「テレビCMなんか、もう誰も見てないよ」
クライアント様から、そんなお声をいただくことがあります。
これに対して、テレビCMはまだまだ媒体として優秀ですよ、という話をしたいです。
理由は「リーチポテンシャル」「CPM」「信頼性」という3つ。
これらの点で、デジタルと比べても今なお強みを持っているからです。
テレビのリーチポテンシャルは、はっきり言って”最強”
リーチポテンシャルとは、簡単に言えば
「その媒体が理論上、最大で何人まで届く可能性があるか」
という、潜在的なリーチボリュームを意味します。
実際の接触者ではなく、
広告主が買える範囲/媒体が提供可能な範囲での“潜在到達力”です。
この用語を押さえておくと、テレビとデジタルの立ち位置が鮮明になります。
メディア別リーチポテンシャルで言うと
以下のようなデータがあります。
YouTube(広告ツール上の潜在到達率):日本では「日本国内人口の約63.8%」
Instagram(Meta広告ツール):2024年時点で日本国内人口の約45%程度
その他SNS/プラットフォーム(X/TikTok 等):TikTokは日本の成人広告対象で24.7%程度。
〔引用:DataReportal – Global Digital Insights〕
それに対してテレビは、全国放送世帯保有率95%超
〔引用:文化放送メディアナビ〕
仮に何十億、何百億と、媒体の限界まで広告を打てば
日本の全国民のうち95%に広告を届けられるということです。
これはすごいことです。
CPMが安いから、投資対効果が高くなる
続いて、もうひとつ重要な指標「CPM」です。
CPM(Cost Per Mille)とは
「広告が1000回表示(または接触)されるごとに発生する費用」
を意味します。広告費 ÷ 表示回数 × 1,000=CPM。
この指標を使うことで、媒体・フォーマットが異なっても
「1,000人に届くためにはいくらかかるか」が比較可能になります。
ここでテレビ vs デジタルでの比較をしてみましょうか。
「テレビCMは高い」と思われがちですが、実は到達単価で見ると安いんです。
・テレビCM(地上波):約300〜700円
・YouTube広告:約800〜1000円
・ニュースアプリ広告:約1300円前後
〔引用:CM Starter「媒体別CPM比較 2024」・Runwayplus「動画広告の費用相場」〕
実務感覚では、全国ネット/ピーク帯・30秒枠など
条件が整えば1,000人あたり数百円というケースもある感覚です。
もちろん制作費・放送費・エリア・時間帯・番組特性・枠条件によって
CPMは変動しますが、
媒体としてベースの価格が思いっきり安いんです。
こんな安いの、実は日本くらいなんですね。
他の国はもっと高い。
信頼性。「広告信頼度」とテレビCMの審査構造
続いて、信頼性について。
これは“ブランドがどれだけ安心して消費者に届けられるか”
という視点で非常に重要です。
例えば、日本インタラクティブ広告協会(JIAA)が実施した
「2025年インターネット広告に関するユーザー意識調査」では、
「インターネット広告が信頼できる」と回答した割合=21.6%
だそうです。
テレビCMが信頼されやすい背景として
CM素材が放送局・地上波等で「考査(審査)」を受ける仕組みがある
というのは大きいでしょうね。
各放送局・ネットワークが
「広告主の業態」「表示表現」
「虚偽・誇大表現の有無」「差別的/不快な表現の有無」
などをチェックするんです。
この審査を通過したものだけがスポットCMとして世帯に流されるため、
視聴者側には「テレビCM=一定の基準をクリアしている」という
心理的安心感が生まれます。
まあ局側も自分たちの媒体価値を保つ役割はありますから。
それが生活者に対しての信頼に繋がっているのです。
ターゲティング精度の限界。テレビの“粗さ”とは?
テレビの強みを語りましたが、同時に理解すべき“弱点”もあります。
その代表が「ターゲティングの精度」です。
日本のテレビ視聴率調査を行うビデオリサーチ社では、
広告主が番組・時間帯を買う際の視聴者属性区分として、
“MF1/MF2/MF3”という大まかな年齢・性別区分があります。
MF1:男女 20〜34歳
MF2:男女 35〜49歳
MF3:男女 50歳~
基本的にテレビCMはこの区分で取引されます。
テレビ広告枠を購入する際、
「この番組のM1視聴者含有率は何%か」
という数字をベースに売買が進みます。
でも思いませんか?
男性か女性か。20-34歳か50歳以上か。
で分けるって相当ざっくりじゃない?
これはテレビという媒体の特性に依拠した結果です。
「女性25〜34歳・子育て中」に絞って広告を出したい場合、
テレビでは番組/時間帯を選んで
“だいたいその年齢層が多そう”という枠を購入します。
しかし、実際にはその番組を
「男性50代」「シニア層」「子なし層」なども
多く視聴していることは容易に想像できますよね?
このため、広告主から見れば
「ターゲット含有率(=購入した枠に含まれる自分の訴求対象の割合)」
が精密ではない。
つまり、テレビでは“当ターゲット100%”という設計は難しい。
ターゲットでない層に、言ってしまえば
「無駄打ち」している可能性だってあります。
対して、デジタル広告では
「興味関心:子育て中」「地域:東京23区」
「時間帯:18–21時」など細かく設定できるため、
ターゲットへの訴求精度は高くなります。
ターゲットが“全国・幅広い年齢層”ならテレビが得意。
ターゲットが“限られた少人数/ニッチ”ならデジタルが得意。
そして、テレビでは購入枠(番組・スポット)と
ターゲット含有率を媒体社から提示してもらい、
自分の訴求対象に「どれくらい届くか」を必ず確認する必要があります。
この“粗さ”を理解せずにテレビだけで狙った施策を実行すると、
リーチは取れても訴求効率が落ちるリスクがあります。
他媒体との比較と“テレビ×デジタル”設計の重要性
以上から、テレビは今の時代も
やはり強い媒体であることがご理解いただけましたでしょうか。
とはいえ弱点もある中で、
テレビとデジタルで使い分けをしていくことが何よりも重要です。
大手企業・ナショナルブランド
→ テレビを主軸に据え、ブランド認知・信頼性を構築。
中小企業・ニッチ商材
→ デジタルを主軸に据え、ターゲットを絞り込んで効率を重視。
上流(認知・興味)
=テレビCMで「まず広く知ってもらう」
中流・下流(検討・購買)
=SNS・検索広告・動画配信で「興味が出た人を行動へ導く」
テレビでリーチを確保し、その後デジタルで深める
──この流れが“現代の王道”です。
テレビCMを見てスマホでブランドを検索、
そのあとSNSで口コミを確認、という流れは往々にしてあります。
“目的・予算・ターゲット”に応じてメディアを掛け合わせて
プランを設計できるかが、
プロのマーケターとしての腕の見せ所です。
最も重要なのはそれぞれのメディアの特性を理解し
各クライアント様の状況を正確に把握する。
両者のバランスを見て、“どう使うか”決める。
その中でテレビは依然として、
「全国に幅広く/信頼感を伴って/比較的効率的に」情報を届けられる
パワフルなメディアであることは変わりない。
真っ向から否定するのではなく
繊細なバランスのもと、戦略を遂行できたら素敵ですね!!