音楽ファンなら一度は議論したことがある「90年代と2020年代、どっちの音楽シーンがすごかったのか?」というテーマを深掘りします。
ミリオンセラーが連発されたあの頃と、SNSから突如スターが生まれる今。その「勢い」の本質的な違いを紐解いていきましょう。
1990年代:全員が同じ歌を歌っていた「集権型」の熱狂
90年代は、一言で言えば「国民的ヒット」の時代です。テレビドラマの主題歌になれば、翌週にはCDショップに行列ができる。そんな時代でした。
この時代の勢いの源泉は、テレビ、CM、そして強力なタイアップでした。小室ファミリーやB'z、Mr.Children、宇多田ヒカルといったアーティストが象徴的です。消費の形は、1枚1,000円のシングルCDを買い、自分の手元に「所有」すること。
当時の勢いは、日本全体が同じ方向を向いているような、巨大な「うねり」でした。カラオケに行けば誰もが同じ曲を歌える、という圧倒的な共通言語が存在していたのがこの時代最大の特徴です。
2020年代:個人の「好き」が爆発する「分散型」の熱狂
対して現代は、スマホの中で完結する「超・個の時代」です。ランキングのトップを飾るのが、テレビに一度も出たことがないアーティストであることも珍しくありません。
今の勢いを支えているのは、TikTokやYouTube、そして音楽ストリーミングサービスです。YOASOBIやVaundy、藤井 風、Adoといったアーティストがその象徴と言えるでしょう。消費の形は「所有」から、月額サブスクリプションで楽しむ「体験」へと変化しました。
現代の勢いは、一箇所に集まる巨大な波ではなく、「無数の小さな爆発」があちこちで同時に起きているイメージです。アルゴリズムによって、自分の好みに刺さる音楽が瞬時に拡散され、数億回再生という驚異的な数字を叩き出します。
結局、何が変わったのか?
こうして振り返ってみると、その違いは明確です。
まず、主役となるメディアがテレビやラジオから、SNSやサブスクリプションへと完全に移行しました。それに伴い、ヒットの法則も「莫大な制作費をかけたプロによる作り込み」から、ユーザーの「共感とスピード感によるバズ」へと様変わりしています。
さらに、聴き手の役割も大きく変わりました。以前は提供された音楽を受け取る「受動的なファン」が中心でしたが、今は「踊ってみた」や「歌ってみた」などの動画を通じて、自らも発信側として参加するファンがシーンを牽引しています。
90年代は、はるか遠くにいる「憧れのスターを見上げる」ような勢いでしたが、2020年代は、自分の日常に寄り添い、共に熱狂を「シェアする」勢いへと進化したと言えるでしょう。
90年代のドラマチックなメロディも、2020年代の洗練されたリズムも、形は違えど「人の心を動かす」という点では同じです。
どちらの時代にもそれぞれの良さがあり、今のカオスで自由な音楽シーンもまた、数十年後には「伝説」として語り継がれるのではないかとワクワクしています。