プロフェッショナルのための客観的介護記録術:ケアの質を高め、事業所を守る記録の力 5回シリーズその4

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第4回:実践!場面別SOAP記録の書き方(食事・排泄・転倒・認知症BPSDなど)

はじめに:理論から実践へ、SOAPを使いこなす

これまで3回にわたり、SOAPの基本的な考え方とS・O・A・P各項目の書き方を学んできました。

最終回を前に、今回は最も実践的なトレーニングを行います。

介護現場で日常的に遭遇する具体的な場面を取り上げ、どのようにSOAPを組み立てていくのかを、豊富な例文とともに見ていきましょう。

理論を現場で使える「生きたスキル」に変えるための実践編です。

場面1:食事拒否・摂取量低下

食事に関する記録は、利用者の健康状態を把握する上で極めて重要です。単に「食べなかった」で終わらせず、その背景を探る視点が求められます。

【ケース:入れ歯の不調を訴えるA様】

S:「入れ歯の調子が悪いようで、硬いものを食べると痛くて食べられない」と訴えあり。

O:12:20 昼食時、常食を提供。主食(ご飯)を2口食べた後、箸が止まる。眉間にしわを寄せている。口腔内に発赤や腫れはなし。

A:Sの訴えから、入れ歯の不適合による咀嚼時の疼痛が食事摂取を妨げている主な原因と考えられる。
このままでは低栄養や脱水のリスクが高まる。

P:本人の同意を得て、昼食を粥・刻み食に変更して提供し、摂取状況を再確認する。
看護師に口腔内の状態と本人の訴えを報告し、往診歯科の受診調整を依頼する。

場面2:転倒・ヒヤリハット

転倒は、単なる事故報告で終わらせてはいけません。再発防止に繋げるための分析的な視点が不可欠です。

【ケース:居室移動中にカーペットでつまずいたB様】

S:「ちょっとつまずいただけ。お尻を少し打ったけど大丈夫」と発言。

O:10:20 食堂から居室へ移動中、カーペットの縁に足先が引っかかり前方へ転倒。
左臀部を打撲。
同部位に軽度の発赤を認めるが、腫脹や熱感、骨折を疑う所見はなし。
立ち上がり、歩行状態も普段と変わりないことを確認。バイタルサイン安定。

A:環境要因(カーペットのめくれ)によるつまずきが転倒の直接的な原因。現時点で重篤な外傷はないと判断されるが、時間経過後に痛みが増強したり、皮下出血が拡大したりする可能性がある。

P:看護師に状況を報告し、2時間ごとに疼痛の有無と発赤部の状態を観察するよう申し送る。
ご家族に事実を報告。
再発防止策として、カーペットの縁を養生テープで床に固定する。当面、B様の単独での居室移動時は、職員が見守りを行う。

場面3:認知症周辺症状(BPSD)- 攻撃的言動

認知症の方の言動には、必ず背景となる思いや不安が存在します。

その心を読み解こうとする姿勢が記録にも表れます。

【ケース:入浴介助を拒否し、大声を出すC様】

S:「触るな!一人で入れるからあっちへ行け!」と強い口調で発言。

O:14:00 浴室へ誘導するも、脱衣を拒否。職員が衣類に手をかけると、職員の手を強く振り払う動作が見られた。表情は険しく、声も大きい。

A:認知症の症状により、介助の意図が理解できず「攻撃されている」と感じている可能性がある。
また、羞恥心から介助を拒否していることも考えられる。強制的な対応は、さらなる興奮や不信感を招き、今後のケアへの拒否につながる危険性がある。

P:一旦、介助を中断し、C様と距離を取る。「驚かせてしまい申し訳ありません」と謝罪し、まずは気持ちが落ち着くのを待つ。
その後、同性の職員が「背中だけ流させてくださいね」と、介助範囲を限定して再度提案してみる。
時間を改めて、本人が好きな歌などを歌いながら誘うなど、アプローチ方法を変更する。

場面4:ご家族からの要望・情報提供

ご家族は、ケアチームの重要な一員です。
ご家族からの情報は、ケアの質を向上させるための貴重なヒントになります。

【ケース:娘様から「夜眠れていないようだ」と連絡があったD様】

S(長女):「昨晩電話で話したら、『最近、夜中に何度も目が覚めて眠れない』と父が言っていた。
日中、施設で眠りすぎていないか心配」と電話連絡あり。

O:直近3日間の夜間巡視記録を確認。
2時、4時の巡視時に開眼していることが2回記録されている。日中の活動記録では、レクリエーション中にうとうとしている様子が複数回見られた。

A:ご家族からの情報と記録から、昼夜逆転の傾向が見られる。
日中の活動量が不足し、昼間の傾眠が夜間の不眠につながっている悪循環が考えられる。

P:長女様に状況を説明し、情報提供への感謝を伝える。
日中の活動量を増やすため、午後の散歩や体操への参加を積極的に促す。夜間入眠前の対応として、温かい飲み物を提供する、静かな環境を整えるなどの工夫を行う。
1週間、睡眠の状態を重点的に観察・記録し、状況を再度ご家族に報告する。

まとめ:SOAPはケアの質を可視化する「共通言語」

今回は、4つの具体的な場面を通してSOAP記録の実践的な書き方を学びました。

お気づきのように、SOAPは単なる記録形式ではなく、介護職の思考プロセスそのものを可視化するツールです。

良いSOAP記録は、良いケアの実践と表裏一体です。
SOAPという「共通言語」を用いることで、チーム全員が利用者様の状態やケアの方向性を正確に共有し、一貫性のある質の高いケアを提供することが可能になります。

次回はいよいよ最終回、第5回「記録業務を効率化し、チームケアの質を高めるための管理者向けガイド」です。

個人の記録スキル向上だけでなく、事業所全体として記録の質を高め、それをチームの力に変えていくためのマネジメント手法について、管理者・リーダーの視点から解説します。


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