プロフェッショナルのための客観的介護記録術:ケアの質を高め、事業所を守る記録の力 5回シリーズその3

プロフェッショナルのための客観的介護記録術:ケアの質を高め、事業所を守る記録の力 5回シリーズその3

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ビジネス・マーケティング

第3回:SOAP形式入門(後編):A(アセスメント)とP(計画)でケアを深化させる

はじめに:「事実」から「次の一手」を導き出す思考プロセス

第2回では、SOAP記録の土台となるS(主観的情報)とO(客観的情報)の書き分けを学びました。

これらはケアの現状を正確に捉えるための「事実」の記録です。
しかし、記録の目的は単に事実を並べることではありません。その事実から「何が言えるのか」「次に何をすべきか」を導き出し、ケアの質を向上させることにあります。

その役割を担うのが、今回学ぶA(アセスメント)とP(計画)です。
AとPは、介護職の専門性を最も発揮するパートであり、記録を単なる業務報告から、ケアを改善するための強力なツールへと昇華させます。SとOという点と点を、AとPで線として結び、未来のケアへと繋げていきましょう。

A(Assessment):事実から「意味」を読み解く専門的視点

「A」はAssessment(評価・アセスメント)の頭文字で、SとOの情報をもとに、専門職としてその状態をどのように分析・評価・判断したかを記述する項目です 2。事実の背景にある原因を探ったり、将来のリスクを予測したりする、記録の「考察」部分にあたります。

【Aの書き方 ポイント】

根拠は必ずSとOに置く:Aに書く内容は、必ずSやOで記述した事実に基づいている必要があります。SとOに書かれていない情報から、いきなり結論を導き出してはいけません。

原因分析とリスク予測:「なぜこの状態になっているのか?(原因)」「このままではどうなる可能性があるか?(リスク)」という視点で分析します。

断定を避け、可能性を示唆する:「~と考えられる」「~の可能性がある」「~が示唆される」といった表現を使い、専門職としての推論であることを明確にします。
医師の診断と混同されるような断定的な書き方は避けます。

単なる感想ではない:「かわいそう」「大変そう」といった個人的な感情ではなく、介護の専門知識に基づいた客観的な分析を記述します。

【Aの良い例・悪い例】

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P(Plan):アセスメントから導き出す「次の一手」

「P」はPlan(計画)の頭文字で、Aのアセスメントに基づき、今後どのようなケアを行うか、何を観察していくかという具体的な計画を記述します。

Pは、ケアの継続性と一貫性を保つための重要な道しるべとなります。

【Pの書き方 ポイント】

具体的で実行可能に:「様子を見る」「頑張る」といった曖昧な計画ではなく、「誰が」「いつ」「何をするか」を明確に記述します。

短期計画と長期計画:Pには、すぐに行うべき対応(短期計画)と、今後検討すべき課題(長期計画)の両方が含まれます。

DO・CHECK・ACTIONを明確に:計画には、具体的なケアの実施(DO)、状態変化の観察(CHECK)、他職種への報告・相談・連携(ACTION)といった要素が含まれます。

【Pの良い例・悪い例】

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実践トレーニング:SOAPを一気通貫で完成させよう

第2回でSとOを書いたケースに、AとPを加えてSOAPを完成させてみましょう。

【ケース1:食事場面】

S:「あまり好きじゃないな」と小声で発言あり。

O:18:10 夕食。おかず(煮魚)を一口食べた後、箸が止まる。主食2割、副食1割の摂取。水分(お茶)は100ml飲水。

A:発熱や倦怠感など他の体調不良の兆候は見られない。
Sの発言とOの状況から、食事内容が本人の嗜好に合わなかったことが摂取量低下の主な原因と考えられる。

P:本人の好きな食べ物を改めて聴取し、情報共有ノートに記載する。明日の献立を確認し、嗜好に合わないものが続くようであれば栄養士に相談。
引き続き食事中の表情や摂取量を注意深く観察する。

【ケース2:転倒場面】

S:「頭を打った気がするけどわからない」と発言あり。

O:13:30 食堂にて、椅子から立ち上がる際に膝折れし転倒。
左側頭部に3cm大の腫瘤を認める。
バイタルサイン、意識レベル、立位・歩行状態に著変なし。

A:転倒により頭部を打撲。現時点でバイタルや意識レベルに変化はないが、頭部打撲後は遅発性(数時間~数日後)に頭蓋内出血などの重篤な症状が出現するリスクがあるため、厳重な経過観察が必要である。

P:嘱託医に報告し指示を仰ぐ。ご家族に状況を連絡し、専門医(脳神経外科)の受診を手配。
以後24時間は、1時間ごとに訪室し、意識レベル(呼びかけへの反応)、嘔気・嘔吐の有無、頭痛の訴え、左右の瞳孔の大きさを確認する。

まとめ:SOAPはケアのPDCAサイクルそのもの

今回は、SOAPのA(アセスメント)とP(計画)について学びました。
このS→O→A→Pの流れは、ケアの質を改善するためのPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)と密接に連動しています。

S・O(事実の把握) → Check(評価)
A(分析・評価) → Act(改善)
P(計画) → Plan(計画)
Pの実施 → Do(実行)

SOAP形式で記録を書くことは、単なる記録作業ではなく、日々のケアの中でPDCAサイクルを回し続けることに他なりません。

この思考プロセスを習慣化することが、専門職としての成長に直結します。

次回、第4回「実践!場面別SOAP記録の書き方(食事・排泄・転倒・認知症BPSDなど)」では、これまで学んだ知識を総動員し、介護現場で頻繁に遭遇する具体的な場面でのSOAPの書き方を、さらに多くの例文を交えて実践的に解説します。

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