私は、大きな決断ほど、一つの理由では決めていない。 ― 最後の一つは、原因ではなく、きっかけだった。―

私は、大きな決断ほど、一つの理由では決めていない。 ― 最後の一つは、原因ではなく、きっかけだった。―

記事
ビジネス・マーケティング
会社を経営していると、

大きな決断を、

しなければならないことがあります。

店を出す。

店を閉める。

人を雇う。

事業から撤退する。

そして、

会社そのものを、

終わらせる。

後から振り返ると、

そこには、

「決めた瞬間」があります。

だから、

その瞬間に起きた出来事が、

決断の理由だったように、

見えることがあります。

でも、

私の場合は、

違いました。

会社を終わらせると決めたとき、

最後に起きた出来事は、

一人の社員の、

退職でした。

私は当時、

新しい事業を、

考えていました。

駅前の、

一等地。

そこで始める事業を、

一人の社員に、

任せようとしていました。

その社員には、

将来、

会社の中心を、

担ってほしいとも思っていました。

ところが、

その社員から、

退職したいと、

言われました。

理由は、

会社の将来に対する、

不安でした。

そのとき、

社員から、

こんな話をされました。

以前、

私が社員たちに話した、

韓国の、

セウォル号沈没事故の話です。

私は、

こんな意味の話を、

したことがありました。

船が沈み始めたとき、

船長や乗組員の判断が、

多くの人の人生を、

左右する。

上に立つ人間は、

自分だけ逃げればいいわけではない。

そんな話だったと、

記憶しています。

その社員は、

私に言いました。

「社長が、

前に話してくれましたよね。」

そして、

こう続けました。

「沈む船には、乗れません。」

私は、

その言葉を聞いて、

退職を受け入れました。

「仕方ないね。」

それ以上、

引き止めようとは、

思いませんでした。

本人には、

本人の人生があります。

会社と一緒に、

沈む必要など、

ありません。

そして、

私は、

その社員との話が終わったあと、

会社を終わらせることを、

決めました。

こう書くと、

その社員が辞めたから、

会社を終わらせたように、

見えるかもしれません。

でも、

そうではありません。

その社員の退職が、会社を終わらせたわけではありません。

その前から、

いくつものことが、

積み重なっていました。

売上。

利益。

資金。

店舗。

人材。

これからの会社。

自分自身の気持ち。

続ける理由。

終わらせる理由。

私は、

ずっと、

考えていました。

まだ、

やれるのか。

続けるべきなのか。

立て直せるのか。

もう一度、

会社を前へ進めることが、

できるのか。

答えを、

出せずにいました。

そこへ、

将来を任せようと思っていた社員から、

「沈む船には、乗れません。」

と言われた。

その言葉が、

私の中にあったものを、

一気に、

表へ出したのだと思います。

私は、

大きな決断を、

コップの水のようなものだと、

考えることがあります。

一滴。

また一滴。

少しずつ、

水が溜まっていく。

一つだけなら、

決断しなかったこと。

それだけなら、

まだ頑張れたこと。

もう少しなら、

何とかできたこと。

それが、

長い時間をかけて、

少しずつ、

溜まっていく。

そして、

最後に、

一滴が落ちる。

水が、

コップから、

あふれる。

外から見れば、

その最後の一滴が、

原因に見えます。

でも、

違います。

最後の一滴だけでは、コップの水はあふれません。

それまでに、

何滴もの水が、

溜まっていたから、

最後の一滴で、

あふれた。

だから、

最後の一滴は、

原因ではなく、

決断するきっかけだった。

私は、

そう思っています。

これは、

会社を終わらせることだけでは、

ないと思います。

店を閉める。

仕事を辞める。

人間関係を終わらせる。

新しいことを始める。

何かを、

手放す。

人生の大きな決断には、

一つでは説明できないことが、

たくさんあります。

後から、

「あの出来事があったから。」

と言うことはできます。

でも、

本当は、

その前から、

心の中に、

いくつもの理由が、

積み重なっていたのかもしれません。

私は、

会社を終わらせると決めたあと、

不思議なくらい、

次のことを、

考えていました。

どうやって、

終わらせるのか。

スタッフに、

いつ伝えるのか。

最後まで残ってくれる人に、

何ができるのか。

取引先に、

どう説明するのか。

そして、

会社に残っている、

約2,000万円を、

どう使うのか。

「終わる。」

と決めた瞬間から、

私の中では、

別の経営が、

始まったような感覚がありました。

会社を、

どう成長させるかではなく、

会社を、どう終わらせるか。

それも、

経営者として、

私が決めなければならないことでした。

私は、

会社を終わらせたことを、

正しい決断だったと、

言いたいわけではありません。

違う選択肢も、

あったのかもしれません。

続けていれば、

何かが変わった可能性もあります。

それは、

今でも分かりません。

でも、

一つだけ、

分かっていることがあります。

あの社員が、

会社を終わらせたわけではない。

あの言葉が、

会社を終わらせたわけでもない。

決断するための材料は、そのずっと前から、私の中に積み重なっていました。

ただ、

最後の一滴が落ちたことで、

私は、

自分が、

すでに答えを持っていたことに、

気づいたのだと思います。

大きな決断をすると、

人は、

一つの理由を、

探したくなることがあります。

「あれが原因だった。」

「あの人のせいだった。」

「あの出来事がなければ。」

一つに決めれば、

説明しやすいからです。

でも、

本当は、

そんなに単純ではないのかもしれません。

最後に起きたことだけを見て、

原因だと決めない。

その前に、

何が積み重なっていたのかを見る。

私は、

会社を終わらせるという、

大きな決断から、

それを学びました。

最後の一つは、原因ではない。

それまで積み重なったものに、自分で答えを出すための、きっかけだった。

そして、

何かを終わらせる決断は、

必ずしも、

そこで全てが終わるということではありません。

私の場合は、

会社を終わらせると決めた日から、

「最後を、どう終えるのか。」

という、

新しい決断が、

始まりました。


🐾アオ日記

主人は、

最後の一滴だけが、

原因じゃないと言うにゃ。

アオも、

よく分かるにゃ。

コップを、

テーブルから落としたときも、

最後に触った前足だけが、

悪いわけじゃないにゃ。

そこに、

コップを置いた主人にも、

原因があるにゃ。

……。

アオは、

悪くないにゃ🤣🐾

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