ヒーローは強運の持ち主である(2)

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――論理主義は感情に負けるのか


『ゾン100』の主人公は,天道輝(てんどうあきら)という青年だ.
物語の中盤,彼が三日月閑(みかずきしずか)という,論理的思考に長けた女性をサメのゾンビから救う場面がある.彼女こそ,冒頭で「認知的焦点化理論」を語っていた人物である.


三日月は,輝の正義感と勇気を評価しつつも,彼の行動が友人である滝崎憲一郎(ケンチョ)を危険にさらした点を問題視する.
この指摘をきっかけに,輝は「ヒーローとは何か?」を考え始める.


そして彼は,次のような結論に至る.


「腹が減ったら,飯が食いたい」
「かわいい女の子に出会ったら,仲良くなりたい」
「目の前に助けたい人がいたら,ヒーローになりたい」


それらの感情に,理由は必要なのか.
輝は最終的に,「理由はいらない」という結論にたどり着く.


この場面を見て,私は二通りの解釈をした.
一つは,「輝は考えることを放棄した」という見方.
もう一つは,「自分の感情に正直になることで,他人に対する建前を排除した」という見方だ.


後者のほうが,私にはしっくりきた.


三日月は論理主義者だ.正しさを積み上げ,筋の通った行動を重視する.
一方で輝は,感情論者である.しかし彼の言葉は,論理で反論する余地を相手に与えなかった.


ここで言う「論破」とは,論理的に相手をねじ伏せることではない.
「反論する意味そのものを失わせる」という意味での論破である.


輝は,三日月にこう問いかけているように見えた.
――それは,本当にあなたの心から出た考えなのか?


自分に素直であること.
それは論理主義者が見落としがちな要素であり,同時に感情論者の強みでもある.


もしロジカルシンキングを超えたいのなら,より高度な論理を学ぶ前に,まずは自分の感情に正直になることから始めてみるべきなのかもしれない.


つづく.
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