サプリのジャンルだけ、なぜか"エビデンス訴求"のデザインが多い理由

サプリのジャンルだけ、なぜか"エビデンス訴求"のデザインが多い理由

記事
デザイン・イラスト
EC商品画像やLPをジャンル横断で見ていくと、あることに気づきます。アパレルなら着用感やコーディネート提案、家電なら使用シーンやスペック比較が主役になる中で、サプリメント・健康食品だけは毎回のように「成分表」「臨床データ風のグラフ」「白衣を着た専門家の監修コメント」といった、いわゆるエビデンス訴求のビジュアルが並びます。

これは偶然でも、業界の横並び意識でもありません。デザインの背後にある構造を追っていくと、必然としてそうならざるを得ない理由が見えてきます。

背景にあるのは、薬機法という制約

一番の要因は、薬機法(医薬品医療機器等法)です。サプリメントや健康食品は、医薬品的な効能効果を標榜することができません。「飲めば痩せる」「これで疲れが取れる」といった断定的な表現は、たとえ実感として真実味があったとしても、広告表現としては使えない領域に踏み込んでしまいます。ここは私自身も制作の現場で常に意識しているポイントで、効果効能を断定的に謳うことはできない、という前提を外して設計することはありません。これは表現の自由を狭める制約というより、消費者を誤解から守るための線引きだと捉えています。

「事実の提示」が、信頼を作る代替回路になる

では、断定的な言葉が使えない中で、どうやって「信頼できそうだ」という感覚を伝えるのか。ここでデザイナーが選び取ってきたのが、エビデンス的な情報設計です。「効果を保証する」のではなく、「この成分が、これだけ入っている」「この分野の研究がある」「この専門家が監修している」という事実の提示にとどめる。断定を避けながらも、受け手の側で「根拠がありそうだ」と感じてもらう。言葉で言い切れない分を、情報の構造と見せ方で補っているわけです。

成分表示のグラフィック、含有量の比較チャート、論文や特許のアイコン、専門家の肩書きと顔写真——これらは単なる装飾ではなく、「言い切れないことを、それでも信頼してもらうための代替回路」として機能しています。断定表現という近道が塞がれているからこそ、遠回りの説得力を積み上げる設計が発達してきた、というのがこのジャンルの特殊性です。

余談ですが、この構造を理解しているかどうかで、デザイナーとしての仕事の質は大きく変わります。規制を知らずに「なんとなく成分っぽい図」を置くのと、「ここは断定を避けつつ根拠を匂わせる要素として機能させる」と意図して置くのとでは、同じビジュアルでも訴求の精度がまるで違う。クライアントから預かる訴求ポイントを、法令の枠内でどう最大限に伝えるか。これはコピーライティングだけの仕事ではなく、デザインの情報設計そのものの仕事だと私は考えています。

もちろん、エビデンス訴求も使い方を誤れば「なんとなく信頼できそうな雰囲気」だけの空虚な記号になってしまいます。大事なのは、実際にその商品が持っている根拠と、デザインで見せる情報量が乖離しないこと。誇張ではなく整合性——これも「腑落ちドリブン」の思想と重なる部分です。見た人が「なるほど、そういうことか」と静かに納得できる設計を、法令の制約の中でどう組み立てるか。サプリメントというジャンルは、その難しさとおもしろさが凝縮された領域だと感じています。

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す