崩れないために必要なことは、選択式を「作業化」することだと考えています。
感情を挟まない。
焦らない。
淡々と処理する。
選択式は、事故を防止できれば、必要以上に怖がるものではありません。
前回の「落ちないための選択式解法 社労士試験勉強法のコツ⑩」では、選択式を解くための具体的なルーティンを整理しました。
今回は、その解法手順に沿って、実際にどのように考えるか、そしてどのように訓練するかを整理していきます。
まず前提条件として。
選択式対策は、知識がなくてもテクニックで何とかなる、という話ではありません。
・暗記を徹底する
・テキスト読みを徹底する
・横断知識を整理する
この土台を崩すことなく、活かすための訓練方法の紹介です。
法改正が試験に与える意味
近年の社会保険労務士法改正、とりわけ令和7年成立の第9次改正は、単なる業務整理ではありません。
主な改正内容は、次のとおりです。
・「目的規定」から「使命規定」への移行
・労務監査業務の明記
・補佐人・裁判対応規定の整備
・名称保護の強化
これらは、社労士を単なる「手続代行者」ではなく、労務管理と福祉向上を担う専門職として、より明確に位置づけ直す改正だといえます。
法律そのものが、社労士に求める役割の水準を引き上げているのです。
第9次改正が目指している方向は、
・コンプライアンスの徹底
・労務監査による適法性確認
・社会的使命の自覚
です。
これらはすべて、条文を正確に理解し、制度趣旨を踏まえて判断できる力を前提としています。
試験は、その資格に求められる能力を測る装置です。
社労士法に使命規定が明文化され、労務監査が法定業務として明記された以上、試験が測るべき能力も変わっていくと考えるべきです。
今後より重視されるのは、単なる暗記量だけではありません。
これからの合格者像
今後求められる合格者像は、次のような人材です。
・択一式を安定して突破できる基礎力がある
・条文を精密に扱える再現力がある
・制度趣旨を説明できる理解力がある
・横断的に考えられる思考力がある
社労士法が「使命」を明文化したことは、単なる条文修正ではありません。
それは、試験が選抜しようとしている人材像の宣言でもある。
私はそのように捉えて、対策を行う必要があると考えています。
選択式は、法改正の方向性や制度趣旨を比較的色濃く反映する傾向があります。
そのため、テキストにそのまま載っていない問題や、一段ひねった「考えさせる問題」は、ほぼ毎年出るものとして準備する。
選択式対策で身につけるべき力は、次の二つ。
① 基本問題を落とさない力
② 考えさせられる問題に対応する力
選択式を「運」に左右させない。
①については基本事項を覚えることで対処する。
ただ、基本事項は多く、細かいです。どれだけ勉強していても、本試験で思い出せないことは起こる。
②の考えさせる問題は出る。しかし、作問者から見れば、考えの道筋さえ見つけられれば解答できるものが多い。合否を分ける問題であれば、なおさらその傾向は強い。
だからこそ、これらを想定内にすることで崩れない。
基本を覚える
忘れても拾えるようにする
考える
これらの能力を身につける。
練習方法
① 1科目5空欄単位で行う
本試験形式に合わせる。
選択式問題集は、5空欄が一つのテーマに集中していることが多く、本試験訓練としては不十分である。模試や答練(前年のものでも可)を使用する。
・まず5分で必ず埋める
・その後、○→◎確認まで行う
ここまでは本番と同じ。
② △の空欄を1科目最大10分粘る
◎が3つあっても、あえて粘る。
練習の目的は得点ではない。
自信をもって埋められない空欄に対し、どうすれば正解確率が上がるのかを体験的に学ぶ。
最初の5分+○→◎確認の工程の精度向上と、△を粘る工程。
この二つが選択式対策の柱である。
アプローチ方法
語群から候補を抽出し、不適切なものを消去する。
消去は必ず言語化する。
・なぜその語句は地文に合わないのか
・制度趣旨とどこがズレているのか
・用語の定義と一致しているか
「なんとなく違う」は禁止。
必ず理由を言葉にする。
③ ヒントを生成する
答えが浮かばないならヒントを生成する。
・原則と例外
・類似制度
・上限・下限
・主語
・条件
・制度趣旨や政府方針
思いつく情報を余白に書き出す。
これは想起訓練である。最初はヒントが浮かんでこない。
しかし繰り返すことで、生成されるヒントの数が増えていく。
関連知識が整理され、使える知識へと変わる。制度趣旨を当てはめ続けることで、リーガルマインドが育つ。
それでも選びきれない場合は、ヒントに照らしてより不適切な方を消去する。
最終的には、こじつけでもよい。
根拠を持って解答する。
④ 復習が本体
◎と判断したものが誤答だった場合、その理由を徹底検証する。
「絶対」と確信して間違えた判断基準は必ず修正する。
消去についても同様に検証する。
△だった問題は、正解・不正解だけでなく、自分の思考と解説を照合する。
どのように思考すれば、「正解に近づけた」あるいは「不正解の語句を消去」できたのかを検討する。
この工程が難問対応力を育てる。
基本問題のセーフティネット
◎だった空欄について、
「本試験でど忘れしたら?」
を想定する。
語句を忘れた前提で、②の思考を使ってどう消去し解答に至るかをシミュレーションする。
基本事項は横断知識から辿り着けることも多い。
スムーズに正解できた空欄も思考方法の訓練に変えていく。
基本を落とすと致命的。
しかし、忘れてしまうもの。
忘れても拾える訓練をしておくことで、精神的パニックも防げる。
結論
選択式は運ではない。
3点を設計する。
事故を消す。
消去精度を上げる。
そのために、本試験レベルの良問に多く触れる。
練習で難問に出会ったときに「よし来た」と思える状態になれば、本試験でも淡々と処理できる。
選択式は、偶然で乗り切る科目ではない。
設計と訓練で安定させることができる科目である。
だから選択式はこう準備する。
社労士試験は、能力よりも、試験制度に合わせて学習をどう設計するかが大切だと考えています。
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