「そのExcelは○○さんしか分かりません」
「担当者が休みなので、今日は対応できません」
「前任者が作った表なので、数式を触るのが怖いです」
中小企業では、このような業務が珍しくありません。
毎月の集計。
請求書や報告書の作成。
店舗・拠点からの情報回収。
社内のお知らせ配信。
申請や提出物の確認。
日常的には問題なく回っていても、担当者が休んだり異動したりすると、急に仕事が止まります。
私自身、中小製造業でひとり総務に近い仕事をしています。
総務は担当範囲が広く、一つひとつの作業を細かく説明する時間も取りにくいため、
「自分でやった方が早い」
と感じることがあります。
しかし、その状態を続けていると、仕事は少しずつ担当者個人へ集中していきます。
今回は、担当者が休むと業務が止まる会社の共通点と、業務を人ではなく仕組みに残す方法を紹介します。
属人化は「その人しかできないこと」だけではない
属人化というと、専門的な技術や資格が必要な仕事を想像するかもしれません。
しかし、実際には次のような小さな作業でも起こります。
・どのファイルを開けばよいか、担当者しか知らない
・毎月コピーする範囲を覚えているのが一人だけ
・集計後にどこへ報告するか決まっていない
・エラーが出たときの直し方を誰も知らない
・店舗ごとに異なる形式を、担当者が手作業で整えている
・締切が近い人を担当者が記憶している
・電話で受けた内容を個人のメモで管理している
こうした業務は、特別な知識が必要だから止まるのではありません。
手順・判断基準・保存場所が共有されていないために止まります。
「マニュアルを作れば解決」とは限らない
属人化対策として、最初にマニュアルを作る会社もあります。
もちろん、手順書は重要です。
ただし、マニュアルだけでは解決しないこともあります。
例えば、
1.Aファイルを開く
2.Bファイルのデータをコピーする
3.不要な行を削除する
4.担当者別に並べ替える
5.PDFにしてメール送信する
という手順をマニュアルにしても、作業そのものは残ります。
月末になるたび、誰かが同じ操作を繰り返さなければなりません。
手順を説明するだけで十分な仕事と、自動化した方がよい仕事を分けて考える必要があります。
担当者しか分からなくなる原因1.ファイルが分散している
同じ業務に関する情報が、
・個人のパソコン
・共有フォルダ
・メール
・チャット
・紙のファイル
・複数のExcel
に分かれていると、全体像が分かりません。
担当者本人は、毎月使っているため場所を覚えています。
しかし、別の人が作業しようとすると、
「どれが最新版なのか」
「このファイルは何に使うのか」
「完成後はどこへ保存するのか」
から確認する必要があります。
最初に見直したいのは、操作方法よりも情報の置き場所です。
・入力する場所
・正式なデータを保存する場所
・完成物を保存する場所
・確認する画面
を分けて決めます。
原因2.判断基準が担当者の頭の中にある
作業手順は分かっても、判断基準が共有されていないことがあります。
例えば、
・どの申請を優先するか
・どの期限になったら催促するか
・どの回答を上司へ報告するか
・どのデータを集計から除外するか
・どこまで対応すれば完了か
といった基準です。
担当者は経験で判断していても、別の人には分かりません。
この場合、マニュアルへ操作だけを書くのではなく、
「どの条件なら、どの対応をするか」
まで整理します。
例:
・期限7日前:本人へ通知
・期限3日前:本人と上司へ通知
・期限超過:管理者が確認
・回答済み:通知対象から除外
・内容不備:差し戻し
このように条件を明確にすると、担当者が変わっても判断しやすくなります。
原因3.Excelの中身が複雑すぎる
長く使っているExcelでは、
・複雑な数式
・非表示の列
・複数のリンク
・手作業で変更するセル
・どこから参照しているか分からない値
・前年のファイルをコピーしたシート
が増えていきます。
作成した本人は使えても、ほかの人は触るのが怖くなります。
「壊したら困るので、担当者が戻るまで待つ」
という状態です。
この場合、機能を増やすよりも、
・入力する場所
・自動計算する場所
・結果を見る場所
を分ける方が重要です。
利用者が数式やデータベースを直接触らなくて済む構成にすれば、操作ミスも減らせます。
原因4.例外対応が記録されていない
通常の処理はマニュアルに書かれていても、実際の業務では例外が発生します。
・締切後に提出された
・担当者が変更になった
・一部の拠点だけ別形式だった
・申請内容に不備があった
・通常とは異なる承認が必要だった
担当者は過去の経験から対応できます。
しかし、その判断が記録されていなければ、次の人は同じ問題で迷います。
例外をすべてシステム化する必要はありません。
少なくとも、
・何が起きたか
・誰が判断したか
・どのように対応したか
・次回も同じ対応でよいか
を簡単に残します。
原因5.完了したかどうかが本人にしか分からない
「やっておきました」
「送ってあります」
「確認済みです」
という言葉だけで業務が進んでいると、担当者以外は状況を確認できません。
