こんにちは!高倉友彰です。
新しい技術やサービスが溢れるこの場所で、私たちは毎日、誰かの才能を数字や星の数で測りながら生きています。
大手企業でシステムを構築していた頃の私は、すべての価値は数値化できると信じて疑いませんでした。
しかし、個人として画面の向こう側の誰かと向き合うようになると、そこには論理だけでは説明のつかない、奇妙な手触りがあることに気づかされます。
昨日、ある依頼者からのメールを開いた瞬間、私の部屋の温度が急激に下がり、足元のフローリングが深い沼のように変化しました。
慌てて椅子にしがみつくと、画面の中から一羽の真っ白な梟が飛び出し、私の肩に止まって、古い言葉で何かを囁きました。
それは仕様書でも相談内容でもなく、はるか昔に滅びた星で歌われていた、子守唄のような響きでした。
ふと窓の外を見ると、街を走る車がすべて巨大なカタツムリに変わっており、その殻には無数の時計の針が、それぞれ異なる速度で回転していました。
この世界を動かしているのは、効率や利益といった歯車ではなく、もっと原始的で、もっと不条理な「誰かの祈り」なのかもしれません。
私は震える指でキーボードを叩きましたが、打ち込まれた文字は画面に定着せず、銀色の砂となって床にこぼれ落ちていきました。
砂は積もり、私の膝を覆い、やがて部屋全体を一足早い冬の景色に変えてしまいました。
その時、画面の右隅にある「見積もり相談」のボタンが、心臓のように脈動し始めました。
ボタンを押してみると、スピーカーから流れてきたのは、何千人もの人々が同時に深呼吸をする、圧倒的な生命の音でした。
その音圧に押されるように、部屋を埋め尽くしていた銀色の砂は一瞬で熱い蒸気へと変わり、天井を突き抜けて空へと昇っていきました。
私はただ、キーボードの上に置かれた自分の手を見つめていました。
この手で生み出しているものは、誰かの役に立つツールなのか、それとも誰かの夢を繋ぎ止めるための、ただの頼りない糸なのか。
気がつくと、カタツムリも梟も消え、画面には静かにカーソルが点滅しているだけでした。
でも、左側のポケットを探ると、そこには覚えのない一粒の、冷たく光る真珠が転がっていました。
私たちが売買しているのは、もしかすると技術や知識ではなく、お互いの人生のどこかで落としてしまった、大切な記憶の一部なのかもしれません。
今夜もまた、画面の向こう側で、名前のない星がひとつ、静かに爆発する音が聞こえます。