はじめに:メンタルって、なんでそんなにややこしいの?
はぁ…なんか最近毎日しんどい。でも理由がわかんないんだよね。お母さんに相談しても、そのうちよくなるんじゃない?って言われるし…
なんか顔色悪いぞ?確かに、朝からため息出たり、体がだるい日ってあるよな。元気になりたいけど、どうすりゃいいんだろう?
なるほど。それ、ちゃんと“心がSOSを出してるサイン”かもしれませんよ。
学校でもSNSでも、メンタルヘルスのことって意外とちゃんと教えてくれないものです。
せっかくなので、誰も教えてくれないメンタルヘルスの秘密を、わかりやすくお話していきましょう。
登場人物紹介
「ユキさん」
想像力が豊かすぎる高校2年生。美術部。
「かなたくん」
めんどくさがりな高校2年生。サッカー部。
「所長」
近所で相談室を開業している謎の人物。
第1章:メンタルヘルスって、「病んでるかどうか」じゃない
これ、よくある誤解なんですけど、「メンタルヘルス」=「病気」だと思ってません?
え?だって「メンヘラ」ってメンタルヘルスの略ですよね?メンタルがヘラってるのは病気じゃないんですか?
…メンタルが…ヘラっている…?ちょっと何を言ってるのかよくわかりませんが、メンタルヘルスについての知識が一般的になる前にネットスラングが広まってしまった結果、
「メンタルヘルス」=「メンヘラ・メンヘル」=「心が病んだ状態の人」
という認識になってしまっているようですね。
でも、よく考えてみてください。「メンタルヘルス」は日本語に訳すと「心の健康」ですよ? 全く逆の意味ですね。
確かに簡単な英語だよな。なんで心の病気のことだと思ってたんだろ?
「心の健康」かぁ…なんか学校で聞いたことあるような気がするけど…なんだっけ?
文部科学省の学習指導要領では、「生きる力」を育む教育として、
・小学生「心の健康」
・中学生「欲求やストレスへの対処」
・高校生「精神疾患の予防と回復」
が示されていますので、お二人はすでに習っているはずですよ。
そう言われてみれば…習った気がする。あれがメンタルヘルスの授業だったんだ!道徳の延長みたいな感じで聞いてたかも。
道徳の延長と考えても間違いではないですが、それだとどうしても
「メンタルヘルス」=「気持ちの問題」=「気合で何とかなる」
と思ってしまいがちですね。
あ!それ、今朝お母さんに言われた。「気合が足りないんじゃないの?」って。
心の健康は体の健康と同じです。良い時もあれば悪い時もある。
たとえば、ちょっとしたことでイライラしたり、急に無気力になったり。
それって「弱い」わけでも「甘えてる」わけでもなくて、心が疲れてる証拠かもしれないですよ。
メンタルヘルスはグラデーション。
「元気」と「病気」の間に、“疲れてる心”っていうめっちゃ広いゾーンがあるイメージです。
心のSOSに気づかず、「もうむり」の向こう側に限界突破してしまうと、様々な症状が出て治療の対象になってしまいます。
体の健康と同じだと思ったら、わかりやすいかも。スポーツでも、疲れてるのに休まないで無理したらケガするもんな。でも、心が疲れてるかどうかって、わかりにくくない?
第2章:「心のしんどさ」は、意外と“体”にも出る
お二人は、こんな経験ないですか?
• 朝起きた瞬間からだるい
• 頭痛とか腹痛が続くけど、病院行っても「異常なし」
• 寝ても疲れが取れない
あるある!最近胃のあたりがずっと痛くて、病院に行ったけど異状なしって。胃に優しいものを食べてくださいねって言われたけど、別に暴飲暴食してるわけでもないし…
それ、“心の疲労”が体に現れてるサインかもしれません。
脳って、強いストレスを感じても防衛機能が働いて、しばらくの間は耐えられるようになってるんです。
でもそれが長期間続くと、自律神経がバグってきて、「なんか体調悪い」がずっと続くようになります。
だから、「体の不調」も「心からのSOS」として受け取ることが大切なんです。
そうなんだ。じゃあ、私の「なんか最近毎日しんどい」も「胃が痛い」も、心が疲れているからってこと?
そうですね。まずは内科的な疾患の可能性を疑いますが、病院に行っても何も見つからないようであれば、メンタルから来る不調かもしれません。他に、元気だった時と比べて、変わったことはないですか?趣味とか楽しめてます?
