好き避けで、
人生でいちばん大切にしたかった瞬間を
自分の手で逃したことはありますか?
僕は、あります。
そしてその未遂は今でも、
ふとした瞬間に胸の奥へ落ちてくる。
「なんで、あの時……」
「たった一言でよかったのに……」
「受け取る勇気さえあれば……」
そんな後悔を、
何年経っても思い出してしまう相手がいます。
K子ちゃん──。
僕がずっと心の中でそう呼んでいた女性です。
彼女がこっそり僕を呼んで、
そっとプレゼントを手渡してくれた日のことを、
僕は今でも忘れられない。
あれはただの社交辞令だったのか。
それとも……
僕が受け止められなかった“何か”だったのか。
この記事は、その未遂の記録です。
でも同時に、
これは“あなた”の話でもあります。
もし今、
好きなのに話せない。
怖くて近づけない。
相手のサインに気づきながら、
見ないふりをしてしまう自分がいるのなら──
僕の未遂録が、
あなたの未来をひっそり照らすかもしれない。
あの日、僕が逃げた“1秒”に、
あなたならどう向き合いますか?
第1章 「俺なんてどうせ…」と、チョコに本気を見いだす男心
バレンタインが近づくと、
男って妙に落ち着かなくなりますよね。
特別な期待なんてしてない。
……いや、ちょっとはしてる。
「義理だってわかってるのに、
なんか“特別”が紛れてないかな」
そんなくだらない妄想を、
僕は毎年どこかでしていました。
あの日もそうだった。
K子ちゃんからもらったチョコは、
みんなに配られたものの中のひとつ。
その瞬間、
胸の奥で何かがスッと引いた。
「へぇ〜、そういう感じね。
ま、だよね……(笑)」
そんな強がりを言いながら、
内心ではしっかり落ちてた。
だってその年の僕は、
自分が“外側の人間”だって
ずっと感じていたから。
僕は社員じゃない。
“業務委託”という立場で、
会社に出入りしていただけ。
みんなと同じ空間にいるのに、
どこか輪の外側に立っているような感覚があった。
だからこそ、
「自分だけ特別」なんて
思ってはいけない気がしてた。
でも……心のどこかでは、
少しくらい期待してしまっていた。
自信がない男って、
こういうところで本気になるんです。
「もしかして俺だけ包装が違う?」
「俺にだけメッセージ入ってたりして?」
そんな妄想にすら、
ちょっと命かけてたりする。
でも現実は、
みんなと同じ“ひとかけらのチョコ”。
たったそれだけで、
僕は勝手に凹んで、
勝手に諦めモードに入ってた。
「やっぱ俺なんて、そんな存在だよな」
そうやって自分を下に見積もり続けるクセが、
この頃の僕の“好き避けの始まり”だった気がする。
第2章 あの一言の“甘さ”が、僕の心をずらした
僕が職場を離れることを発表した日のことだった。
いつも通りの空気のはずなのに、その日はなぜか、
K子ちゃんがこっちを見ている“間”が多かった気がする。
作業をしていると、
ふいに彼女がすっと近づいてきた。
そして、小さな声で言った。
「えー……もういなくなっちゃうんですね。
なんか……寂しいです」
たったそれだけの言葉なのに、
胸の奥に“何か”が落ちた。
これって仕事の同僚に言う言葉なのか?
それとも、ただの社交辞令なのか?
頭ではそう考えるのに、
心の方はなぜか勝手に反応していた。
そのあと、彼女は続けてこう言った。
「私、雇ってください(笑)」
その瞬間、
僕の脳内は一瞬だけバグった。
いやいやいや、そんなわけ……
いや、でも……
ん? 今の言い方、なんか……甘くないか?
“連れてってよ”
“一緒にいたいよ”
そんなニュアンスが、
ほんの一滴だけ混ざっているように聞こえた。
もちろん、冗談だ。
仕事の流れだ。
わかってる。
……わかってるんだけど、
男ってこういう時、
一瞬だけ未来を妄想してしまう生き物なんだ。
「え、俺んとこ嫁に来るってこと……?」
みたいなアホみたいな妄想が、
一瞬、頭の片隅に浮かんでしまった。
自分でも笑ってしまうような妄想なのに、
まったくのゼロでは片づけられない“距離感”が
確かにそこにあった。
でも僕は、その揺れを必死で打ち消した。
期待したって無駄だろ。
踏み込んで勘違いだったら、地獄だろ。
もし本当に冗談だったら、どれだけ恥をかくんだ。
そうやって自分の中でブレーキを踏みまくった結果、
口から出た言葉はこれだった。
「いや、いらねーし(笑)」
完全に逃げグセの返事だった。
言った瞬間、
あぁ……またやっちまった、と思った。
彼女はふわっと笑った。
でもその笑顔は、
どこか“そっと閉じるような”笑顔だった。
僕が受け取れなかった“何か”が、
あの1秒の中に確かにあったんだと思う。
第3章 女性社員の“ひと言”が心に突き刺さった
あの日の出来事を、
僕はうちの職場の女性社員に何気なく話した。
K子ちゃんが言った
「寂しいです」とか、
「私、雇ってください(笑)」とか。
ちょっとした雑談のつもりだった。
ところが──
話し終わった瞬間、
彼女は秒でツッコんできた。
「……社長、それ、
普通に好意ありますよ?」
え?
