ペアローンの割合は、夫婦それぞれが住宅ローン控除を無駄なく使える借入額を確認し、将来も負担できる返済額に合わせて決めることが基本です。
控除額だけを増やすために借入れを偏らせず、頭金を含めた資金負担と所有権の持分、団体信用生命保険(団信)による保障まで一緒に整理しましょう。
「半分ずつなら公平」「年収に合わせればよい」と考えやすいものの、同じ年収でも所得税額、休業の予定、自己資金、直系尊属から贈与額は異なります。
夫婦に共通する一つの正解はなく、ご家庭の税負担とライフプランを数字で確かめることが必要です。
【結論】住宅価格、諸費用、残す預貯金から総借入額を整理します。次に、各人の収入・税額と今後の働き方を確認しましょう。
ペアローンの割合を、5:5や現在の年収比だけで決めない
ペアローンは、同じ住宅に対して夫婦それぞれが住宅ローンを契約する方法です。各自が債務者となり、金融機関の商品条件に応じて相互に連帯保証人となります。住宅ローン控除も、要件を満たせば各人が自分の借入れについて適用を受けます。
そのため、世帯年収の合計が同じでも、借入れをどちらにどの程度配分するかで、実際に受けられる控除額や万一の際に残る返済負担が変わります。5:5、年収比に近い割合、一方の借入れを多くする割合を候補にして、同じ総借入額で比較すると違いを確認できます。
最初に購入予算と無理のない総借入額を決め、その範囲で配分を検討しましょう。
確認するのは、夫婦それぞれの「実際に使える住宅ローン控除額」
住宅ローン控除は、一定の要件を満たす住宅について、年末残高等を基に計算した額を税額から差し引く制度です。
2026年入居の現行制度では控除率は0.7%ですが、住宅の区分、入居年、各人の適用要件によって控除対象の借入限度額と期間が異なります。
例えば、2026年・2027年に入居する新築のZEH水準省エネ住宅では、通常の借入限度額は3,500万円、控除期間は13年です。一定の特例対象個人に該当すると、借入限度額は4,500万円となります。上乗せの適用は年齢、配偶者・扶養親族、床面積などの条件で確認が必要です。
上乗せは各人の要件で判定します。ただし、扶養控除を受ける一方だけが対象とは限りません。同じ19歳未満の扶養親族が夫婦双方の扶養親族にも該当する場合の取扱いがあるため、税法上の判定を確認します。
ここで区別したいのが「制度上計算できる控除可能額」と「税額から実際に差し引ける額」です。年末残高に0.7%を掛けた金額が、そのまま全額戻ってくるとは限りません。取得対価、補助金、住宅取得等資金の贈与に係る特例の利用などによって、計算の基礎となる額にも調整があります。
まずその年の所得税から控除し、引ききれない額は一定の範囲で翌年度の住民税の所得割から控除されます。
2026年から2030年の入居者について、住民税側の上限は所得税の課税総所得金額等の5%、最高97,500円です。実際に控除できる住民税の所得割額も確認します。住民税の年税額全体や、すべての人に97,500円の枠があるという理解ではありません。
したがって、比較するのは各人の所得税で使える額と、翌年度住民税で使える額の合計です。使いきれなかった控除額を翌年以降へ積み立てたり、配偶者の控除に移したりすることはできません。所得税から翌年度住民税への控除と、未使用額を後年へ繰り越すことは区別しましょう。
夫側への配分を増やすと控除対象の借入限度額を超え、妻側には使える税額が残る場合があります。反対に、妻側の税額が少なく控除を使いきれない場合は、夫側を増やした方が世帯の控除実額を確保しやすいこともあります。どちらが有利かは、源泉徴収票等を基に各人の税額を確認して判断します。
試算では、iDeCo、社会保険料、扶養、基礎控除等と他の税額控除を反映します。住宅ローン控除適用後の源泉徴収税額を、そのまま控除余力に使わず、その年の制度で控除前の本体所得税を計算します。
世帯の控除実額が配分により変わる仮定例
2026年入居の新築ZEH水準省エネ住宅で、夫婦とも特例対象個人に該当せず、各人の借入限度額が3,500万円になる場合を考えます。控除対象用途の年末ローン残高は、夫婦合計6,000万円と仮定します。
