もし今、会社を畳む直前の僕が、僕のところへ相談に来たら
何を話すだろう。
「大丈夫ですよ」
たぶん、そんな言葉からは始めません。
「頑張れば何とかなりますよ」
これも言わない。
僕なら最初に、こう聞くと思います。
「今、会社にお金はいくら残っていますか?」
夢も希望もない質問ですよね。
でも、自分が会社を畳んだからこそ、まずそこを聞きたいんです。
会社を畳むにも、お金が必要だった
僕が会社を畳もうと考え始めた頃、会社にはまだお金が残っていました。
最初に妻と弁護士事務所へ相談に行った頃で、確か1500万円くらい。
そのとき弁護士から言われたのが、
「お金が残っているうちに考えたほうがいい」
ということでした。
でも僕は、会社を続けました。
銀行の支店長をしていた妹の旦那に決算書を見てもらい、
「お兄さん、まだ頑張れるじゃないですか」
と言われたからです。
僕自身も、そう思いたかった。
社員がいなくなれば固定費は減る。
事務所も縮小する。
一人でできない駅看板の仕事はやめて、自分が得意なユニークな看板の仕事を増やす。
そうすれば、まだいけるんじゃないか。
そんなふうに考えていました。
でも、仕事が少なければ、会社のお金は少しずつ減っていきます。
最終的に会社を整理することになったとき、僕は知りました。
会社って、畳むにもお金がかかるんです。
僕の場合は弁護士にもお願いしました。
会社を整理するために必要なお金もありました。
だから、あの頃の自分が目の前に座っていたら、まず会社にいくら残っているのかを聞きます。
ただし、
「だったら、すぐ会社を畳んでください」
とは言いません。
それを僕が決めることではないからです。
僕が一番怖かったのは「分からない」ことだった
当時の僕には、分からないことだらけでした。
会社を畳んだら、銀行からの借入はどうなるのか。
個人破産するのか。
自宅はなくなるのか。
財産はどれくらい残るのか。
家族は生活していけるのか。
次の仕事は見つかるのか。
そもそも、こんな精神状態で働けるのか。
分からない。
だから調べる。
ネットを見る。
また分からないことが出てくる。
また調べる。
でも、最後に知りたいのはいつも同じでした。
「結局、僕はどうなるんだ?」
これなんですよね。
借金2億円より、怖かったもの
僕の会社には、銀行から2億円ほどの借入がありました。
数字だけ見れば、大きいですよね。
でも当時の僕にとって、2億という数字そのものより怖かったものがあります。
家です。
家族です。
そして、自分のこれからです。
妻には借金のことも全部話しました。
泣かれました。
怒られた。
責められた。
「もう関わりたくない」
「家族を巻き込まないで」
「離婚したい」
とも言われました。
それでも、会社の整理が始まるタイミングだったことや住宅ローンの問題もあって、すぐに離婚することすらできなかった。
自分の会社の問題に、家族まで巻き込んでしまった。
これはつらかったです。
「死んだほうが楽だ」と思っていた僕が来たら
会社を整理している頃、心もかなり壊れていました。
死ねたら楽になる。
本気で、そう思ったことがあります。
朝起きて着替えて、仕事へ行く準備までしているのに、もう一度布団に入る。
ほんの5分。
目を閉じて、何も考えないようにする。
ずっと横になっていたかった。
メンタルクリニックにも通い、薬も増やしてもらいました。
そんな僕が今、相談に来て、
「もう死んだほうが楽なんじゃないかと思っています」
と言ったら。
これは一人で抱える話ではありません。
僕自身の経験を話すことはできても、医療の専門家ではない。必要なら医療機関など専門的な支援につながることを勧めます。
そのうえで、経験者として伝えたいことがあります。
今、頭の中に見えている最悪の未来が、そのまま現実になるとは限らない。
これは自分が経験したから言えます。
僕が想像していた未来にはならなかった
僕は個人破産するんじゃないかと思っていました。
自宅も失うと思っていた。
社会との接点がなくなって、最後は生活保護になるんじゃないかとまで考えた。
でも、実際は違いました。
僕の場合は、経営者保証に関するガイドラインを使い、会社を特別清算しました。
個人破産はしませんでした。
自宅も残すことができた。
一方で、何も失わなかったわけではありません。
車を含め、財産の多くを手放し、残ったのは99万円でした。
社長でもなくなりました。
収入も大きく減った。
それでも、仕事は途切れませんでした。
今も会社員として働いています。
あの頃の僕が想像していた、
「会社を失ったら、社会からも消えてしまう」
という未来にはならなかったんです。
だから、会社を畳めと言いたいわけじゃない
ここまで読むと、
「この人は早く会社を畳んだほうがいいと言いたいのかな」
と思うかもしれません。
違います。
僕には、あなたの会社を畳むべきかどうかなんて分かりません。
僕自身、一度弁護士に相談したあと、
「まだ頑張れる」
と思って会社を続けた人間です。
続けたから経験できた仕事もある。
だから、その判断を後悔しているという単純な話でもありません。
ただ、一つだけ思うことがあります。
まだ選択肢があるうちに、一度誰かと話してみてほしい。
会社を続けるにしても。
畳むにしても。
そのほうがいい。
僕の場合、会社にお金が残っている段階で専門家に相談できたことは、その後を考えるうえで大きかったと思っています。
60分で会社の答えなんて出なくていい
今、僕はココナラで、経営危機や廃業について悩んでいる経営者の話を聞いています。
60分です。
60分話したからといって、会社の問題が解決するわけではありません。
僕も解決できません。
弁護士でも税理士でもないから、専門的な判断もしません。
だったら、何のために話すのか。
頭の中を整理するためです。
「会社に、あとこれくらいお金がある」
「銀行からこれくらい借りている」
「家だけは残したい」
「家族にはまだ話せていない」
「破産が怖い」
「まだ会社を続けたい」
何でもいい。
順番だってバラバラで構いません。
僕が経験したことなら、その場で聞いてください。
分からないことは、分からないと言います。
専門家に聞くべきことなら、そう伝えます。
そして何より、
会社を畳むかどうか、その場で決める必要なんてありません。
あの頃の僕みたいな人と話したい
僕がこの相談を始めたのは、会社を畳んだ経験を自慢したいからではありません。
自慢できるような話でもないです。
借金があった。
妻に泣かれた。
死にたいと思った。
会社もなくなった。
社長から会社員になった。
惨めだと思ったこともある。
でも、生きています。
働いています。
そして今度は、自分と同じように会社のことで眠れなくなっている人の話を聞く側になりました。
以前、相談してくださった方から、
「とっても心が救われました」
と言っていただいたことがあります。
その言葉は、今も残っています。
会社を救えるとは言えません。
借金をどうにかできるとも言えない。
でも、
一人で抱えている60分を、一緒に考える60分に変えることはできる。
もし、会社を畳むかどうか迷っているなら、その状態のままで来てください。
まだ頑張りたいなら、それも話してください。
「もう無理かもしれない」でもいい。
僕なら、まず聞きます。
「今、会社にお金はいくら残っていますか?」
そこから、一緒に話しましょう。