七つの息子が、貯金箱を空にして、私にしたこと。
記事
小説
ー えんたくの、しずかな物語 ー
・・・
その年の春、私は、体を壊した。
命にかかわる病気じゃない、と医者は言った。
でも、しばらくは無理をするな、と。
・・・
パートを、一つ、減らした。
家計は、もともと、ぎりぎりだった。
・・・
その頃から、翔太は、何も欲しがらなくなった。
お菓子を素通りし、楽しみだった遠足も「行きたくない」と言う。
聞き分けが、よくなったんだと、思っていた。
・・・
ある日、早く帰ると、子ども部屋から、声がした。
翔太と、お友達の。
・・・
「なんで、いつも、お金ためてるの」
「……お母さん、びょうきなんだ。
おくすり買うために、ぼくが、ためてるんだ」
・・・
私は、玄関で、動けなくなった。
欲しがらなかったのは、聞き分けじゃ、なかった。
七つの体で、ぜんぶ、わかっていたのだ。
・・・
それから、しばらくして。
ある晩、翔太が、もじもじしながら、言った。
「お母さん、ここ、すわって」
・・・
言われるまま、私は、椅子に、腰をおろした。
・・・
ぶうっ。
・・・
間の抜けた音が、おしりの下で、鳴った。
・・・
見ると、椅子の上に、ブーブークッション。
ふと、貯金箱に目をやると、空に、なっていた。
・・・
翔太は、息を詰めて、私の顔を、じっと見ていた。
「お母さん……わらう?」
・・・
その必死な顔で、ぜんぶ、わかった。
あの子は、貯めたお金で、これを、買ったのだ。
私を、笑わせるために。
・・・
「お母さん、このごろ、ぜんぜん、笑わないから。
テレビで、お医者さんが、言ってたんだ。
わらうと、びょうき、よくなるって。
だから……おくすりより、さきに」
・・・
私は、笑っていた。
笑いながら、涙が、止まらなかった。
・・・
その涙を見て、翔太の顔が、さっと、こわばった。
「……ごめんなさい。
わらわそうと、したのに。
お母さん、泣かせちゃった」
・・・
慌てて、ブーブークッションを、隠そうとする。
私は、その手を、止めて。
翔太を、ぎゅっと、抱きしめた。
・・・
「ちがうの。
これは、うれしくて、泣いてるの。
すごく、すごく、おかしかった。
お母さん、こんなに笑ったの、ひさしぶりよ」
・・・
腕の中で、翔太が、ほっと、力を抜いた。
ひょうしに、どこかが、また、ぶうっと、鳴った。
私たちは、顔を見合わせて、今度は、声をあげて、笑った。
・・・
あの子が選んだのは。
薬じゃ、なかった。
・・・
でも、あの晩、私を、ほんとうに生かしたのは。
あの、間の抜けた、ぶうっ、という音、だった。
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
・・・
人を大切に思う気持ちに、上手も、下手も、ないのだと思います。
・・・
正解は、薬だったのかもしれない。
でも、あの子が選んだ、ちぐはぐな、ぶうっという音が、
お母さんを、いちばん、生かした。
・・・
正直に言うと、私は、逆のことを、したことがあります。
・・・
娘に、良かれと思って、アドバイスをした。
でも、それが、かえって、あの子の負担に、なってしまった。
・・・
想いは、あった。
ありすぎたのかもしれません。
でも、その想いは、うまく、届かなかった。
・・・
だから、知っています。
想うことと、それが届くことは、別なんだと。
・・・
私は、タロットの鑑定をしています。
ご相談のなかで、よく聞く言葉があります。
「私のやり方は、間違っているんでしょうか」
・・・
大切な人に、うまく言葉をかけられない。
良かれと思ったことが、空回りする。
・・・
だから、私は、「こうすればいい」と、答えを出せる人では、ありません。
私自身が、間違えるんですから。
・・・
ただ、ひとりで考えていると、
「想い」と「やり方」が、こんがらがって、ほどけなくなる。
・・・
それを、カードと一緒に、並べてみる。
どこで、想いと、やり方が、すれ違っているのか。
・・・
答えを出すのは、私じゃ、ありません。
並べているうちに、あなた自身が、気づくんです。
・・・
もし、想いが空回りして、立ち止まっている夜があるなら。
いちど、いっしょに、並べてみませんか。
・・・
私の鑑定は、対面では、ありません。
あなたの状況を、文章で送っていただいて、
私が、ひとり静かにカードを並べ、
鑑定書を書いて、お返しします。
人に顔を見られず、急かされず、あなたのペースで。
◆ ココナラ|えんたくの鑑定
えんたく