長になった人です。

ところが、有給を取った日も、チームのチャットをすべて確認して指示出し。
奥様には「それ、休みの意味ないね」と言われてしまったそうです。

そして、絞り出すような一言。
「自分が動いていないと、ここにいる意味があるのかなと思ってしまう」。

ここに、ひとつ目の真因があります。

任せられないのは、能力や時間の問題ではなく、成果の物差しの問題なのです。

自分の手で仕上げることが、長らく自信の源泉。
だからこそ、手を止めると存在価値まで揺らいでしまうのです。

しかし、マネージャーの成果は「チームから何が生まれたか」で測る、いわば別の競技です。

2. 「任せる」の合格ラインが、自分基準の 100 点になっている

どうなったら任せられそうか、という問いへの答えはこうでした。

「自分が手を入れなくても、そのまま出せるレベルのものが上がってきたら」

一見、もっともな条件です。
ただ、これはかなり苦しい設定でもあります。

経験 17 年のタクミさんと同じ水準を、任せる「前」の部下に求めることになるからです。
60 点で渡して、フィードバックを重ねて 70 点、80 点に育てていく。
その「育成の時間軸」が、任せ方の設計から抜け落ちています。

3. 「言いにくいことを言うしんどさ」を、自分で巻き取ることで回避している

タクミさんは以前、『リーダーの仮面』を読んでルールによる管理を試したものの、部下への指摘がしんどくて、元に戻ってしまったそうです。

若手の提案書の詰めが甘く、夜のうちに全部書き直して、翌朝「ここ直しといたから」と渡した ー 。
以来、その部下は提案書を自分から書いてこなくなったそうです。

空気を悪くするくらいなら、自分でやった方がラク。
その優しさが、部下から「失敗して学ぶ機会」を静かに奪っていました。

この 3 つは、バラバラの問題ではありません。

・物差しがプレイヤーのままだから、手を止められない。
・手を止められないから、合格ラインは自分基準の 100 点になる。
・届かないから、巻き取る。
・巻き取るから部下は育たず、ますます任せられない ー 。

この循環に楔を打つために、カルテでは次の 3 冊を処方しました。

処方選書 ー この 3 冊

📖 1冊目 『自分の小さな「箱」から脱出する方法』 ー 悩み③ 優しさの悪循環に気づく本

1 冊目は、アービンジャー・インスティチュートの世界的ベストセラーです。
転職したばかりの管理職が、上司との対話を通じて 「箱」 ー 自分を正当化し、相手を「問題」として見てしまう心の状態 ー の正体に気づいていく物語です。

この本の核心は、1 行で書けます。

相手を「困った人」として見た瞬間から、悪循環はもう始まっている。

提案書を書き直した夜、タクミさんは部下を「詰めが甘い部下」として見ていました。
すると相手も、その見方の通りに振る舞い始める。「今思うと、やる気を削いだのかも」という直感の、種明かしになる一冊です。

誰かを責めるのでも、自分を責めるのでもない、第三の視点が手に入ります。小説のように一気に読めるのも、最初の一冊に据えた理由です。

📖 2冊目 『最高のコーチは、教えない。』 ー 悩み① 「教える」以外の関わり方を知る本

2 冊目は、メジャーリーグでもプレーした元投手・吉井理人さんのコーチング論です。
「教えたい」をぐっとこらえ、質問を重ねて相手に考えさせ、自分の言葉で語らせる ー その関わり方が、実在の選手たちとのエピソードとともに語られます。

ヒアリングで出てきた「自分がやってきたことは教えられても、それ以外にどう関わればいいのか分からない」という言葉への、答えそのものです。

著者自身、一流プレイヤーだったからこそ「教えたくなる」誘惑と闘い続けた人です。
プレイヤー経験は捨てるのではなく、相手に考えさせる質問へ「翻訳」して使う。この転換が、タクミさんの物差しを付け替えてくれます。

📖 3冊目 『「任せ方」の教科書』 ー 悩み② 60 点で任せる設計図を持つ本

3 冊目は、ライフネット生命創業者・出口治明さんの『部下を持ったら必ず読む 「任せ方」の教科書』です。
旧版のサブタイトルは「『プレーイング・マネージャー』になってはいけない」。タクミさんには、少し耳の痛い言葉かもしれません。

それでもこの本を処方したのは、「そのまま出せるレベルが上がってきたら任せる」という合格ラインを、根本からひっくり返してくれるからです。

部下の仕事が 60 点なら、合格。

60 点で任せるのは妥協ではなく、部下が 70 点、80 点へ育つための投資である ー 。
この発想の転換に加えて、目的・期限・要求レベルを言葉にして渡すという、任せ方の具体的な設計図まで手に入ります。

ルールで縛る管理に挫折した経験のある方にこそ、試してほしい。合理的で、そして温かい任せ方です。

服薬指導 ー 読む順番

カルテでは、読む順番まで含めて処方します。
今回は「『箱』→『コーチ』→『任せ方』」の順です。

順番には、理由があります。
ノウハウの本から入らないのは、タクミさんがすでにノウハウを読み、それでも変われなかったからです。
「土台 → 視野 → 行動」と、心の順番に沿って進みます。

Step 1: 『自分の小さな「箱」から脱出する方法』で、部下を見る目線を整える

構えず、小説のように読み進めてみてください。読むうちに、あの提案書の夜を、少し違う角度から思い出す瞬間があるはずです。

Step 2: 『最高のコーチは、教えない。』で、「教える」以外の引き出しを増やす

観察し、質問し、言語化させる関わり方が、「1on1 で何を話せばいいか分からない」への具体的な答えになります。

Step 3: 『「任せ方」の教科書』で、60 点で任せる設計図を持つ

最後に、行動へ落とし込みます。心の土台を整えた後なら、今度は「頭では分かるのに」で終わらないはずです。

読み方のヒントも、ひとつだけ。

読み切ることを目標にしなくて大丈夫です。
「この場面、自分のことだ」と思えた箇所をひとつずつ持ち帰れば十分。
読み終えるより、思い当たる方がずっと大切です。

経過観察 ー 最初の一歩

カルテの結びに、私はこう書こうと思いました。

焦る必要はありません。
3冊を読み終えても、すぐにすべてを任せられるようにはならないと思います。それでいいのです。
まずは60点の仕事をひとつ、ソワソワしながら見守ってみる。言いにくい指摘をひとつだけ、飲み込まずに言葉にしてみる。
そんな小さな一歩の先に、「安心して任せられる部下」は少しずつ育っていきます。

タクミさんは、架空の相談者です。
でもこの結びは、冒頭のひとり言に覚えのあった、すべての人に宛てたつもりです。

もし今日、一歩だけ踏み出すなら。
来週、失敗しても取り返しがつく仕事をひとつ選んで、「目的」と「求めるレベル」を書いたメモ 1 枚と一緒に、部下に渡してみてください。

架空ではなく、「自分の処方箋」がほしい方へ

ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました!

今回の公開処方箋は、架空の相談者をもとに作成したものです。

有料版の「処方選書カルテ」では、15問のアンケートとDMでのヒアリングを通して、あなたの悩みや読書習慣を整理します。

そのうえで、

・今、向き合いたい課題
・あなたに合う3冊とその選書理由
・おすすめの読む順番
・最初の一歩

を、専用のPDFカルテにまとめてお届けします。

▼ 自分専用の3冊を選んでもらう


「自分の悩みも対象になる?」という場合は、購入前にお気軽にメッセージください。

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