先日はかかとを脱臼したカンガルーの治療をしてきました。
このカンガルーは事故にあって、かかとの関節が脱臼して立てなくなっていました。
カンガルーは人のように二本足でたつ動物で、しかも他の動物と違ってかかとを地面について立ちます。
移動するときには二本足でぴょんぴょんとはねるか、前足を使うこともありますが、後ろ足が1本なくては致命的な動物です。
痛みが強く横たわってずっと患部を気にしていました。
そこで麻酔をかけて足をひっぱって、脱臼した骨を元あった場所にはめ込む治療を行います。
ところが、骨は、筋肉や腱に囲まれて頑丈についています。ひとたび外れてしまうと、その関節を守っていた筋肉が縮んでしまい、引っ張るにはとても力が必要です。
私一人の力ではどうすることもできないほど、骨は筋肉に引っ張られてしまっています。
そこで男手2名を召喚し、外れた足の骨と骨をそれぞれつかんで、綱引きのように引っ張り合ってもらいました。
これにはさすがのカンガルー、痛みに耐えきれず麻酔から飛び起きてしまいそうなほどでした。痛み止めの注射を追加して再チャレンジ!
骨の端と端がぎりぎり触れ合うくらいまで引っ張ってもらったところで、私がその二つの骨の重なった端をグッと押して、もとあった状態に戻しました。
この時に関節の構造を頭に思い描きながら、一番スムーズに入る向きに少しひねることがコツなんです。カンと経験が必要な仕事です。
こういう仕事をしているといつも感じます。これがほんとの「力不足」・・・
普通の人よりも握力がないことがネックになってしまいます。
昔と違って、今は女性獣医も多いですが、相手が大きい動物だと、やはり限界を感じることもあります。
それでも皆さん工夫を凝らし、たくましく活躍されているので、私も負けてはいられません。
明日から(今日からやれよ・・という声が聞こえそう)握力を鍛えるトレーニングもしなければならなそうです!
でも、助っ人のおかげで、このカンガルーさんは無事に脱臼が元通りになりました。
一度脱臼すると腱が伸び切ってしまうことも多く、関節は不安定になり再脱臼をしやすくなります。
腱が元通りになるまではギプスで関節を固定して保護してあげなくてはなりません。人間のように、「安静にしていてくださいね」は通用しないのですから。
ところがここでさらなる問題点が!先ほど説明した通り、カンガルーは普段からかかとを地面について生活します。
硬いギプスを足にぐるぐる巻きつけると、立った時に地面でギプスがつるつると滑ってしまって転んでしまう心配があります。
なので今回はギプスを固めた後にタオルでぐるぐる巻きにしてクッションにし、その上から伸縮包帯で巻いて滑り止めを作りました。
これがあることで、ギプスと地面の間に摩擦が起きて滑りにくくなるからです。
このカンガルーは麻酔から覚めて自ら立ち上がり、このクッション付きギプスで上手に立つことができました。
これで安心して治療を終えることができます。
あとは定期的に診察をしながら、腱が元通りになるのを待つことにします。
カンガルーさん、お疲れさまでした。