「まだ大丈夫」と、自分に言い聞かせていた

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コラム

会社の経営が苦しくなっても、僕はすぐに「会社を畳もう」とは思いませんでした。

むしろ逆です。

なんとかするしかない。

そう思っていました。

まだ会社には1,000万円以上のお金がありました。

もちろん、売上は厳しい。

このままではまずいことも分かっている。

でも、今日明日のお金がないわけではない。

だから僕は、

「まだ大丈夫」

と自分に言い聞かせていたんだと思います。

広告費を増やした

売上を増やすために、リスティング広告の費用を増やしました。

問い合わせが増えれば、仕事につながる。

仕事が取れれば、売上が上がる。

特に期待していたのが、トリックアートの仕事でした。

僕の会社が得意としていた仕事です。

これがもっと取れれば、まだ何とかなる。

そう思っていました。

一方で、会社のお金はできるだけ減らしたくない。

そこで広告運用のコストを下げようと、それまでお願いしていた代理店から、個人の運用担当者に変えました。

ところが、思ったような成果が出ませんでした。

僕から見ると、運用を任せるには経験や力量が足りなかったのかもしれません。

コストを下げたくて変えたのに、肝心の成果が出ない。

頭を抱えました。

「やばいな」

という焦りは、もちろんありました。

問い合わせを待っていた

それでも僕は、問い合わせが来ることを期待していました。

問い合わせが来れば、見積もりを出す。

そして案件が決まるのを待つ。

普通に経営できていた頃なら、

「決まるといいな」

くらいだったのかもしれません。

でも、あの頃は違いました。

祈るような気持ちでした。

頼むから決まってくれ。

トリックアートの仕事がもっと取れれば。

問い合わせがもっと増えれば。

まだ何とかなるんじゃないか。

一方では「やばい」と思っている。

でも、もう一方では「まだ大丈夫」と思おうとしている。

今振り返ると、僕の中にはその二つがずっとあった気がします。

「まだ1,000万円以上ある」

会社を畳んだあとなら、

「もっと早く決断すればよかったんじゃないですか」

と言うこともできます。

でも、当時の僕には、そんなに簡単な話ではありませんでした。

まだ1,000万円以上ある。

問い合わせもゼロではない。

得意な仕事だってある。

広告を増やせば、問い合わせが増えるかもしれない。

大きな案件が一本決まれば、状況が変わるかもしれない。

経営者なら、

「もう少し頑張れば何とかなる」

と思ってしまうんじゃないでしょうか。

少なくとも僕は、そうでした。

というより、

何とかするしかないと思っていました。

自分が社長なんですから。

流れを変えたのは、銀行からの連絡だった

そんな僕のところに、銀行から連絡が来ました。

借入金の返済についての話でした。

コロナ禍で止まっていた返済が、いずれ再開する。

返済が始まったら厳しいのではないか。

そんな話から、中小企業活性化協議会を紹介してもらうことになります。

僕にとって大きかったのは、この銀行からの連絡でした。

それまでは、

「会社をどうやって終わらせるか」

ではなく、

「会社をどうやって続けるか」

を考えていました。

まだお金もある。

仕事が取れれば何とかなる。

だから、なんとかするしかない。

その考えが、銀行からの連絡をきっかけに少しずつ変わっていきました。

経営者は「まだ大丈夫」と思っている

これは僕の経験なので、会社にいくら残っていれば大丈夫とか、いくらになったら会社を畳むべきだとか、そんなことを言うつもりはありません。

会社によって状況はまったく違います。

ただ、一つだけ自分の経験から思うことがあります。

経営が苦しい本人は、何も考えていないわけじゃないんです。

むしろ、ずっと考えています。

広告を増やそうか。

経費を減らそうか。

あの仕事が取れれば。

来月は売上が戻るかもしれない。

そして、

「まだ大丈夫」

と自分に言い聞かせる。

僕もそうでした。

だから今、会社が苦しくて、

「まだ何とかなる」

と考えている経営者に、僕から「もうやめたほうがいい」と言うことはできません。

逆に「まだ頑張れ」とも言えません。

僕にできるのは、

「僕も、ずっとそう思っていましたよ」

と話すことです。

会社を続けるのか、畳むのか。

その答えを出す前に、自分が今どういう状態にいるのか、誰かに話してみる。

僕の場合は、銀行からの一本の連絡が、そのきっかけになりました。
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