キャリアの捉え方|「本当の自分」という言葉の正体

キャリアの捉え方|「本当の自分」という言葉の正体

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おはようございます。2級キャリアコンサルティング技能士|合同会社たお代表の工藤でございます。今日のテーマは、「『本当の自分』という言葉の正体」についてです。

「本当の自分らしく生きたい」という言葉を、耳にすることがあります。けれど、「本当の自分」とは、一体何を指しているのでしょうか。

「本当の自分」とは

心理学者カール・ロジャーズは、自己概念(self-concept)を構成するものとして、自己像(self-image)や理想自己(ideal self)などを論じました(Rogers, 1951; 1959)。自己像は「自分は何者か」という、経験や他者との関わりの中で形成される認識です。理想自己は「自分はどうありたいか」という、目指す姿です。そして、この自己概念と、実際の経験との間にズレが少ないほど「一致(congruence)」した状態にあり、ズレが大きいほど「不一致(incongruence)」の状態にあるとされています(Rogers, 1959)。

この理論を踏まえると、「本当の自分」という言葉が指しているものには、少なくとも二つの可能性がありそうです。一つは「自己像(自分をどう捉えているか、どう見られたいか)」、もう一つは「実際の経験や感覚そのもの」。この二つがズレているとき、人は「本当の自分が分からない」と感じるのかもしれません。

さらに、自己分析や診断ツールで「自分は〇〇なタイプだ」と言葉にする前は、日々のいろいろな経験(例えば、自分の性格に合わないような行動を取ってしまった、など)が起きても、それを「ズレ」としてわざわざ意識することはなかったはずです。ところが、一度、何かの自己分析ツールで「自分は〇〇なタイプだ」と自己像が言葉で表されるようになると、その後に起きる経験の中で、その自己像と合わないものが出てくると、「あれ、これは自分のタイプと違う」と、はっきり「ズレ」として意識されるようになる。つまり、自己像を言葉にする前には、そもそも「ズレ」という捉え方自体が存在していなかったのに、言葉にした瞬間に、「ズレ」という概念が生まれて、それ以降の経験がそのズレに照らして自分自身を評価してしまうこともしばしばあります。

ズレをなくすには、どうする

一方で、ロジャーズは、自己概念と経験のズレを減らす方法として、「自分はこうだ」という像をより正確に探し当てることを勧めたわけではなかったように思います。彼が重視したのは、むしろ「無条件の肯定的関心(unconditional positive regard)」。つまり、これを「本当の自分」探しに当てはめると、「もっと正確な自己像を見つける」ことではなく、むしろ「自己像を固定しようとする視点を、いったん緩める」ことにあるのかもしれません。経験が自己像と合わないときに、「これは本当の自分じゃない」と判定するのではなく、「これも含めて自分なんだな」と、ただ受け止めてみる。そうすることで、自己の固定観念と経験の間にあったズレそのものが、徐々に気にならなくなっていくのかもしれません。つまり、「本当の自分を探す」ことをやめて、「今、自分が経験したことを、そのまま受け止める」ことに切り替えた瞬間が、本来の自分へと戻る瞬間になるのだと思います。

今の経験していることを素直に受け止めるには

「本当の自分」という言葉について考えてきて、私は、今の経験をそのまま受け止めていく中で、自然と見えてくるものなのかもしれないと思います。それでは、「今の経験をそのまま受け止める」には、具体的にどうしたらいいのでしょうか。

一つは、経験が起きた瞬間に、評価することを一旦止めて、「今、こう感じた」「今、こう動いた」という事実だけを、言葉にしてみることだと思います。「これは自分らしくない」と判定する前に、まず起きたことそのものを、ただ記述してみる。評価と事実を分けることで、自己像との比較に飛びつかずにいられるのかもしれません。もう一つは、一人で受け止めようとせず、誰かに、その人にとっての経験として尊重してもらう、という関わりを持つことだと思います。ロジャーズの「無条件の肯定的関心」は、もともと、カウンセラーがクライアントに向ける関わり方として語られたものでした。つまり、自分一人の内側だけで完結させるのではなく、誰かが尊重してくれる経験を通して、自分自身も、自分の経験を受け止めやすくなっていく、という順番があるのかもしれません。

おわりに

「本当の自分」とは、「こうだ」と固定された答えを探し当てることではなく、自己でも他己でもいずれの評価をも手放しながら手放しながら、今の自分の経験を、少しずつ受け止め続けていく過程であり、そのことにより少しずつ「自分とは?」がわかってくるのだと思います。また、その対話先には、体系立てて訓練されている、キャリアコンサルタントの存在がいるということをぜひ覚えておいていただけると嬉しいです。

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出典
Rogers, C. R. (1951). Client-Centered Therapy. Houghton Mifflin.
Rogers, C. R. (1959). A Theory of Therapy, Personality, and Interpersonal Relationships. In S. Koch (Ed.), Psychology: A Study of a Science, Vol. 3.


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