スタッフを多く抱える現場で経費申請を電子化したいと考えている方に向けて、実際にやってみて起きたことを書きます。うまくいった部分と、正直つまずいた部分の両方です。
うちでは、紙の経費申請をやめて、スタッフはフォームに入力するだけにしました。申請内容は自動でスプレッドシートに集約され、承認・非承認もワンクリックで完結します。非承認だった場合も、わざわざ本人に連絡する必要はなく、通知が自動で飛んで、そのまま再提出できる仕組みにしました。
もともとの狙いは単純です。スタッフの数が多い企業だと、紙のまま運用すると、それを集める・まとめるだけで管理側の手間がどんどん膨らみます。その手間を自動化して、空いた時間を他のことに使えるようにしたかった。それだけでした。
数字だけ見れば、狙い通りだった
紙の運用では、スタッフから集めた申請書を経理担当が手入力でシートにまとめる作業が発生していました。この集計作業に、だいたい2時間かかっていたと思います。月末になると、この作業のためだけにまとまった時間を確保する必要がありました。
電子化してからは、この手入力がまるごとなくなりました。フォームに入力された時点で自動でシートに反映されるので、集計そのものにかかる時間は今では30分程度です。1時間半、他の業務に回せるようになった計算になります。
経理担当ではない自分から見ても、この差ははっきりしていました。数字だけ見れば、成功と言っていいと思います。ただ、この裏でスタッフは静かに不満を溜めていました。
想定していなかったのはエラーそのものへの不満
いちばん誤算だったのは、操作が分からないことより、エラーが出ることへの不満のほうが大きかったことです。
導入したフォームは、普段の業務でも使い慣れているものだったので、操作自体で困る人はほとんどいませんでした。ただ、その裏側は自分でコードを書いて組んだ仕組みです。動かしてみて初めて気づく不具合が、当然ながら出てきます。
たとえば、自分が申請したはずの内容が、なぜかスプレッドシート側にうまく反映されていない。スタッフからすれば、これは単なる不具合ではなく「ちゃんとやったのに認められなかった」というストレスに直結します。ミスをしたのは自分ではないのに、まるで自分の入力が疑われたような感覚になるからです。
振り返ると、この不満の根本原因は設計ミスというより、「最初のうちはエラーが出る」と事前に伝えていなかったことでした。AIを使って自分でツールを組む場合、最初の版はどうしても素人が作ったものに近く、粗があって当たり前です。それを前提として共有していなかったので、起きたエラーが想定外の事故としてそのまま受け取られてしまいました。
エンジニアが作った業務システムなら、動作確認や検証の工程を経て現場に出てくることが多いと思います。ただ、自分で手を動かして組む場合、その検証の時間を十分に取れないまま現場に出すことも珍しくありません。だからこそ、粗が出る前提でスタッフに向き合う姿勢が欠かせないのだと、あとになって気づきました。
対処:修正よりも先に、1対1で伝えた
エラーに対しては、出た当日中に直すことを徹底しました。ただ、それ以上に効いたのは別のことです。
オンラインでもオフラインでも構わないので、1人ずつ時間をとって、使い方と修正内容を直接伝えることをしました。全体へのチャット告知だけで済ませず、必ず1対1です。
この方法は一番遠回りに見えて、実は一番早いと感じています。文章やチャットで「直しました」と流すより、その場で「ここが直りました」「次からはこう申請してください」と顔を見て伝えたほうが、不満が長引きませんでした。ツールの不具合そのものより、不具合を放置されている感覚のほうが、人を苛立たせるのだと思います。
今は、なくてはならない仕組みになった
今はエラーもほぼ解消し、特に問題なく動いています。現場もかなり慣れてきていて、最初の頃のような不満は聞かなくなりました。むしろ「前の紙のやり方には戻れない」という声のほうが増えています。
もう一度同じことをやり直すとしたら、エラーが出る前提を最初に伝えたうえで、これまでの経験からどんなエラーが起きやすいかをある程度潰した状態でツールを作ると思います。最初から完璧を狙うより、起きやすい不具合を先に潰しておくほうが現実的です。
最初のうちが、いちばん労力も不満も溜まりやすい時期です。ただ、そこを越えると、手放せない仕組みになります。振り返ってみると、不満が出たこと自体は失敗ではなく、電子化を現場に馴染ませる過程で必ず通る道だったのだと思います。
経理担当の方へ
この話は、経理まわりの書類をまとめている方にこそ読んでほしいと思っています。
経費申請に限らず、大量の書類を集めてシートにまとめる作業は、AIで効率化しやすい領域です。ただ、導入して終わりではなく、最初の1ヶ月にどれだけ丁寧に現場と向き合えるかで、定着するかどうかが決まるというのが、今回の一番の学びでした。仕組み自体の出来より、立ち上げ期の伴走のほうが結果を左右します。
経費申請のような小さな作業ほど、後回しにされがちです。ただ、月に何十件、何百件と積み重なる作業だからこそ、少しの短縮でもまとまった時間になって返ってきます。集計の1時間半が浮けば、その分を接客や本来の業務に回すことができます。
現役の鍼灸師として現場に立ちながら、こうした仕組みを自分で作ってきました。どれくらいの業務が減りそうかをまず伺ったうえで、どんなツールが合いそうかをお伝えすることもできます。「うちの場合はどうだろう」という段階でも、お気軽にご相談ください。