大学生の面接練習をしていると、ときどきこんな場面があります。
「志望動機をお願いします」
そう聞くと、とてもきれいに整った文章が返ってくる。
内容も間違っていない。言葉遣いも丁寧です。
ところが少し角度を変えて、「なぜ、そう思ったのですか」「その経験について、もう少し教えてください」と聞くと、急に言葉が止まってしまう。
決して準備をしていないわけではありません。
一生懸命準備しています。
ただ、準備の仕方に問題があるというか、「何を話すかを考える」より、「作った文章を覚える」ことになっている。
学生との個人レッスンを4年続ける中で、私はこの違いを強く感じています。
筆記試験の勉強は早く入念に。でも面接準備は遅く時間切れ。
公務員を目指す学生には、特にこの傾向がよく見られます。
・大学の授業を受けながら、専門科目や教養科目を勉強する。
・問題集を解く。
・模擬試験を受ける。
試験に向けて何か月も準備しています。それ自体は必要なことです。
ところが、面接については、
「筆記試験が終わってから」「試験が近づいてから」
と考えている学生が少なくありません。
受験の4か月ほど前になって初めて、
・「自己PRは何を書けばいいでしょうか」
・「志望動機をどう作ればいいでしょうか」
と考え始めるケースもあります。
しかし、自己PRや志望動機は、数週間で文章だけ整えれば完成するものではありません。
なぜなら、面接官が知りたいのは文章の完成度ではなく、その人が何を考え、どう行動してきたのかだからです。
これは民間企業の採用面接でも同じです。
「正しい自己PR」を探してしまう学生たち
個人レッスンで、「私の自己PRはこれで合っていますか」
と聞かれることがあります。
その気持ちはよく分かります。
試験であれば、正解があります。
だから面接にも「正しい答え」があるように感じてしまいます。
しかし、面接は筆記試験とは違います。
例えば、
「私の強みはコミュニケーション能力です」という自己PRがあったとします。
それだけでは、その学生のことはほとんど分かりません。
大切なのは、その先です。
・誰と、どんな場面で関わったのか。
・何に困ったのか。
・自分はどう考えたのか。
・どんな行動をしたのか。
・相手はどう反応したのか。
そこに、その学生らしさがあります。
私は個人レッスンでも、すぐに文章を直すことはあまりしません。
それよりも、
「そのとき、どうしてそうしたの?」
「他の人はどうしていた?」
「あなたが一番苦労したのはどこ?」
と聞いていきます。
すると、最初に用意してきた文章にはなかった言葉が出てきます。
私は、その言葉の方を大切にしています。
上手に話すことより、「その人が見える」こと
面接練習というと、
姿勢。
表情。
声の大きさ。
話すスピード。
もちろん、こうしたことも大切です。
ただ、それ以前に必要なのが、
「この学生はどんな人なのだろう」と相手に伝わることです。
完璧な言葉でなくてもいい。
少し考えながら話してもいい。
自分が実際に経験したことについて、自分の言葉で話している人の方が、相手には伝わります。
反対に、どれほど流暢でも、用意した文章を再生しているだけでは、その人自身が見えにくい。
面接は暗記した答えの発表会(プレゼンテーション)ではありません。
私は、面接もコミュニケーションの一つだと学生には伝えています。
質問を聞く。
何を尋ねられているのか考える。
自分の経験から答える。
相手の反応を見る。
必要なら補足する。
このやり取りが面接です。
だから、一度の模擬面接だけでは難しい
こうした学生たちと日頃から個人レッスンをしていて、一つ感じることがあります。
本番直前に一度だけ模擬面接をして、
「ここを直しましょう」
と伝えるだけでは、十分ではないということです。
そもそも自分の強みが整理できていない。
学生時代の経験が言葉になっていない。
なぜその仕事を目指すのかも、まだ整理しきれていない。
その状態で模擬面接を繰り返しても、表面的な受け答えの練習になってしまいます。
そこで私は、面接対策を3段階で考えるようになりました。
最初に、自分の経験を掘り下げる。
次に、そこから強みや志望理由を言葉にする。
最後に、相手に伝わるように話してみる。
自分を知る。言葉にする。伝えてみる。この順番です。
だから現在行っている学生向けの個人レッスンも、一回で完成させるのではなく、複数回の対話を通じて少しずつ仕上げています。
面接対策は、もっと早く始めていい
私は、大学1、2年生から面接練習を始める必要があるとは思っていません。
しかし、自分について話す練習は、もっと早く始めてもいいと思っています。
例えば、
「最近、力を入れたことは何だろう」
「自分はどんな役割を任されることが多いだろう」
「なぜその授業に興味を持ったのだろう」
「アルバイトで印象に残った出来事は何だろう」
そんなことを誰かと話してみる。
それだけでも違います。
面接の直前になって初めて自分を振り返るのではなく、大学生活の中で、ときどき自分の経験を言葉にしてみる。
その積み重ねが、結果として自己PRや志望動機にもつながっていきます。
自分の言葉は、一人で作らなくてもいい
自分のことなのだから、一人で考えなければならない。
そう思う学生もいます。
でも、自分自身のことは、自分では意外と分からないものです。
誰かに質問されて初めて、
「そういえば、自分はいつもそうしている」
と気づくことがあります。
話している途中で、
「自分が大切にしていたのは、これだったのか」
と言葉になることもあります。
私が学生との個人レッスンで大切にしているのも、答えを渡すことではありません。
質問しながら、その学生自身の中にある経験や考えを一緒に見つけることです。
そして最後には、
誰かが作った志望動機ではなく、
誰かから借りた自己PRでもなく、
「これは自分の言葉です」と言える状態にする。
そこまでできれば、質問が多少変わっても、自分で考えて答えられるようになります。
公務員でも、民間企業でも、本質は変わりません。
面接官に伝えるのは、覚えた文章ではなく、自分自身です。
日頃の学生との個人レッスンでも、私はそこを一緒に整えています。
面接直前になって「答えを覚える」のではなく、少し早い段階から自分の経験を掘り起こし、自分の言葉にしていく。
そのために、強みの整理から自己PR・志望動機、模擬面接までを3回でつなぐ個別プログラムも用意しました。
必要な方には、プロフィールのサービス欄から詳細をご覧いただけます。
うまく話すことより、自分のことを、自分の言葉で、相手に分かるように話せること。
私は、その力を学生のうちから育ててほしいと思っています。