哺乳類をはじめとする寿命が長い生物には痛覚があり、その痛みの経験を通じて成長していく特徴がある一方昆虫などの節足動物には痛覚が無いとされています。昆虫の寿命は種類によって異なりますが一般的に数週間~数か月のものが多く、確かに痛みによる学習よりも如何にして次の世代に繋ぐかに重きを置いたほうが種全体からすると合理的です。
生存戦略の一つとして外敵から襲われた時に身体の一部を自身で切り離し、そちらを囮に自分は逃げる「自切」というものがあります。例を挙げるとトカゲの尻尾・カニの腕などです。自切に痛みは伴わないとされていますがどういったメカニズムで実行しているのか調べてみました。
まず自切に至るまで身体の中で何が起きているのか流れをまとめてみます。
トカゲを例に出すと、自切の必要がある刺激を尻尾の神経が感知するとその信号が脊髄に送られ脊髄が尾部筋肉へ命令を出し自切に至ります。トカゲの尻尾は「自切面」という弱い力で分離・止血、神経復旧ができる機能が備わっており、これのお陰で感染症を防ぎつつ体勢を素早く立て直して逃げることが可能になるわけですね。
切り離された尻尾は数十秒から数分動き続けます。これは切り離されたことで脳や脊髄からの制御命令を失い、筋肉内の電位バランスが崩れランダムな電気信号を出すことによる暴走が発生した結果、筋肉が収縮と弛緩を繰り返しあのような動きとなります。
次に考えたいのは自切とは意志に基づいて行われるのか、それとも自動反射的に切り離しが発生しているかについてです。結論から言うとどちらのパターンも確認されており、トカゲや蜘蛛、蠍などは敵に掴まれると自切を行うことが多いようで、ある程度意思が介在していると考えられています。一方、カニやエビ、コオロギなどは局所神経節の反射で切り離され脳が関与していないことから自動的に切られているものと考えられています。しかしその程度によって切れる場合とそうでない場合があり、議論は続いているようです。
江戸時代の俳諧師、宝井其角は言いました。
「あの声でトカゲ食らうかほととぎす」
表面的な美しさと内面とは必ずしも一致しないという意味のようです。
もちろんそれが悪いことではないと思います。大事なのは目に心地よい部分に囚われず本質を見据える力だと感じました。