駐車場でよくある事故のひとつに、
前方の車が駐車枠へ入ろうとして(後退を開始し)、後続車と接触する事故があります。
当事者になると、多くの方がこう感じます。
「後ろを見ずにバックしてきたのだから、相手が全部悪いのでは?」
「止まっていたのに、なぜこちらにも過失があるのか納得できない」
このようなケースで、保険会社が提示してくることが多いのが
判例タイムズ336図(駐車場内における入庫動作車と通路進行車の事故類型)です。
判例タイムズ336図とは
336図は、
駐車場内の通路を進行する車と、駐車区画へ入ろうとする車が接触した事故
を想定した類型です。
実務では、
駐車場は人や車の動きが多い
突然停止・後退・切り返しが起きやすい
という特性から、
通路を進行する側に、より強い注意義務が求められる
という考え方がベースになります。
そのため、保険会社から
「通路進行車80:駐車側20」
といった過失割合を提示され、強い違和感を覚える方も少なくありません。
なぜこの類型は特に揉めやすいのか
336図の事故が揉めやすい理由は、大きく3つあります。
感情と実務のズレ
「バックしてきた方が悪い」という感情と、
類型ベースの考え方が噛み合わない。
修正要素が多い
速度、停止の有無、合図、後方確認、見通しなど、
細かい事情で評価が大きく変わる。
図が“結論”のように扱われがち
実際には出発点にすぎないのに、
図だけで決められたと感じやすい。
大事な前提:336図は「結論」ではなく“スタートライン”
ここで一番大切なのは、
336図の割合はあくまで基本形であり、個別事情で修正されるもの
という点です。
実務では、
「336図だから80対20で終わり」
と即決することは、ほとんどありません。
事故状況を一つずつ整理し、
修正要素を積み上げて判断していきます。
🔑 交渉を有利に進める最大の分かれ目
― ハザードランプの有無 ―
判例タイムズ336図の事故で、
過失割合が大きく動きやすい実務上の重要ポイントが
**「駐車側がハザードランプを点灯していたかどうか」**です。
■ 駐車側がハザードを点けていた場合
駐車側が、駐車枠へ入る前にハザードランプを点灯していた場合、
周囲に対して
「これから駐車(後退)動作に入る」
という意思表示をしていた
後続車から見ても
バックを予見することが比較的容易だった
と評価されやすくなります。
その結果、
後続車側の注意義務がより重く見られ、過失割合が修正されやすい
のが実務の感覚です。
■ 後続車側は「ハザードがなかった」ことを必ず確認
一方で、
駐車側がハザードを点灯していなかった場合は、
駐車や後退の意思表示がなかった
突然バックしてきた
後続車として予測が難しかった
という主張がしやすくなります。
後続車側としては、
「相手はハザードを点けていなかった」
という点を、
事実関係として必ず確認・指摘することが重要です。
この一点で、
過失割合の評価が大きく変わることも珍しくありません。
■ ハザードは法律義務ではないが、実務では重視される
駐車時のハザード点灯は、
道路交通法で明確に義務付けられているわけではありません。
しかし実務では、
一般的な運転慣行として広く行われている
周囲への注意喚起として合理的
危険回避行動として評価されやすい
と考えられており、
裁判でも重視される要素のひとつとされています。
「法律で決まっていないから関係ない」
という扱いにはならない点に注意が必要です。
実務者として伝えたいこと
判例タイムズ336図の事故では、
ハザードの有無だけで、過失割合の流れが逆転することもあります。
だからこそ、
駐車場で駐車する前は、必ずハザードランプを点灯する
これは事故防止だけでなく、
万が一のときに不利にならないための自衛策でもあります。
ほんの一手間ですが、
後から大きな差になることがあります。
最後に:過失割合は「図」より「事実の整理」
過失割合で揉めるケースでは、
「割合」そのものよりも、
前提となる事実認識がズレていることが多いです。
停止していたのか
合図はあったのか
どのタイミングでバックが始まったのか
ドライブレコーダーの有無
こうした点を整理するだけで、
交渉の見通しが変わることもあります。
駐車場事故の過失割合で納得できない点があれば、プロフィールからご相談いただけます。