―「身体拘束」を例に、記事の書き方をお見せします―
医療・介護の記事を依頼するとき、「専門知識がある人に書いてほしい」と考えるのは自然です。
ただ、知識があるだけでは、記事は伝わりません。
同じ出来事でも、誰の位置から見るかで、文章の焦点が変わるからです。
私は記事を書くとき、テーマだけでなく
「この記事を、誰が、どこから見るのか」
を考えています。
このページでは、その考え方を実際の記事でお見せします。
専門知識をどう文章に落とし込んでいるかも、実例からご覧いただけます。
なぜ「身体拘束」を題材にしたのか
身体拘束の制度や定義を解説するページではありません。
立っている位置によって、同じ出来事の見え方が変わりやすいテーマとして選びました。
介護の現場から距離のある位置で、目に入りやすいもの
・目に見える行為(ミトン、ベッド柵など)
・行動の制限
・「拘束」という結果
現場を知る位置で、見えてきやすいもの
・判断に至った背景
・本人が何をしようとしていたのか
・対応しなかった場合に、何が起こると考えられたのか
・「安全」という言葉の裏にある事情
どちらが正しい、という話ではありません。
経験があるから見えるものがある一方で、経験があるからこそ見えにくくなるものもあります。
だから私は、「どこに立って、この出来事を見ているのか」を考えます。
実際の記事で見比べる
同じテーマを、それぞれ異なる位置から書いた2本の記事から、短く抜粋します。
① 個人・家族の位置から(note)
> サインした日
「ベッドに固定される人」ではなかった。
病院には病院の事情がある。義母の安全のため、治療を続けるために必要になることもあるだろう。そう自分に言い聞かせて、私は書類にサインした。
無責任にサインしたつもりはなかった。あのときは本当に、「必要になることもあるのだろう」と思っていた。
この文章が見ているもの
→ 疑問や戸惑い、「なぜ?」という問いを中心に、答えを決めず読者と一緒に考える。
② 現場・支援の位置から(WordPress)
> 先日、SNSを眺めていて、ある投稿が目に留まりました。
内容は、こういうものでした。
食事の際にエプロンを使い、本人が自由に外せない状態にすることは、身体拘束にあたる。
正直、最初は意味がよく分かりませんでした。
エプロンといえば、食べこぼしや衣服の汚れを防ぐための、ごくありふれた道具です。
私の中では、それ以上でも、それ以下でもありませんでした。
身体拘束と聞いて思い浮かぶのは、「ベッドに縛る」とか「身体を固定する」といった、もっとはっきりしたものです。
だからこそ、
「エプロンと身体拘束って、どういうこと?」
と、引っかかりました。
その疑問がきっかけで、少し調べてみることにしました。
この記事は、その過程を書いたものです。
最初から答えを決めるのではなく、「よく分からない」というところから調べていきます。
この文章が見ているもの
→ 判断の背景や支援の構造を整理し、出来事を少し引いた位置から見渡せるようにする。
2つの記事で、何が違うのか
この表で、きれいに二分できるわけではありません。
noteの記事にも構造を見る視点はありますし、WordPressの記事にも個人の感覚は入ります。
違いは、どこに焦点を置くかです。
媒体を変えたから変わったのではなく、異なる位置から出来事を見て書いた結果、文章の焦点が変わりました。
書き手として考えていること
専門用語を知っているだけでは、記事は伝わりません。
文章にする前に、次のことを考えています。
・誰に向けて書くのか
・誰の位置から出来事を見るのか
・何を残すのか
・何をほどいて説明し、何を説明しすぎないのか
専門用語を単純に言い換えて「なくす」のではなく、意味を保ったまま、読者が理解できる形にほどく。
この考え方は、こちらの記事にまとめています。
👉 【ココナラ内リンク:「専門用語を、なくすのではなくほどく」】
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