「これから、こんなことを始めたいんだ」
誰かにそう話して、応援してもらったり、「いいね」と言ってもらったりすると、それだけで少しうれしくなります。
私にも、やりたいことを人に話しただけで、なぜか一歩前に進んだような気持ちになった経験があります。頭の中にしかなかったものが言葉になり、誰かに受け止めてもらえたことで、目標が急に現実に近づいたように感じるのかもしれません。
けれど、その安心感によって、肝心の行動が少し遠のいてしまうこともあります。
話すことで得られる、小さな達成感
もちろん、目標を人に話すこと自体が悪いわけではありません。
言葉にすることで考えが整理されたり、相手から役立つ情報をもらえたりすることもあります。応援してくれる人の存在が、力になる場合もあるでしょう。
一方で、人に話したことで気持ちが満たされ、まだ何も始めていないのに、少し達成したような感覚になることもあります。
「それ、すごくいいね」
「向いていると思う」
「応援しているよ」
そんな反応は素直にうれしいものです。ただ、そのうれしさが、実際に手を動かすことで得るはずだった満足感の一部を、先に受け取ることにもなるのかもしれません。
話したあとに、なぜか熱が落ち着いてしまった。そんな経験があるなら、それは意志が弱いからではなく、言葉にしたことで心がひとまず満たされた可能性もあります。
生まれたばかりの目標は、まだ揺らぎやすい
思いついたばかりの目標は、まだ輪郭がはっきりしていません。
「なぜやりたいのか」
「どんな形にしたいのか」
「本当に自分に合っているのか」
自分でも、うまく説明できないことがあります。
そんな段階で人に話すと、相手の何気ない一言に影響を受けやすくなります。
「それは難しいんじゃない?」と言われて急に自信がなくなったり、善意のアドバイスをもらううちに、最初に自分がやりたかったことが見えなくなったり。
相手の意見が間違っているとは限りません。ただ、生まれたばかりの目標には、他人の意見と自分の気持ちを分けて考えられるほどの根が、まだ育っていないこともあります。
話さないことは、自分の中の熱を守ること
目標をすぐに話さないことは、逃げでも秘密主義でもありません。
まだ小さな熱が、簡単には消えないくらいに育つまで、静かに守っておく。それも一つの選択だと思います。
人に説明しようとすると、筋の通った理由や、分かりやすい計画が必要になります。でも、本当にやりたいことが、最初からきれいに説明できるとは限りません。
「なぜか気になる」
「少し試してみたい」
初めのうちは、それくらいでも十分です。誰かを納得させる前に、まずは自分がその気持ちを確かめる時間があってもよいのだと思います。
言葉にする代わりに、小さく動いてみる
誰かに話したくなったときは、そのエネルギーを小さな行動に変えてみる方法もあります。
ノートに目標を書いてみる。関連する情報を一つ調べる。必要な道具を確認する。5分だけ取り組んでみる。
大きなことをする必要はありません。
話す代わりに一つだけ動いてみると、その目標が本当に自分のやりたいことなのか、少しずつ見えてきます。行動しても気持ちが残るなら、それは自分にとって大切な目標なのかもしれません。
そして、自分の中で「続けてみたい」という気持ちが育ったときに、初めて誰かに話してもよいのです。
目標は、思いついた瞬間に公表しなければならないものではありません。話さない時間もまた、目標を大切にしている時間です。
いつ、誰に、どこまで言葉にするのか。そのタイミングは、自分で決めてよいのだと思います。
次回は反対の視点から、「目標を公言することが、行動の助けになる場合」について考えてみます。