三十歳を過ぎたころ、心身の不調が続いたせいでずっと好きだった語学の勉強ができなくなってしまい、新しい趣味を見つけようと模索していた。
唯一興味が持てそうだったことは食だった。
世界中の色々な言語や文化に触れたおかげで、世界の様々な食文化について知り、実際に食べてみたいと思ったのだ。
三十二歳のとき、大学生のころに買ったけどあまりにも怖くて食べられなかった臭豆腐に再挑戦してみた。
まるで動物園を思わせるようなあまりの臭さに家の中で異臭騒ぎを起こしてしまったが(苦笑)、意外と食べられる味であった。
だが、これがきっかけとなって、その後世界中の様々な発酵食品を食べた。マムトムやニョクマムのようなベトナムの調味料を買ってみたり、八丁味噌の味噌蔵に行ってみたり、当時調べたことをまとめた記事の総数は百を超える。
知らないことについて知るのは楽しかったし、何より気分転換になった。
そして、その後しばらくして、また言語学に戻ってくることができた。
思ったのだが、どんなに好きなことでも、人間ずっと同じことをやり続けると、やはりどうしても飽きてくるしうんざりもする。
たまにはまったく違うジャンルのことに触れてみると、一見関係のないような点と点が有機的につながって、新たな気づきを与えてくれる場合がある。
何事も学びであり、どんな学びも無駄にはならない。
自分が知らないことにどの程度興味を持てるかでその後の人生の豊かさが決まる、とさえ思っている。