いやいや、そんな…
僕が言葉を探している間に、
彼女はさらに追撃を放ってきた。
「ていうか社長……
“いや、いらねーし(笑)” って、
全力の好き避け発動してどうするんですか🤣」
う、うるせえ……!!
こっちは必死なんだよ!!
でも彼女は止まらない。
**「女から “寂しい” とか、
“雇ってください(笑)” とか、
あれ全部 “距離を縮めるサイン” ですよ?
社長、なんで流すんですか!!」**
なんでって……
いや、だって……
もし本当に冗談だったら、
本気で返して恥かくのは俺だし……
そう言い返そうとしたけど、
彼女はさらに深いところを突いてきた。
「女の“冗談”って、
本気を隠すためのオブラートなんですよ」
僕は言葉を失った。
彼女は机に肘をついて、
少し首をかしげながらこう言った。
「本当に脈ナシの相手に、
二人きりで“寂しい”なんて言わないし、
“雇ってください(笑)”なんて甘えないですよ」
いや……
そうかあ……?
僕の中で、
K子ちゃんのあの笑顔が
スローモーションで蘇ってくる。
女性社員はさらに言った。
「あれ、踏み出してよかったやつですよ。
むしろ “可能性あったやつ” です」
その言葉は、
僕の心の真ん中に
ズシンと落ちた。
僕はずっと、
拒絶されるのが怖くて逃げてた。
でももしかしたら──
あの日だけは、逃げなくてよかったのかもしれない。
第4章 彼氏の噂と、僕が自分で引いてしまった“境界線”
本当は惹かれていたのに、
誰かの“たった一言”で終わらせたのは──
僕自身だった。
K子ちゃんの“あの一言”で、
僕の心はたしかに揺れていた。
でも──
その揺れは、
たった“ひと言の噂”で簡単に折れていた。
それは僕がこの会社に来て1ヶ月ほどしてからの歓迎会での話。
僕は一次会で帰った。
週明け、仲のいい男性社員が何気なくこう言った。
「そういえば昨日、K子ちゃん
彼氏が迎えに来てたらしいよ」
その瞬間、
僕の中で何かが“スッ”と冷えていった。
え……彼氏……?
たったそれだけの情報なのに、
僕はもうそれ以上、
何も考えられなかった。
本人から聞いたわけでもないし、
深い話をしたわけでもない。
でも──
その一言で僕は“恋になりそうな気持ち”を
全部、そっと蓋をした。
「まぁ……そうだよね。
こんなビジュ良くて、性格もいいし、
おまけに仕事できる子だし…彼氏いないわけないよな」
そうやって、自分に言い聞かせた。
“諦める理由”としては十分すぎた。
でもその後も、
彼女はなぜか僕に話しかけてくれた。
ゴミ捨てに行こうとすると、
「手が空いたんで」とついてくる。
その最中も特に大した話をしたわけじゃない。
けどその“何でもない時間”が、
僕にはやけに心地よかった。
ある時は、
彼女がスマホを見せてきた。
ライブに行った時の写真。
笑顔で「これ見てください〜!」と差し出してくる。
あれって、
ただの同僚に見せるテンションじゃない。
女の“距離縮め行動”そのままだった。
さらにある日──
作業中に彼女が指を怪我してしまった。
小さく声を上げて、
僕のところへ来てこう言った。
「指切っちゃいました〜」
その声が、
どこか子どもみたいで甘かった。
僕も思わず反射で言ってしまった。
「大丈夫か、どら?」
指先を軽く触れた瞬間、
彼女はすぐにサッと手を引っ込めた。
でもその“引っ込め方”が、
照れ隠しのようで、
どこかくすぐったいようで、
僕の胸には変な温度だけが残った。
こうした2人きりになる時間は
いくらでもあったはず。
……にも関わらず、
僕はLINEを聞こうとしなかった。
聞けるタイミングだってあったのに。
“彼氏いるんだろうし”
“邪魔しちゃダメだよな”
“それに俺、好き避け発動してるし”そんな言い訳が、
僕の心をずっと守ってくれた。
守ったつもりが、
気づけば“未遂”へ一直線だった。
本当は……
守っていたんじゃない。
ただ、
踏み出す勇気がなかっただけだった。
踏み出せなかったその一歩が、
どれだけ大きなものだったのか──
僕はまだ知らなかった。
第5章 “好き避け男子”と“察してほしい女子”の、すれ違い沼
K子ちゃんは、
僕の気持ちの蓋を
ゆっくり優しくノックしてくれていたのかもしれない。
ゴミ捨てについてきたり、
ライブ写真を見せてきたり、
「指切っちゃいました〜」と甘えてきたり。
