20年近くデザインを見てきて、変わったこと・変わらないこと

20年近くデザインを見てきて、変わったこと・変わらないこと

記事
デザイン・イラスト
このシリーズも、今回で最後になります。

広告代理店でデザイナー・アートディレクターとして8年、独立してからWebディレクター兼デザイナーとして10年以上。前職の人事コンサルタント時代を含めれば、人の心理と向き合ってきた時間はもっと長くなりますが、デザインという仕事に絞っても、もうすぐ20年になります。

最後の記事として、この20年で何が変わり、何が変わらなかったのかを、少し振り返ってみようと思います。

変わったこと

まずツールです。当時は版下を手で切り貼りしていた名残がまだ現場に残っていて、レイアウトひとつ作るのにも今より何倍も時間がかかっていました。今はソフトウェアもAIも進化して、以前なら丸一日かかっていた作業が数十分で終わることも珍しくありません。技術的な参入障壁は、明らかに下がりました。

モールやプラットフォームのルールも、絶えず変わり続けています。数年前に通用した見せ方が、今は規約に触れることもあります。逆に、以前は禁じ手だった表現が、今は当たり前になっていることもある。ルールは生き物で、こちらもそれに合わせて更新し続けるしかありません。

そして、模倣や類似サービスの増加です。良いデザインの「型」は、良いものであるほど早く真似されます。似たようなテンプレート、似たようなキャッチコピー、似たような構成のLPが、あっという間に市場に溢れる。差別化の賞味期限は、間違いなく短くなりました。

こうした変化のスピードは、この20年で加速する一方だったと感じます。

変わらなかったこと

一方で、どれだけツールが進化しても、ルールが変わっても、模倣が増えても、変わらなかったものがあります。

それは、「人は、腑に落ちないと動かない」という、ごく単純な事実です。

きれいなデザインを見て「素敵だな」と思うのと、実際に財布を開いて「買おう」と決めるのとの間には、いつの時代も距離があります。その距離を埋めるのは、色でも配置でもトレンドでもなく、見る人の中に「なるほど、それなら」という納得が生まれるかどうかです。これは版下の時代も、AIが下書きを描いてくれる今も、まったく変わっていません。

前職で人事コンサルタントとして人と組織を見ていたとき、そしてイラストレーター・漫画家として物語を描いていたときにも、結局は同じことを扱っていたのだと、今振り返るとよく分かります。人がどう感じ、どう納得し、どう動くか。デザインという仕事は、その心理を視覚に翻訳する作業に過ぎないのかもしれません。

ツールが変わっても、モールのルールが変わっても、この「腑落ちの構造」を外したデザインは、結局のところ機能しません。逆に言えば、この構造さえ押さえていれば、道具が何に置き換わっても、応用が利きます。

「腑落ちドリブン」という結論

このシリーズを通じて繰り返し書いてきた「腑落ちドリブン」という考え方は、こうした20年近い変化と不変を見てきた末にたどり着いた、今のところの結論です。見た目の良さは前提であって、ゴールではない。ゴールは、見る人が心の中で「うん、それなら」と頷くことです。

これから先も、ツールはさらに進化し、ルールはまた変わり、新しい模倣も生まれ続けるでしょう。それでも、人が納得して行動するという心理の本質は、そう簡単には変わらないはずです。だからこそ私は、流行の型をなぞることよりも、この一点を丁寧に設計することに、これからも時間を使いたいと思っています。

長いシリーズにお付き合いいただき、ありがとうございました。

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す