誰が見ても分かるように、
・未対応
・対応中
・確認待ち
・完了
・保留
などの状態を記録します。
さらに、
・担当者
・期限
・最終更新日
・完了日
・対応メモ
があると、引き継ぎしやすくなります。
属人化を減らすための5つの整理
1.業務の入口を一つにする
メール、電話、紙、チャットからバラバラに届いている依頼を、Googleフォームなどへ集約します。
すべてをフォームにする必要はありません。
漏れると困る依頼だけでも、正式な受付場所を決めます。
2.正式なデータの保存場所を決める
似た名前のExcelを複数作らず、どのファイルを正式な記録とするか決めます。
3.担当者と期限を記録する
「総務で対応」ではなく、誰がいつまでに対応するかを明確にします。
4.現在の状態を見えるようにする
未対応・対応中・完了などを一覧で確認できるようにします。
5.定型作業を自動化する
毎回同じ集計、転記、通知、PDF作成などは、GASで自動化できる可能性があります。
GASを使うと、どこまで仕組み化できるか
GoogleスプレッドシートとGASを使えば、例えば次のような仕組みを作れます。
・入力内容を一つの管理表へ自動集約
・複数担当者が使える入力画面
・未対応・期限接近者の自動抽出
・回答者や管理者への自動通知
・担当者別・部署別の集計
・申請、確認、回答、完了状況の管理
・定型帳票やPDFの自動出力
・操作履歴や最終更新日の記録
担当者の代わりに判断するのではなく、誰が見ても次の作業が分かる状態を作ります。
すべてを自動化する必要はない
属人化をなくそうとして、担当者の仕事をすべてシステムへ入れると、逆に複雑になります。
自動化しやすいのは、
・繰り返し発生する
・手順がほぼ決まっている
・日付や条件で判断できる
・コピーや転記が多い
・同じ通知を何度も送る
という作業です。
一方、
・個別事情を考慮する判断
・取引先との交渉
・従業員への配慮が必要な対応
・珍しい例外処理
は、人が担当する方が適しています。
定型部分だけを自動化し、判断が必要な仕事は人に残します。
引き継ぎ前ではなく、普段から整えておく
属人化が問題になるのは、退職や異動が決まったときだけではありません。
担当者が急に休む。
長期出張へ行く。
繁忙期で別の人が手伝う。
こうしたときにも、業務の仕組みが必要です。
引き継ぎ直前に大量のマニュアルを作るよりも、普段から、
・入力場所
・担当者
・期限
・状態
・最終更新日
・完了条件
を残しておく方が、引き継ぎは簡単になります。
ココナラで属人化した業務を仕組み化しています
現在、ココナラではGoogleスプレッドシート、Googleフォーム、GASを使った業務改善サービスを出品しています。
Excel集計や転記をまとめて見直したい方
丸投げOK!GASで業務システムを構築します
現在のExcelや作業手順を確認し、入力画面、管理画面、自動集計、通知、帳票作成などを構築します。
何を自動化すべきか分からない方
その事務作業をGASで自動化できるか診断します
現在の作業方法から、自動化できる部分、手作業のままがよい部分、構成案、概算費用をご提案します。
複数店舗・拠点の依頼を共有したい方
複数拠点の連絡・依頼管理アプリを構築します
店舗、工場、営業所などの依頼を、送信・確認・回答・完了までWeb画面で管理します。
社内のお知らせを「送っただけ」で終わらせたくない方
「聞いてない」を防ぐお知らせ確認GASを構築します
全社、拠点、部署、個人へお知らせを配信し、誰が確認したかを一覧で管理します。
詳しい仕様書は必要ありません。
「このExcelは担当者しか触れない」
「休むと業務が止まる」
という段階からでもご相談いただけます。
既存ファイルをご共有いただく際は、氏名、売上、顧客情報などを架空データへ置き換えてください。
まとめ
担当者が休むと業務が止まる原因は、その人の能力が高すぎるからだけではありません。
・ファイルの保存場所が分散している
・判断基準が共有されていない
・Excelの中身が複雑
・例外対応が記録されていない
・現在の状態を本人しか把握していない
といった仕組みの問題があります。
属人化を減らすために必要なのは、担当者を増やすことだけではありません。
・どこから依頼を受けるか
・どこへ記録するか
・誰が対応するか
・いつまでに対応するか
・現在どこまで進んでいるか
・何をもって完了とするか
を、誰でも確認できる形にすることです。
まずは、現在「自分しかできない」と感じている仕事を一つ選び、
・作業手順
・判断基準
・保存場所
・次の担当者
・完了条件
を書き出してみてください。
業務を人の記憶ではなく、仕組みに残すことが、属人化を減らす最初の一歩です。
ユウタ|ひとり総務×AI業務改善
中小製造業で総務・管理業務に携わりながら、Googleスプレッドシート、Googleフォーム、GAS、生成AIを活用した業務改善に取り組んでいます。
高額なシステムを導入するほどではないけれど、担当者が休むと業務が止まってしまう。
そんな中小企業の仕事を、現場で無理なく使い続けられる仕組みに整えています。