昨日、ある場所で講演をさせていただきました。
ありがたいことに、終わった後に4つの質問をいただきました。
どれも誠実に向き合ってくださっているからこその、深い問い。
私はその一つひとつに、丁寧に、真剣に、答えました。
でも、帰り道でふと思ったのです。
「私、全部答えちゃったな」と。
私たちは日々、人と関わる中で、
“普段は口にしないけど、実は想っていること”に出会うことがあります。
それは、相談という形だったり、雑談の中にポロッと現れたり。
でもそれは、どんなに優れた話術があっても、
“この人に話してもいい”という感覚がなければ引き出せない。
つまり、「心理的安全性」があるかどうか。
もっと言えば、「この人に話したら、何か気づけそう」と思える存在かどうか。
そんな“空気”があるからこそ、人は自分の中にある本音を少しずつ出してくれる。
昨日の私の講演は、
質問者に対して、私が「答えを渡す」形になってしまっていたかもしれません。
でも、もしかしたらもっと深く、
「その問いを持った背景は何ですか?」
「その疑問が生まれたのは、どんな瞬間でしたか?」
と、一歩踏み込んで“問い返す”ことで、
質問者自身が自分の中から答えを掘り起こす時間にできたのではないか――。
それができたら、質問の時間はもっと“対話の場”になっていた気がします。
講演とは、話す側が「語る」だけの場ではなく、
参加者と一緒に「考える」場でもあるのだと、改めて感じました。
だからこそ、次の講演では、
質問にすぐ答えるのではなく、問いを返す勇気を持ってみようと思います。
話すことだけが伝える手段ではない。
聞くこと、引き出すこともまた、伝える力の一部なのだと。