Kissシリーズ・「幼馴染のキス」

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小さい頃、結婚式ゴッコをしては、アイツと唇を合わせていた。 
それも小学生になると次第に減っていき、高校生になってからは思い出すことさえなかった。 
…なのに。 
「んっ…」 
……軽く合わせた唇は、意外に熱かった。 
じゃくなくてっ! 
「何するのよ! このどあほっ!」 
バキッ! 
わたしの左ストレートは、見事にアイツのアゴにヒットした。 
普段は右利きのわたしだが、力を使う時は左手を使うことにしている。 
…と、冷静に考えている場合じゃないっ! 
「いってぇ…」 
アイツのメガネが床に転がった。 
けれどわたしは肩で息をしながら、アイツを睨み付ける。 
「いきなり何すんのよ!」 
「何って…キスだけど?」 
「だあああっ! 何でそんなに冷静なのよっ!」 
「騒ぐと誰か来るよ」 
ぴたっ、と動きを止めた。 
今は放課後の教室。 
わたしとアイツしかいない空間。 
…フツーの女子生徒と男子生徒であれば、夕日の満ちる誰もいない教室というシチュエーションは、心ときめくかもしれない。 
けれど実際は、数学で赤点を取ってしまったわたしが幼馴染のコイツに勉強を教えてもらっていただけだ。 
一つの机をはさんで、向かい合わせでいた。 
確かに顔は近かった。 
けれどキスを事故でするほど近くはなかった! 
「なんでっ…いきなり!」 
頭に血が上る。 
目の前がくらくらしてしまう。 
「したくなった」 
「…顔が近くにあったからって言ったら、もう一発ぶん殴るわよ?」 
「それもあるけど…」 
そう言ってわたしの髪に触れてきた。 
その手の優しさに、思わず胸が高鳴る。 
「お前が可愛いから」 
「…意味分かんないんだケド」 
そうは言ってみたものの、眼をそらしてしまった。 
あんまりに優しい顔をするから…。 
「可愛いよ。今、改めて気付いた」 
「今までは気付かなかったの?」 
「気付いてほしそうなのは、気付いてたけどね」 
「ぐっ…」 
ヤなヤツだ。 
こんな嫌なヤツの為に、可愛くなったわたしはやっぱりバカだ。 
あんなに努力しても、今まで何も言ってこなかったクセに。 
でも何だかんだで一緒にいてくれたことが、とても嬉しい。 
「これからもキスしたいって言ったら、怒る?」 
「…別に。子供の頃に戻ったようなものでしょ?」 
「そうだな」 
…そんなに嬉しそうに笑わないでよ。 
心臓が痛くなる。 
「ああ、それに…」 
「まだ何かあるの?」 
「うん。やっぱりバカなコほど可愛い」 
最上級の笑顔で言ったアイツに、わたしは二度目のストレートを叩き込んだ。

<終わり>

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