「大丈夫です」
気づけば、この言葉を一日に何度も使っていないでしょうか。
体調を聞かれても、「大丈夫です」。
仕事を頼まれても、「大丈夫です」。
予定が重なっても、「大丈夫です」。
少し無理をしていても、「大丈夫です」。
キャリア相談で女性のご相談者とお話ししていると、この言葉をよく耳にします。
ところが、少しずつ話を聞いていくと、「本当は大丈夫ではなかった」ということが少なくありません。
50代は「大丈夫」が増えやすい
50代は、いくつもの役割が重なりやすい年代です。
職場では経験を積み、後輩から相談されることが増える。管理職やリーダーとして、周囲を支える立場になる方もいます。
家庭では、子どもの進路や独立、親の介護など、新しい課題が出てくることもあります。
さらに、自分自身の体調や働き方についても、以前とは違う変化を感じ始める時期です。
こうして長年さまざまな役割を担っていると、周囲からも「この人なら大丈夫」と思われるようになります。
そして、その期待に応え続けるうちに、自分でも反射的に「大丈夫です」と答えるようになっていきます。
つまり、「大丈夫です」が自分の状態を伝える言葉ではなく、相手を安心させるための言葉になっているのです。
頼られる人=いつも大丈夫な人、ではありません
「大丈夫じゃない」と言ったら、頼られなくなるのではないか。
そんな不安を口にされる方もいます。
でも、「頼られること」と「いつも大丈夫でいること」は別です。
これまで周囲から頼られてきたのは、経験や能力、仕事への姿勢があったからでしょう。
体調も気持ちも、常に100%であることが条件だったわけではありません。
むしろ、本当に長く働き続けるためには、ときには「今日は難しい」「少し手伝ってほしい」と言えることも必要です。
無理を続けることより、自分の状態を把握できることの方が、長い目で見れば大切です。
「大丈夫です」の前に、一度だけ確認する
問題なのは、「大丈夫です」という言葉そのものではありません。
その言葉が出る前に、自分の気持ちを確認しているかどうかです。
「本当に大丈夫なのか」
それとも、
「大丈夫と言ってしまった方が楽なのか」
一度だけ、自分に問いかけてみてください。
「今日は人に説明する余裕がないから、大丈夫と言っておこう」
そんな日があっても構いません。
大切なのは、自分が今どちらを選んでいるのかを、自分自身が分かっていることです。
この確認をしないまま「大丈夫です」を繰り返していると、本当は疲れているのか、困っているのか、助けてほしいのか、自分でも分からなくなることがあります。
仕事や家庭での役割はきちんとこなしている。
けれど、「私は本当はどうしたいのだろう」と聞かれると答えが出てこない。
そんな状態につながっていくこともあります。
一日の終わりに、一つだけ振り返る
難しい自己分析をする必要はありません。
今日、「大丈夫です」と言った場面を一つだけ思い出してみてください。
そのとき本当は、どんな気持ちだったでしょうか。
「疲れていた」
「断りたかった」
「少し手伝ってほしかった」
「本当は不安だった」
一言で十分です。
正しい答えを探す必要もありません。
自分が口にした言葉と、本当の状態との間に、小さなズレがなかったかを確認するだけです。
この習慣を続けていると、少しずつ「大丈夫です」以外の言葉も選べるようになります。
「今日はここまでにします」
「少し手伝ってもらえると助かります」
「今週は余裕がないので、来週でもいいですか」
「実は、あまり大丈夫ではありません」
これは弱さを見せることではありません。
自分の状態を、以前より正確に相手に伝えられるようになったということです。
自分の気持ちを置き去りにしない
周囲を支えてきた人ほど、自分のことを後回しにするのが上手です。
だからこそ、いきなり大きく変える必要はありません。
まずは今日一日を振り返ってみてください。
① 今日、「大丈夫です」と言った場面はありましたか。
② そのとき、本当はどう感じていましたか。
③ 同じ場面がもう一度来たら、本当は何と言いたいですか。
この3つを考えるだけでも、自分の気持ちを取り戻す小さなきっかけになります。
一人で振り返るのが難しいと感じたら、一緒に整理する時間もつくっています。→ 人生後半のキャリア相談(60分)