会社を畳むと決めたら、お金の心配も少しは減る。
僕は、どこかでそんなふうに思っていたのかもしれません。
でも、実際は逆でした。
僕が会社を畳むことを決めたのは3月。
その翌月の4月には、別の会社に就職しました。
会社員として働き始めた。でも、まだ自分の会社の社長でもある。
今考えても、なんとも変な時期です。
昼間は会社員として働きながら、一方では50年続いた会社を畳む作業を進めている。
そして、廃業すると決めたからといって、会社から出ていくお金がその日から止まるわけではありません。
むしろ僕は、それまで以上に会社の口座が気になるようになりました。
「あ、これもまだ引き落としがあるのか」
会社を畳むことになってから、リースについては支払いを止めるための交渉もしました。
カードも、もう使いません。
これで出ていくお金も減っていくだろう。
そう思いますよね。
ところが、カードは使ったその日に引き落とされるわけではありません。
使うのをやめたあとにも、以前使った分の請求がやってくる。
口座を見て、
「あ、これもまだ引き落としがあるのか」
となるわけです。
一つ終わったと思ったら、また別の支払いが出てくる。
経営していた頃なら、毎月当たり前のように払っていたものです。
ところが、会社を畳むと決めた途端、その一つひとつがものすごく気になる。
もう、これから売上を伸ばして会社のお金を増やそうとしているわけではないからです。
入ってくるお金より、出ていくお金のほうが気になる。
通帳の数字が減るたびに、
「大丈夫かな」
と思っていました。
弁護士費用が、まだ分からない
特に心配だったのが、弁護士費用です。
会社を畳むと決めた時点で、すぐに費用の見積もりが出てきたわけではありませんでした。
中小企業活性化協議会の補助金を使うという話もありました。
それでも、
「結局、いくら必要になるんだろう」
「今あるお金で足りるのかな」
と気が気じゃない。
会社を続けるためのお金が足りない、ではありません。
会社を終わらせるためのお金まで足りなくなったらどうしよう。
そんな心配です。
会社を畳む前の僕は、廃業を決断したあとにこんな不安が待っているとは知りませんでした。
Excelで、お金を細かく管理した
弁護士の先生からは、会社のお金の動きをExcelで細かく管理するように指示されました。
カードの引き落としなども含めてです。
そして僕の場合、会社に残っていたお金のほとんどを、弁護士の管理する口座へ送金しました。
そこからは、もう自由にはなりません。
もちろん、それには理由があります。
銀行への弁済もある。
会社を整理するために必要なお金でもある。
それまで僕は社長として、会社のお金をどう使うか判断する側でした。
でも、もうそういう段階ではない。
自分の会社なのに、自分の判断だけではお金を動かせない。
「ああ、会社を畳むというのは、こういうことなんだな」
と感じました。
会社を畳むにも、お金がかかる
これは、自分で経験するまでよく分かっていませんでした。
会社は、お金がなくなったから畳む。
なんとなく、そんなイメージがありませんか。
僕にもありました。
でも、実際に経験して分かったのは、
会社を畳むにも、お金がかかる
ということです。
僕の場合、弁護士費用も必要でしたし、会社を整理していくためにもお金が必要でした。
以前、まだ会社を畳むと決める前に、妻と一緒に弁護士事務所へ相談に行ったことがあります。
その頃、会社には確か1500万円くらいのお金が残っていました。
そこで言われたのが、
「まだお金が残っているうちに考えたほうがいい」
ということでした。
ただ、そのときの僕は会社を畳みませんでした。
銀行の支店長をしていた妹の旦那に決算書を見てもらい、
「お兄さん、まだ頑張れるじゃないですか」
と言われたからです。
僕自身も、そう思いたかった。
だから続けました。
でも、その後、本当に会社を畳むと決めた頃には、お金が出ていくたびに、
「これ以上減って大丈夫なのかな」
と思うようになっていました。
廃業を決めた日と、会社が終わる日は違う
僕は3月に会社を畳むと決め、4月には会社員になりました。
でも、自分の会社はまだ残っています。
昼間は会社員。
でも、まだ社長。
リースを止める交渉をする。
カードの請求が来る。
Excelでお金を管理する。
弁護士ともやり取りする。
口座からは、まだお金が出ていく。
会社を畳むと決めた日と、会社が本当に終わる日は違うんです。
「廃業を決めた。これで終わり」
ではありませんでした。
むしろ僕の場合、決めてから初めて知ったことがたくさんあります。
今、会社にお金はいくら残っていますか?
今、会社を畳むかどうか悩んでいる人と話すなら、僕はやっぱりこれを聞くと思います。
「今、会社にお金はいくら残っていますか?」
その数字を聞いて、
「だったら畳んだほうがいい」
「まだ続けられます」
と僕が判断するわけではありません。
僕は弁護士でも税理士でもありませんし、それぞれの会社で状況も違います。
ただ、自分で会社を畳んでみて、
会社を続けるにもお金がいるし、会社を畳むにもお金がいる
ということを知りました。
そして、畳むと決めた翌日から、すべての支払いがピタッと止まるわけでもありません。
僕の場合は、
「あ、これもまだ引き落としがあるのか」
ということが何度もありました。
こういう話って、制度を調べているだけでは、なかなか見えてこないんですよね。
僕も会社を畳む前に、誰かに聞いてみたかったです。
「実際に会社を畳むと決めてから、何が起きました?」
と。
今、同じことを知りたい人がいるなら、僕の経験については包み隠さず話します。
会社を続けるのか、畳むのか。
その答えを出すためじゃなくてもいい。
まず、実際に経験した人の話を聞いてみる。
僕は、そんな相談があってもいいと思っています。