あれは全部、
“ほんの少し距離を縮めたい”
そんな女の、
控えめで、でも確かなサインだった。
でも僕は、
そのサインを真正面から受け取らなかった。
いや、違う。
受け取れなかった。
彼氏の噂のせいにして。
自分の性格のせいにして。
仕事の関係性のせいにして。
僕が逃げるための理由は、
いくらでも用意できた。
一方で、
K子ちゃんは“察してほしい側”だった。
女の「寂しいです」なんて、
勇気がいるに決まってる。
女の「雇ってください(笑)」なんて、
甘えがなきゃ言えない。
女の「指切っちゃいました〜」なんて、
頼りたい人にしか言わない。
でもその全部を、
僕は“ただの会話”で片づけていた。
だって、
気づいてしまったら──
踏み込む勇気が必要になるから。
だから僕は
“気づいてないふり”をした。
これが、
すれ違い沼の正体だった。
好きだけど避ける男。
怖いから察してほしい女。
お互いちょっとずつ近づいて、
でもあと一歩で止まる。
本当なら届いていたかもしれない“距離”が、
お互いの弱さで
少しずつ少しずつズレていく。
そして最終的には──
何も起きない。
でも何かあった気がする。
そんな未遂だけが残った。
僕はずっと、
「踏み込めばよかった」と
後になって思ったけど、
きっとK子ちゃんにも、
「もっと分かってほしかった」と
感じた瞬間があったのかもしれない。
それを誰も責められない。
どちらも悪くない。
どちらも不器用で、
どちらも優しくて、
どちらも臆病だった。
だからこそ、
すれ違った。
こんなにも近くにいたのに、
触れられる距離まで来ていたのに。
最後の1秒だけ、
互いに踏み込めなかった。
だから僕らは“未遂”のまま終わった。
第6章 あの日、僕は踏み出せなかった──そして未遂は“記憶”になった
僕は結局、
LINEを聞かなかった。
帰り際に声をかけもしなかった。
あれだけ距離が縮まっていたのに、
温度だって確かに感じていたのに、
僕は──
最後の1歩を踏み出せなかった。
そして最終日。
僕は午後の外回りから戻って、
もう一度K子ちゃんに
「ありがとう」って言おうと思った。
ほんの短い言葉でよかった。
「今日までありがとう」
「話せて嬉しかった」
それだけでよかった。
でも彼女の席は、
もう空っぽだった。
いつもなら遅くまでいるはずなのに、
その日に限って、
彼女はもう帰っていた。
机の上にあったのは、
いつも丁寧に並んだ仕事道具だけ。
あの子の気配だけが
ふわっと残っていた。
その一瞬で悟った。
あぁ……終わったんだな。
これが“未遂”ってやつなんだなって。
僕が踏み出さなかった1秒。
僕が聞かなかった一言。
僕が受け取れなかった“甘え”と“サイン”。
全部が、
あの空になった席の上に静かに置かれていった。
そんなに大きな恋じゃなかったのかもしれない。
他の誰かから見れば
ただのすれ違いで、
ただの片想いで、
ただの勘違いだったのかもしれない。
でも僕にとっては──
人生で一度しかない“温度”だった。
触れた指先の体温も、
ふいに見せてくれた写真も、
小走りでついてくる足音も、
あの子どもみたいな声も。
全部、僕の中では
ちゃんと“特別”だった。
それを言葉にできなかったのは、
ただ僕が臆病だったから。
逃げたのは彼女じゃなくて、
僕自身だった。
僕はあの日、
“未遂で終わる恋”を
自分で選んでしまったんだ。
でも──
後悔ばかりじゃない。
今になって思う。
未遂でも、人は誰かを想ったぶんだけ優しくなれる。
未遂でも、心は確かに前へ進める。
未遂でも、次の恋を動かせる自分が生まれる。
もし今あなたにも、
“あの時言えなかった気持ち”があるなら、
誰かの優しさを
気づかないふりして逃げているなら、
その一歩を
僕の代わりに踏み出してほしい。
僕は踏み出せなかった。
でもあなたなら、踏み出せる。
未遂の恋はもう戻らない。
でも、未来はいくらでも書き換えられる。
あの日、僕は動けなかった。
だからこそ、あなたは今日、動けますように。
もし今、
あなたにも“未遂のまま抱えている気持ち”があって、
ひとりで整理しきれないのなら──
いつでも話して下さい。
その気持ちを言葉にした瞬間、
未来は必ず動き出すから。
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