すぐに答えない。問題は「預かる」ことで解決する

すぐに答えない。問題は「預かる」ことで解決する

記事
ビジネス・マーケティング
職場で仕事をしていると、いろいろな問題が起こります。

他部署との意見の食い違い。  
職場内のトラブル。  
取引先や利用者からの苦情。

管理職をしていると、こうした「ちょっと面倒なこと」が次々と持ち込まれてきます。

以前の私は、そういう問題に対して、できるだけ早く答えを返さなければならないと思っていました。

相手から何か言われたら、その場で答える。

反論されたら、すぐにこちらも説明する。

納得できないことを言われたら、「それは違う」と打ち返す。

「管理職なのだから、きちんと答えなければいけない」

そんな気持ちが強かったのだと思います。

ところが、最近になって少し考え方が変わってきました。

「すぐに答えなくてもいいのではないか」

そう思うようになったのです。


「預かる」という選択肢


例えば、部下から強い口調で何かを言われたとします。

以前の私なら、その場で答えを出そうとしていました。

「それはこういう理由だから」

「でも、それについてはこうですよね」

「では、こうしましょう」

と、すぐに返してしまう。

でも、こちらが冷静なつもりでも、相手はまだ感情が高ぶっている。

そんな状態で言葉を重ねても、話が前に進むどころか、どんどん細かいところでぶつかってしまいます。

そして、気がつけば、

「本来はそんなに大きな問題ではなかったのに、なぜこんなに揉めているんだろう」

ということになる。

最近は、そこで一度、

「その件については、いったん預からせてください」

と言うようにしています。

その場で結論を出さない。

少し時間を置く。

自分も考える。

相手にも考える時間を持ってもらう。

そして、お互いが少し冷静になったところで、改めて話をする。

すると、不思議なことに、最初に感じていたほど大きな問題ではなくなっていることがあります。


時間が「感情」を冷ましてくれる


人間は、感情が高ぶっているときには、どうしても視野が狭くなります。

自分の主張を通したくなる。

相手の言葉の一部分が気になる。

「なぜそんな言い方をするんだ」と、内容よりも言い方に反応してしまう。

もちろん、自分自身もそうです。

私はもともと、人から何かを指摘されたときに、すぐに反応してしまうところがあります。

「いや、それは違う」

「でも、こちらにはこういう事情がある」

と、すぐに説明したくなる。

しかし、そこで一呼吸置いてみる。

一晩寝かせてみる。

すると、

「そこまで反応する必要はなかったな」

と思えることがあります。

相手の言っていることにも、一理ある。

こちらの説明にも、もちろん事情がある。

だったら、感情的に勝ち負けをつける必要はない。

そんなふうに考えられるようになります。

「すぐに答えること」と「仕事が早いこと」は違う


これは、管理職になって改めて感じることです。

すぐに答えることが、必ずしも仕事が早いことではありません。

むしろ、拙速に答えたことで問題がこじれれば、その後の調整に余計な時間がかかります。

10分で答えた結果、3日間揉める。

それなら、最初に半日考えて、30分で解決した方がいい。

場合によっては、翌日まで持ち越した方がいい。

「すぐに返事をしない」というのは、仕事を遅らせることではなく、問題をこじらせないための時間を使うことなのだと思います。

もちろん、緊急性の高い問題については、すぐに判断しなければなりません。

安全に関わることや、重大なクレームなどは別です。

でも、世の中の問題のすべてが「今すぐ答えを出さなければならない問題」ではありません。

人間関係にも「ペンディング」は使える


そして、このことは仕事上のトラブルだけではないと思います。

人間関係でも同じです。

誰かの一言にカチンときた。

自分のことを否定されたように感じた。

納得できないことを言われた。

そんなときに、すぐに反応しない。

メールなら、すぐに返信しない。

対面なら、その場で結論を出そうとしない。

心の中で、

「これは、いったん預かろう」

と思ってみる。

それだけでも、かなり違います。

その場では腹が立っていても、時間が経つと、

「まあ、そこまで怒ることでもなかったか」

と思えることがあります。

あるいは、

「相手が本当に言いたかったのは、こちらを責めることではなく、別のことだったのかもしれない」

と見えてくることもあります。

もちろん、相手の言動に問題がある場合もあります。

だからといって、こちらまで感情的に反応する必要はありません。

相手の感情と、自分の感情を切り離す。

そのためにも、「すぐに答えない」というのは有効なのだと思います。

「間」をつくることは、逃げることではない


以前の私は、すぐに答えを返さないと、

「逃げているように見えるのではないか」

「管理職として頼りなく見えるのではないか」

そんなことも考えていたのだと思います。

でも、今は少し違います。

問題をその場で解決しないことと、問題から逃げることは違います。

むしろ、

「ちゃんと考えてから答えるために、いったん預かる」

という姿勢も、管理職には必要なのではないでしょうか。

すぐに反応するのではなく、一度受け止める。

そして、自分の中で整理する。

相手の感情が落ち着くのを待つ。

必要なら周囲にも相談する。

そのうえで、冷静に答える。

それは「遅い」のではなく、慎重に問題を解決するためのプロセスなのだと思います。

すぐに打ち返さなくてもいい


これまでの私は、相手からボールを投げられたら、すぐに投げ返さなければならないと思っていたのかもしれません。

でも、仕事も人間関係も、キャッチボールのようにすぐに返す必要はありません。

ときには、ボールを一度手元に置いてもいい。

少し考えてから返してもいい。

むしろ、その方がうまくいくことがある。

50代半ばになって、これまでの仕事を振り返りながら、そんなことを少しずつ学んでいます。

「すぐに答えない」

これは、問題を先送りすることではない。

問題をこじらせないための、ひとつの技術なのだと思います。

これからは、職場で何か問題が起きたときにも、

「すぐに答えなければ」

ではなく、

「これは、いったん預かろう」

と、自分に言えるようになりたいと思っています。

それだけで、仕事も、人間関係も、少し穏やかになる気がしています。
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