ボイストレーニングでは、
「正しい姿勢」「正しい呼吸」「正しい響き」
という言葉がよく出てきます。
でも実際には、その“正しさ”はひとつではありません。
骨格も、筋力も、呼吸のクセも、体の使い方も、
ひとりひとり違うからです。
一般的には良い姿勢と言われる形でも、
その人にとっては力みにつながってしまうことがあります。
逆に、少し個性的に見える姿勢のほうが、
自然に息が流れ、声が響くこともあります。
声は、息だけでも、喉だけでも生まれません。
体全体を使って奏でられるもの。
ボイストレーニングというと、
「声を出す練習をしながら、発声の力を身につける」
というイメージを持っている方も多いでしょう。
ですが、実際には、呼吸・姿勢・そしていらない力の抜き方など、
「声を支えるための土台、体をつくること」が、とても大切になってきます。
姿勢を保つための筋力。
呼吸をコントロールするための筋力や体の使い方。
実は、声を出す以前に整えておきたいことが、まだまだたくさんある。
そう、ボイストレーニングで大半を占めるのは、
“声を奏でるための楽器づくり”なのです。
どんなスポーツにも、お腹や背中、腕や脚の筋肉など、体全体が関わってきますよね。だから、腹筋や背筋を鍛えたり、腕立て伏せなどのトレーニングをする。実践する前に、試合や大会に出る以前に、日々の積み重ねが大切ですよね。
同じように、日常会話の声も、プレゼンテーションやミーティングでの発言も、セリフやナレーション、そして歌も、「声を出す」という点では同じ。
そして、なにかを発するために声を出すには、必ず体が関わっています。だから、ボイストレーニングをするのです。
腹筋や腕立て伏せも、最初から正しくできる人ばかりではありません。筋力が足りなければ、フォームが崩れてしまうこともあります。
でも、続けていくうちに、少しずつ自然に、しっかりできるようになっていく。ボイストレーニングも、それと少し似ています。
とても地道で、
正直、少し地味。
でも、気づけば少し呼吸が楽になっていたり、前より声が通りやすくなっていたり。そんなふうに、いつのまにか声を支える体が育っていくのです。
そして、その楽器は誰ひとり同じではありません。
だから、「誰かと同じように育てる」という方法は、声にはなかなか通用しないのです。
体は、世界にひとつの声を奏でる楽器。
だからこそ、その人自身の体や声を知りながら、少しずつ育てていくことが大切なのだと思います。