「マーケティングって、何から手をつければいいかわからない」
「SNSを始めてみたけど、続かなかった…」
多くの中小企業で、このような声が聞かれます。人手や予算、時間に限りがある中で、既存のお客様への対応や日々の営業活動に追われ、新しい顧客開拓まで手が回らないのが現実です。
よくある失敗は、しっかりとした計画がないまま、流行りの施策に飛びついてしまうことです。ですが、場当たり的な活動は、結局続かない残念な結論にたどり着いてしまいます。
私はこれまで、複数の中小企業の方々のご支援をしてきました。たった一人からでも始められる、90日間のアクションプランを3つの記事に分けてご紹介します。
【第1回】最初の1週間でやるべきこと:地図とコンパスを手に入れる
この記事でわかること:
◯なぜ、いきなり施策を始めてはいけないのか
◯具体的な目標(KPI)の立て方
◯「理想のお客さん」を見つける超簡単な方法
◯ライバルに勝つための「自社の強み」の見つけ方
はじめに:急がば回れ。まずは「計画」
マーケティングで最もよくある失敗は、計画を立てずにいきなり施策(戦術)に飛びつくことです。
航海に出るのに、地図もコンパスも持たずに出発するようなものです。どこに向かっているのか分からなければ、当然目的地にはたどり着けません。
最初の1週間は、マーケティング活動の成功確率を飛躍的に高める、最も重要な土台作りのフェーズにしましょう。ここで決めたことが、今後の活動の「なぜ?」に答える指針となり、限られた時間と予算を最大限に活かすための羅針盤となります。
Step 1:目的地を決める – 具体的な目標(KPI)を立てよう
「売上を伸ばす」という目標だけでは、何をすべきか分かりません。目標は、具体的で、測定可能でなければ、施策の良し悪しを判断することができません。
KGI(会社のゴール)からKPI(自分のタスク)へ逆算する
まずは、会社の最終目標であるKGI (Key Goal Indicator) を決めます。
これはシンプルに「売上」や「契約数」で考えましょう。
KGIの例: 「1年後に、マーケティング経由で1,200万円の新規売上を達成する」
次に、このKGIを達成するために、あなたが日々追いかけるべき具体的な中間目標、KPI (Key Performance Indicators) に分解します。これがあなたの「やることリスト」の元になります。
【逆算法の具体例】
◯目標売上(KGI): 1,200万円/年 → 100万円/月
・平均契約単価: 50万円
・必要な契約数: 100万円 ÷ 50万円 = 月2件
・営業の成約率: 20%(5商談で1件成約)
・必要な商談数: 2件 ÷ 20% = 月10件
・問い合わせからの商談化率: 25%(4件の問い合わせで1件商談化)
・必要な問い合わせ(リード)数: 10件 ÷ 25% = 月40件
この計算により、あなたの最初の具体的な目標(KPI)は「月に40件の問い合わせを獲得すること」だと分かりました。このKPIを達成するために、細かい行動目標を設定していきます。
目標設定の「SMART」ルール
設定する目標は、以下の5つの要素を満たしているか確認しましょう。それぞれの頭文字をとって、SMARTと呼ばれる考え方です。
S (Specific): なるべく具体的に(例:「問い合わせを増やす」→「Webサイトからの問い合わせを増やす」)
M (Measurable): 測定可能に(例:「たくさん」→「月40件」)
A (Achievable): 達成可能か?(非現実的な数字になっていないか)
R (Relevant): 会社の目標(KGI)と関連しているか?
T (Time-bound): 期限はあるか?(例:「いつか」→「毎月」)
Step 2:誰に売るかを決める – 「理想のお客さん(ペルソナ)」を描こう
「すべての人」に売ろうとすると、マーケティングの精度が上がりません。限られたリソースで最大の効果を出すには、理想のおお客さん像(ペルソナ)を具体的に描くことが不可欠です。
既存顧客を分析する: 難しく考えず、これまでに成約した3件のお客様をピックアップします。今いるお客さんの中で、一番利益が出ていて、関係も良好なのはどんな会社・担当者でしょうか。これがあなたの最初のターゲットの原型です。
情報を集める: 営業担当者にヒアリングしましょう。「どんなことで困っていましたか?」「何が決め手で契約してくれましたか?」といった質問が有効です。過去の問い合わせメールや営業日報も宝の山です。
テンプレートを埋める: 集めた情報を、以下の切り口で整理します。
【会社情報】
└どんな会社?(企業ペルソナ)
└業種、企業規模(従業員数・売上)、所在地、社風など
└会社としての目標(例:コスト削減、生産性向上)
└会社としての課題(例:システムが古い、人手不足)
【担当者】
└どんな人?(担当者ペルソナ)
└部署、役職、年齢、役割、性格、情報収集の方法(Webサイト、SNSなど)
└個人の目標(例:業務を効率化したい、上司に評価されたい)
└個人の悩み(例:日々の業務に追われている、情報収集の時間がない)
└購買決定の役割(決裁者か、情報収集担当者か、利用者か)
└サービス選定で重視すること(価格、機能、サポートなど)
Step 3:自社の強みを明確にする(バリュープロポジション)
バリュープロポジションとは、「競合ではなく、なぜ自社から買うべきなのか」という問いに対する答えです。
このフレームワークを使えば、顧客のニーズと自社の提供価値がズレていないか、視覚的に確認できます。
【右側:顧客を理解する】
顧客のジョブ: 顧客が仕事で達成したいことは?(例:営業報告の手間を減らしたい)
ペイン(悩み・痛み): そのジョブを阻む障害は?(例:報告書作成に毎日1時間かかっている、入力ミスが多い)
ゲイン(得たいこと): 理想の状態は?(例:外出先からスマホで報告を終えたい、データが自動で集計されてほしい)
【左側:自社の価値を定義する】
製品・サービス: 自社が提供するもの(例:AI搭載の営業支援システム)
痛みの緩和剤: 顧客のペインをどう和らげる?(例:音声入力で報告書を自動作成し、作業時間を5分に短縮)
ゲインの創造主: 顧客のゲインをどう実現する?(例:スマホアプリでいつでもどこでも報告可能、リアルタイムで売上予測ダッシュボードに反映)
BtoBの購買は、特に中小企業は将来の夢(ゲイン)よりも、今そこにある痛み(ペイン)を解決することに予算が割かれるケースが散見されます。
そのため、マーケティングのメッセージも「素晴らしい未来が待っています」というよりは「その痛み、私たちが減らします」としたほうが、良いでしょう。
第1回のまとめ:
お疲れ様でした!これであなたのマーケティングの「地図」と「コンパス」が手に入りました。具体的な目標、狙うべき顧客、そして伝えるべき自社の価値が明確になったはずです。
次の記事では、いよいよこの計画を実行に移します。 90日間の具体的なアクションプランを通じて、売上を獲得する方法を解説します。お楽しみに!
↓第2回はこちら!