ヒーローは強運の持ち主である(1)

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――「運」を理論として理解した夜


TVアニメ『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』をご存じだろうか.
ある夜,寝る前にSNSを眺めていると,「認知的焦点化理論って知ってる?」という綺麗な声とともに,女性が男性に問いかける短い動画が流れてきた.


その一言に,なぜか強く引っかかった.


私は当時,複雑に絡み合った悩みを抱えながら,どう対処すべきか分からず,自己啓発系の本を立て続けに読んでいた.そんな状態だったからこそ,「理論」「定義」といった論理的な言葉に,過剰なほど敏感になっていたのだと思う.


彼女の説明によると,認知的焦点化理論とはこういう考え方らしい.


人が物事に向き合うとき,どこまで周囲や他者に配慮できているか.
その“配慮の範囲の広さ”が,その人の持つ「運」の大きさになる.


もっと噛み砕けば,自分のことだけを考えて行動しているのか,それとも家族,友人,他人,さらには社会や未来のことまで含めて考えているのか.その視野の広さが,結果として「運」を左右する,という理屈だ.


定量化できず,どこか胡散臭く感じていた「運」という言葉が,初めて腑に落ちた瞬間だった.しかも,私が最近読んでいた本の中でも,ほぼ同じ定義で「運」が語られていた.複数の文脈が一気につながり,脳内のシナプスが結合したような感覚を覚えた.


思い返せば私は,最小限の人間関係を築くほうが楽だと考えてきた.狭く深く付き合うことで,煩雑な人間関係のリスクを減らせる.合理的だし,効率的でもある.
その一方で,他人に配慮し,見返りを求めずに尽くすような行動は,どこか「きれいごと」に思えていた.


だからこそ,この理論は耳が痛かった.


それでも,不思議と否定したい気持ちにはならなかった.むしろ,自分の生き方を静かに問い返されているような感覚があった.
こんなふうに自分の内面を揺さぶってくるアニメは,『進撃の巨人』以来かもしれない.


質の高い睡眠をとることは,この夜は諦めた.
私はアマゾンプライムを開き,『ゾン100』の本編を再生した.


つづく.




※アニメ界隈では『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』を略して「ゾン100(ぞんひゃく)」と呼ぶらしい.『月刊サンデーGX』にて2018年11月号から連載中.
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