修正依頼、伝えにくくないですか?
デザインを受け取って、なんとなく違和感がある。
でも、それが何なのか言葉にできない。
そんな経験は、発注する側なら誰にでもあると思います。
正直に言えば、「そこまで言語化しなきゃいけないなら、自分でデザインした方が早いのでは」と思う方もいるはずです。
「プロなんだから、こっちの意図くらい察してほしい」というのも、決してわがままな要望ではありません。
むしろ、それこそが発注する側の当然の期待だと思います。
この記事では、修正が早く進むための具体的なコツを紹介しますが、先に結論を言っておくと、これは「言葉にできるようになってください」というお願いではありません。
ただ、知っておくと、手元の効率が上がるコツです。
わたしへの修正依頼の際は、うまく言葉にできなくても構いません。
それを引き出すところまでが、わたしの仕事だと思っているからです。
「察する」を仕事にしてきた理由
私はもともと広告代理店で、雑誌広告の制作に携わっていました。
雑誌広告は、一度掲載されてしまうと後から直すことができません。しかも一本の出稿に、数百万円単位の予算が動くこともある世界です。
「いい感じにしといて」と言われて「わかりました」と安請け合いすることは、そこでは許されませんでした。
だからこそ、クライアントが口にした言葉の裏にある、本当に求めているものが何なのかを、ヒアリングの中で見極める訓練を叩き込まれました。
言葉にしきれていない要望を、「もしかして、こういうことでしょうか」と一つずつ当てにいく。曖昧な要望の奥にある本質的な要件を、会話の中で一緒に掘り出していく。
これは、絵を綺麗に仕上げる技術とは別の、ディレクションの技術です。
見た目よくものを作れる人はたくさんいますが、何を作るべきかを聞き出す力は、また別の専門性だと思っています。
なので、この先に紹介するコツは「これができないと困る」というハードルではなく、「知っていると、さらにスムーズになる」というおまけのようなものだと捉えてください。
うまく言葉にできない時は、遠慮なく「うまく言えないんですが」と一言添えてもらえれば、そこから一緒に紐解いていきます。
言葉にする作業が、早道になるのは確かです
クライアントさんもいくつかのコツを知っておくと、こちらの引き出す時間そのものを短縮できるのも事実です。
ここからは、余力がある時に使ってもらえると助かる、実践的な視点を紹介します。
デザインへの違和感は、感覚的には一塊に見えても、分解すると多くの場合「色」「配置」「文字量」「雰囲気」のどれか、あるいは組み合わせに収まります。
「なんか地味」という感想は、色の彩度や明度の問題かもしれませんし、文字と余白のバランスの問題かもしれません。
修正のご依頼をいただくとき、まずこちらから確認するのもこの切り分けです。
「気になっているのは、色味ですか、それとも配置ですか」とお聞きするだけで、「そういえば、色というより文字が多すぎる気がします」と、依頼者ご自身が気づかれることもよくあります。
「目的→理由→方法」の順で伝えると、驚くほど早く着地する
修正のやり取りが長引く時、実は「方法」だけを先に伝えてしまっていることが多いです。「もっと赤くしてください」とだけ言われると、赤くはしますが、なぜ赤くしたいのかが分からないまま作業することになります。
もし本当の目的が「セール感を強めたい」だったなら、赤くする以外にも、期間限定を示す文言を加える、価格表示のメリハリを強めるといった、もっと効く手段があったかもしれません。
もし余裕があれば、「目的(何を達成したいか)→理由(なぜそう感じたか)→方法(具体的にどうしたいか)」の順で伝えていただけると、こちらの提案の幅が一気に広がります。
方法の部分は、デザイン知識がなければ無理に考えなくても構いません。
「セール感が足りない気がする、赤みが弱いからかもしれない」
くらいの粒度で十分です。具体的な手段は、複数の選択肢をこちらでご用意します。
ちなみに、「なる早でお願いします」「適当にいい感じにしておいてください」という言い方は、悪いわけではないのですが、急ぎの度合いも「いい感じ」の中身も人によって想定が異なるため、結局は確認のやり取りが挟まりやすくなります。
急ぎの場合は希望日を、お任せの場合は「これだけは外したくない」という条件だけ添えていただけると、こちらも動きやすくなります。
「参考」は説明より雄弁
もうひとつ効果的なのが、参考にしたい他社事例やサイトのURLを添えることです。
「もっとおしゃれに」「高級感を出したい」といった言葉は、人によって思い浮かべる画像がまったく異なります。同じ「高級感」でも、黒地に金の文字を思い浮かべる人もいれば、余白を贅沢に使った白基調のデザインを思い浮かべる人もいます。
余裕があれば、1点だけでなく2〜3点ほど並べていただけると、さらに伝わりやすくなります。
1点だけだと「その通りに寄せてほしい」という指示に見えてしまいがちですが、2〜3点あることで「この中の共通点を汲み取ってほしい」という抽象度が伝わりやすくなるからです。
どの要素に惹かれたのか、「配色が好み」なのか「余白の使い方が好み」なのかを一言添えていただけると、意図しない方向への修正も防げます。
「全部直して」ではなく「ここから直して」
修正依頼でもう一つ起こりやすいのが、違和感のある箇所とない箇所が混ざったまま「全体的に見直してほしい」とお伝えいただくケースです。
的が絞れず、結果的に良かった部分まで変わってしまうこともあります。
「メインビジュアルはこのままで、下部の価格表示だけ文字を大きくしたい」というように、変えたい部分とそのままでいい部分を両方伝えていただけると、実は最短ルートになります。
言葉にできなくても、そこから一緒に始めればいい
ここまでいくつかコツを紹介しましたが、繰り返しになりますが、これらは「できていないと困るルール」ではありません。
うまく言葉にできない時ほど、こちらから質問を重ねて、一緒に本当の要望を掘り起こしていきます。雑誌広告の現場で鍛えられたのは、まさにこの「察して、確かめて、当てにいく」という工程そのものでした。
腑落ちした状態で発注できることは、結局のところ、良いデザインを最短で受け取ることにつながっています。
そしてその「腑落ち」に至るまでの道のりを、言葉にする作業ごと引き受けるのが、私の仕事だと思っています。