そういえば、私、絵を描くのが好きなんだけど、最近は、なんか楽しいと思えなくって。好きな絵を描いてたら元気出るかなと思ったのに、どうしちゃったんだろう…
第3章:「やる気が出ない」は、サボりじゃない
・頑張ろうと思ってるのに、動けない
・好きなことすらやる気出ない
これ、本人からするとめちゃくちゃしんどいですよね。
そうなの!でも、親からは「もっとしっかりしなさい」とか、「いっつもダラダラして」って言われちゃうんだよね…怠けてるんじゃないんだけどな…
それがメンタルの不調の難しいところなんです。本人は元気になろうと必死に頑張っているのに、外から見ると「怠けてるように見える」から、なかなか理解されなくて、余計に傷つくんです。
どうせ私の気持ちなんてわかんないし、わかってくれないなら別にいいやって思っちゃうんだよね。「違う!」って怒る元気もないっていうか…
その状態を、心理学的には「無気力状態(アパシー)」と呼びます。
脳のエネルギータンクがスッカラカンになってる状態です。
スマホも充電0%だと、アプリも起動できないじゃないですか。
それと同じで、まず“充電”しないと始まらない。
今の私は充電切れってこと?確かに頭の中が空っぽで、ぼーっとする感じはあるかも。
第4章:SNSとメンタルの関係、めちゃ深い
そういえば、ユキってインスタとかXに自分の描いた絵、よく上げてたよな。最近見かけないけど、やめちゃったのか?
う~ん…最初はたくさんの人が見てくれるだけで嬉しかったんだけど、だんだん「いいね」の数とか、コメントとかが気になりだして。もっと「いいね」もらえるようにって焦って…。
でも、私よりうまい神絵師もネットにはたくさんいて、たぶん同世代だと思うんだけど…私って何なのかなって思ったら、絵を描くのも辛くなってきちゃったんだよね。
…お前の不調の原因、それじゃね?
!?
インスタとかXとかTikTokとか、すごい楽しいけど、しんどいことも多い。
なんでかって言うと、他人と比べてばっかになるから。
• 「みんなリア充っぽい…」
• 「自分だけ取り残されてる気がする…」
• 「あの人はすごいのに、自分は…」
こういう感情が積もっていくと、自己肯定感がダダ下がりしてしまう。
SNSは、便利だけど“疲れる装置”でもあるってことを忘れないでほしいです。
ほんとにそうかも…なんで気付かなかったんだろ…?
第5章:「メンタルやばい」と思った時、どうする?
正直、「もう無理かも…」って感じること、あると思う。
でも、いきなり心療内科とかはハードル高いですよね?
そりゃ無理だよ!なんか…そういう病院、怖いもん。飲んだら心が落ち着く薬とか出されるんだろ?絶対やべーやつじゃん!
…それは完全に誤解ですが…まぁ、今日はいいでしょう。
「メンタルやばい」と思った時、誰にでもできる対処法を紹介します。
1. 信頼できる誰かに「今つらい」と言う
親でも友達でも、先生でも、誰でもいい。
「今ちょっと心がしんどい」って言ってみるだけでも、脳のストレスが少し軽くなります。
2. 自分を観察するノートをつける
ユキさんのように、何に疲れてるのか自分で気づいてない人も多いです。
日記やスマホのメモで、「今日あったこと」「今の気持ち」だけでも書いてみると、頭が整理されてきます。
3. 無理せずプロに相談してもOK
心療内科とかカウンセリングは、「重症な人が行く場所」じゃないです。
むしろ「軽いうちに来てくれたほうがありがたい」と思ってる医療者も多いんですよ。私もそう思います。
そっか。かなたと所長に「しんどい」って言えたから、自分が何に疲れてるのか気付けたんだ。私一人じゃ、ずっと原因が分からないままだったかも。
第6章:メンタルヘルスのために、日常でできること
じゃあ、普段から心が元気でいられる方法ってあるの?
俺はいっつも適当だから大丈夫だけど、ユキみたいに真面目で思いつめやすい、めんどくさい性格の奴には必要だと思うんだよね。
うるさいなぁ!めんどくさくないから!!
