修正が少なくて済むクライアントに共通すること

修正が少なくて済むクライアントに共通すること

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デザイン・イラスト
先に断っておきたいのですが、これは「発注者側がもっと頑張って言語化すべき」という話ではありません。「プロなんだから、こちらの意図くらい汲み取ってほしい」というのは当然の期待ですし、実際、うまく言葉にできない状態のままご依頼いただいても、こちらから質問を重ねて形にしていくのが仕事だと思っています。

その前提の上で、今回は少し視点を変えて、EC商品画像やLP制作の仕事をしていて「修正が1〜2回で終わる案件」と「5回、6回と続く案件」の違いがどこから生まれるのか、10年以上デザインの発注を受け続けてきた中で見えてきたパターンを、実務的な視点で整理してみます。ここで挙げるのは「こうしなければならないルール」ではなく、知っておくと双方にとって近道になる、という程度のものだと捉えてください。

まず大きいのは、初回の情報提供の「具体性」です。修正が少ない発注では、商品の特徴やターゲット層、使ってほしいトーンなどが、抽象的な理想ではなく具体的な言葉で共有されます。「高級感を出したい」だけでなく、「価格帯は◯円台で、写真は白背景中心、文字は最小限に抑えたい」といったように、判断材料になる情報が最初から揃っている。これがあると、デザイナー側の解釈のブレが減り、初稿の段階で方向性が合いやすくなります。ただし、これは発注者が必ず用意すべき情報というより、こちらから「価格帯はどのあたりですか」「写真の雰囲気は白背景と生活感、どちらに寄せたいですか」と質問すれば、同じように揃えられるものでもあります。

次に感じるのは、「譲れないポイント」と「お任せしていいポイント」を最初に切り分けている点です。すべてを細かく指定しようとすると、かえって発注者の意図とデザイナーの技術的な判断がぶつかりやすくなります。逆に、ロゴの位置や商品名の表記といった絶対に外せない要素だけを明確にし、配色のバランスやレイアウトの微調整は制作側に委ねる、というスタンスの案件は、初稿の完成度が上がりやすい傾向があります。任せる部分があるからこそ、デザイナーの経験値が生きる余地が生まれるのだと思います。

参考イメージの共有の仕方にも、はっきりとした違いがあります。修正が少ない案件では、参考イメージが1〜2点に絞られていることが多いです。10枚、20枚と大量の参考画像を送っていただくケースもありますが、それぞれのイメージが伝えたい要素が異なると、結局「全部を少しずつ取り入れる」ような曖昧な指示になってしまい、初稿がどの方向にも寄り切らないものになりがちです。逆に「この構図の余白の取り方が好き」「この文字の入れ方を参考にしたい」と、参考にしたい要素を絞り込んで伝えていただけると、狙いが明確になり、初稿の的中率が上がります。

もうひとつ、意外と見落とされがちなのが「NGの共有」です。好みや要望だけでなく、過去に他社で失敗した経験や、社内で不評だった表現などを先に教えていただけると、同じ轍を踏まずに済みます。ポジティブな要望だけでは見えてこない判断基準が、NG情報には詰まっていることが多いです。

そして、初稿への反応の仕方も、その後の進行を大きく左右します。良い点と気になる点を分けて伝えていただけると、デザイナーは「どこを維持し、どこを直すべきか」を正確に把握できます。逆に「なんとなく違う」という感覚だけが伝えられても、それ自体は自然な反応です。そこから「色味ですか、それとも配置ですか」とこちらが切り分けを手伝うことで、同じように精度を上げていくことができます。

これらは、発注のハードルではなく引き出すための材料


ここまで挙げたパターンに共通しているのは、特別なスキルではなく、判断軸がひとつふたつ明確になっているかどうか、というだけの違いです。ただ、繰り返しになりますが、これは発注者側が完璧な指示書を用意する義務があるという意味ではありません。うまく言葉にできない状態は、発注する側として自然なことです。

もともと私は雑誌広告の制作に携わっており、一度掲載したら後戻りできない、数百万円単位の予算が動く現場で、クライアントの言葉の裏にある本当の要望を聞き出す訓練を受けてきました。「もしかして、こういうことでしょうか」と一つずつ当てにいく作業は、見た目を綺麗に仕上げる技術とは別の、ディレクションの技術です。今回挙げたポイントを知っておいていただけると進行はよりスムーズになりますが、知らなくても、こちらから同じところまで引き出しますので、どうぞ安心してご相談ください。

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