「ふりかえり」は最強の成長戦略である

「ふりかえり」は最強の成長戦略である

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はじめに

「ふりかえりが大事なのは分かってるけど、なかなか時間が取れなくて...」

マネージャーとして働いていると、こんな相談をよく受けます。
たしかに、日々の仕事や生活に追われていると「ふりかえり」は後回しになりがちですよね。かつては私もそうでした。
「次の仕事の準備をしておかないと」「今は手を動かすことの方が大切」と考え、ふりかえりを軽視していたのです。

しかし、『アジャイルなチームをつくる ふりかえりガイドブック』という本を読んで、その考えは大きく変わりました。

ふりかえりは単なる「良い習慣」ではなく、個人や組織の成長を劇的に加速させる最強の成長戦略だったのです。
この記事では、そう言い切る理由と、今日からできる実践方法について書いてみたいと思います。

ふりかえりの本質は 「体験の経験知化」

まず、「ふりかえり」とは何なのか、その本質から見ていきましょう。
私は、ふりかえりの本質は「体験の経験知化」だと考えています。
どういうことか、順を追って説明します。

デジタル大辞泉では、「体験」と「経験」は次のように定義されています。

・体験:自分で実際に経験すること。また、その経験。
・経験:実際に見たり、聞いたり、行ったりすること。また、それによって得られた知識や技能など。

「体験」は「自分自身が直接行うこと、感じること」に、「経験」は「体験を通じて得られた知識や技能」に重点が置かれているようです。
つまり、自らが起こした行動に対する結果を身を持って知ることが「体験」、そこから得られた学びや気づきを自らの血肉とすることが「経験」と言えるのではないでしょうか。

「体験」はある種受動的な側面を持ちますが、「経験」は能動的にしか得られません。
そして「ふりかえり」とは、過去の行動や経験を客観的に見つめ直し、そこから学びを得て、今後の行動に活かすための能動的なプロセスです。
以上のことから、

「ふりかえり」とは、自らの「体験」を「経験」に昇華し、知識(経験知)として定着させるための能動的な営みである

と定義できるのではないでしょうか。

そしてこの「体験の経験知化」こそがまさに、最強の成長戦略と言える理由なのです。

科学が証明するふりかえりの力

「体験の経験知化」としてのふりかえりの効果は、心理学の研究によっても明らかにされています。
ここでは、代表的な 2 つの研究を見ていきましょう。

■ 限界的練習とふりかえりの関係
スポーツやビジネスの世界で卓越した成果を上げる人たちには、ある共通点があります。
それを科学的に解明したのが、心理学者アンダース・エリクソン教授の「限界的練習(卓越した技能を獲得するための練習法)」に関する研究です。

エリクソン教授は著書『超一流になるのは才能か努力か?』の中で、次のように述べています。
「限界的練習にはフィードバックと、そのフィードバックに対応して取り組み方を修正することが必要だ。(中略)学習者は自らを評価し、失敗に気づき、必要な調整を行う方法を身につけなければならない。
つまり、超一流になるための練習とは、単に量をこなすことではなく、自分のパフォーマンスをふりかえり、改善点を見つけ、修正していくプロセスなのです。
このプロセスはまさしく、ふりかえりそのものではないでしょうか。

■ Growth Mindset とふりかえりの関係
もう 1 つ、スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエック教授が『マインドセット「やればできる! 」の研究』の中で提唱している「Growth Mindset(成長マインドセット)」という概念も、ふりかえりの重要性を裏付けています。

Growth Mindset とは、「能力は努力次第で伸ばせる」と考えるマインドセットのことです。
このマインドセットを持つ人たちにとって、失敗は避けるべきものではなくむしろ、成功のためのステップです。

失敗を成功の糧とするためには、失敗に至った原因を究明し、改善点を見つける必要があります。
彼らは意識的にも無意識的にもそのことを理解し、そして実践できているのです。
このことからも、ふりかえりが成長にとって必要不可欠な動作であることがわかります。

ふりかえりがもたらすメリット

ここからは、ふりかえりがもたらすメリットについて考えていきたいと思います。
ふりかえりには、個人・組織を成長させる強力なパワーがあります。

1. 成功体験のふりかえり
成功体験のふりかえりには、自己効力感(自分はうまくできるという感覚)や有能感を高める効果があります。
それらは個人の成長の原動力であり、さらなる自己成長のモチベーションを高めるきっかけになります。

また、成功要因を分析することで、成功につながる行動の再現性を高めることができます。

2. 失敗体験のふりかえり
失敗体験のふりかえりには、内省を促し、成長の糸口を見つけるきっかけを作る効果があります。
また、失敗を乗り越えて成功した経験は、レジリエンス(困難な状況やストレスに直面しても、それを乗り越えて回復する力)を養うことにもつながります。

ただしそのためには、Growth Mindset を持っていることが不可欠です。

3. 組織レベルのふりかえり
ふりかえりによって「体験を経験知化」することで、個人に閉じた「体験」を、「経験」として他者にも共有できるようになります。
その結果、個人のみならず組織をも成長させることにつながるのです。

・共有された経験知に触れることで、未経験者も出来事を擬似的に体験することができる
・経験知が組織内で伝達・蓄積されることで、組織全体が成熟していく
「経験していないことでも私たちは力にすることができる。 自分の中に微かにでも共通した経験があれば、想像力の力を借りて、より大きな経験世界へ自分を潜らせることができる。」
齋藤孝『読書力』

今日から始める「ふりかえり」

ふりかえりの威力について、ご理解いただけたでしょうか。
とはいえ、いきなり本格的なふりかえりを始めるのは、時間的にも心理的にもハードルが高いと思います。
まずは個人レベルから、付箋 1 枚で始めてみることをおすすめします。

仕事終わりや読書の後に、次のような内容を 1 行で付箋に書き出して見えるところに貼っておき、翌日また見返してください。

・今日学んだこと/気づいたことは何か?
・今日うまくいかなかったこと/わからなかったことは何か?
・今後実践したい学びは何か?

たったこれだけでも、「体験の経験知化」の第一歩になります。
5 分もかからず実践できると思うので、騙されたと思ってぜひやってみてください。

ちなみに私は、読書で学んだことや気づいたことを自分用の LINE に投稿しておき、後日読書メモにまとめるようにしています。
後から検索もできるので、「そういえば以前同じようなことで悩んだな...」と思った時の解決がとてもラクになりました。
よろしければ参考にしてください。

おわりに

いかがだったでしょうか。
ふりかえりの本質が「体験の経験知化」にあること、そしてそれが科学的にも裏付けられた最強の成長戦略であることを、お分かりいただけたのではないかと思います。

重要なのは、ふりかえりを単なる「習慣」として捉えるのではなく、個人や組織の成長を加速させるための「戦略」として位置づけ、積極的に実践することです。
最初はあまり効果を実感できないかもしれませんが、継続すれば必ず大きな変化が生まれてくるはずです。
まずは手元でできる小さなことから始めてみてください。

なお、「ふりかえり以前に、そもそもどんな本で学べばいいのか分からない」という方のために、「処方選書カルテ」というサービスをスキルマーケットでリリースしました。
この記事を読んで何か響くところがありましたら、お気軽にご相談いただければと思います。


最後までお読みいただき、どうもありがとうございました!
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