まぁまぁ…では、明日からすぐにできる方法を紹介しましょう。
• 寝る時間と起きる時間をなるべく一定に
生活リズムは心の安定に超重要です。医療機関で行う精神科リハビリテーションでも、まずは生活リズムの安定が目標になるくらいです。
心のSOSが体の不調として現れるというお話を先ほどしましたが、逆に体の調子を整えることで、心も元気を取り戻しやすくなるんですよ。
• “しんどい”って口に出してもいいルールを自分に
「あ、今自分のメンタルはしんどいんだ」ってことに、自分で気づけることが大事です。 自分の気持ちを、まずは自分が受け止めて。「しんどい!」「つらい!」「もうやだ!」って口に出しちゃいましょう。
• 完璧主義より「6割主義」でOK
ユキさんは、自分の描いた絵を見たとき、どう思います?
う~ん…頑張って描いたけど、まだまだ上手に描けるはずって思う。構図も色使いも、もっと良くできると思うから…
じゃあ、かなたくんは、自分のサッカーの腕前、どう思います?
そりゃプロと比べたら全然へたくそだし、3年の先輩たちにも追いつけてないけど、去年の自分と比べたら上手くなってる気はするから、まあいっかって思うかな?
…人によって全然考え方が違うんだ…「去年の自分と比べたら」か…
俺、ユキの絵ずっと見てるけど、去年よりすげー上手くなってるぞ。もっと自信持っていいんじゃないか?
え?…そう…なんだ。ありがと。
どちらがいい悪いではなく、「まあいいか」って言えるだけでメンタルにかなり余裕が生まれるんです。必要な時はしっかり集中して完璧を求める。それ以外はまぁ、ほどほどでいっか。
今の自分はまだまだだけど、去年の自分よりは成長してる。だから、まあいいかって考えましょう。
俺は何事も「まあいいか」って感じだけどな。すごいだろ!
それは向上心なさすぎじゃない…?
• スマホ時間に“休憩”を挟む
SNSに疲れている人におすすめなのが、「デジタルデトックス」です。
常に情報に囲まれていると、想像以上に疲れてしまうものです。まずは寝る前の1時間だけマナーモードにしたり通知をオフにしてみましょう。
最初は不安かもしれませんが、想像以上にゆっくり眠れるようになりますよ。
芸能人やユーチューバーが「しばらくSNSから離れます」っていうのもデジタルデトックスですね。
…まずはお母さんに「心がしんどい」って言ってみる。自分から言わないと、周りの人は、なかなか気づけないってわかったから。寝る前にスマホも見ないようにする。
それがいいです。メンタルの不調は家族でもなかなか気付けません。家族が異変に気付いて医療機関に連れてくるのは、「もうむり」の先まで行ってしまった後のことも多いんですよ。
まとめ:心って、もっと自由でいい
~1週間後~
かなた!所長!聞いて聞いて!
お母さんに「心がしんどい」って言ったら、すごい慌てて仕事中のお父さんにまで電話しちゃって。
二人とも「どうした?」「なにがあった?」「私たちにまかせなさい」って。
思ってた以上のリアクションだったから、笑っちゃった。
…でも、嬉しかったな。
それはよかったですね。メンタルヘルスって、もっとみんなが気軽に話していいテーマだと思うんです。
• 「しんどい時はしんどいって言っていい」
• 「休むのは逃げじゃない。充電」
• 「元気なフリしなくてもいい」
この感覚が当たり前になれば、もっと生きやすくなるはずです。
そうだよな。心はみんな持ってるのに、なんでメンタルヘルスが広まらないんだろう?
メンタルヘルスの専門家がテレビとかのメディアに出るときって、何か重大な事件や事故が起きたときとか、災害が起きたときばっかりなんですよね。
もちろんそれも大切なお仕事ですが、心の健康ってもっと身近なものだし、心理学ってすごく楽しいものなんですよ。私はそれをたくさんの人に知ってもらいたいと思っています。
みんなが生きやすい世の中になったらいいよな。所長が教えてくれたこと、もっと早く知ってればユキだってこんなに悩まなくてよかったかもしれないし。
かなたが私の絵を褒めてくれたことも、すっごい嬉しかったよ。「去年より上手くなってる」って。
え?
あれからSNSの評価とか、あんまり気にならなくなっちゃった。相談乗ってくれてありがと。じゃ、またあとでね!
やっぱり、あいつよくわかんねー。
…でも、元気になってよかった。所長、ありがとう。
……好きなんですか?
はぁ!?そんなわけねーし!誰があんなめんどくさいやつ!
所長のばーか!ばーか!
お似合いだと思いますけどねぇ…
あなたの心は、あなたのもの。
誰かと比べなくても、ちゃんと価値がある。
だから今日も、自分を大事にしていきましょう。