所得税の課税総所得金額は夫245万円・妻120万円とし、住宅ローン控除前の本体所得税は夫147,500円・妻60,000円です。翌年度住民税で使える上限は夫97,500円・妻60,000円となり、各人が所得税と住民税を合わせて使える額は、夫24.5万円・妻12万円です。
年末ローン残高(夫/妻)控除可能額(夫/妻)実際の控除額(夫/妻)世帯3,000万円/3,000万円21万円/21万円21万円/12万円33万円
3,500万円/2,500万円24.5万円/17.5万円24.5万円/12万円36.5万円
4,500万円/1,500万円24.5万円/10.5万円24.5万円/10.5万円35万円
この仮定では、半分ずつの案より、夫3,500万円・妻2,500万円の案の方が、単年の世帯控除額は3.5万円多くなります。一方、夫4,500万円の案では、夫の控除計算に使える残高は3,500万円までのため、集中させても世帯の控除額は増えません。
控除を使いやすい配分を探すことと、借入れを一方へ集中させることは同じではありません。
実際の計画では、将来の税額と残高の推移、返済余力を合わせて比較します。
※取得・借入計画段階の3案を比べる単年の仮定例です。既存のローンや登記持分を自由に変更できることを示すものではありません。各人の取得対価・持分が計算に十分あり、補助金・贈与特例による調整はなく、他の税額控除もなく、住民税の所得割額は十分あるものとしています。年末残高は借入限度額を適用する前の残高であり、当初借入額や当初の借入比率とは一致しない場合があります。復興特別所得税の減少効果は含めていません。この配分を各家庭の最適解として推奨するものではありません。
育休・時短勤務・転職を含め、将来の手取り変化と返済負担を確認
現在の収入が続く前提だけで割合を決めると、働き方が変わった後の負担を見落としやすくなります。育児休業、時短勤務、転職、独立、退職などを予定している場合は、該当する年の手取り収入と税額を改めて見積もりましょう。
収入が減る期間は、住宅ローン控除の実額が小さくなる可能性がある一方、契約上の返済は続きます。生活費、教育費、住宅の維持費、貯蓄の取り崩しを併せて確認し、控除が少なくなる年も家計を維持できる配分かを判断します。
また、控除期間が終わった後もローン返済は続きます。教育費が増える時期、定年後の収入、金利が上がった場合の返済額まで見込むと、借入れを集中させる側の負担が将来も妥当か確認できます。税額面の効率と、日々の暮らしを続けられる返済余力を一つの表で比較することが役立ちます。
所有権の持分は、頭金を含む取得資金の負担と合わせる
借入れの割合と、登記する所有権の持分は、頭金がある場合などには一致しません。持分を考える際は、各人の借入額に、取得に充てる自己資金や親から贈与を受けた資金などを加え、誰がどの程度の購入資金を負担するか整理します。
国税庁は、実際の購入資金の負担割合と登記持分が異なる場合に、贈与税の問題が生じることがあると説明しています。「控除を多く受けたい」「名義を半分ずつにしたい」という希望がある場合も、資金負担との整合性を確かめることが必要です。
さらに、購入時に決めた持分だけでなく、返済開始後の資金の出所も確認します。育休中に配偶者のローンを肩代わりする、相手の借入れを自分の資金で繰上返済するといった場合にも、贈与の論点があります。返済口座の名義に加えて、実際に誰の資金で返済するかを確認し、記録を残しましょう。
夫の割合を増やせば、住宅ローンの金利は下がる?
夫婦で同じ金利、同じ借入期間、同じ返済方法を選び、総借入額も変わらなければ、計算上は配分だけを変えても世帯の総利息は原則として変わりません。
一方の適用金利が低い場合には、他の条件が同じなら、低い側に配分することで利息を減らせる可能性があります。
例えば、「大企業や公務員勤務の夫の割合を増やすと必ず金利が下がる」とは断定できまんが、比率を変更したときの適用金利や借入可能額は、借入先への確認事項です。
金融機関には、検討する割合ごとに夫婦それぞれの借入可能額、金利、団信の条件、月々の返済額、諸費用を提示してもらいましょう。
金利が下がる案でも、住宅ローン控除の実額が減ったり、追加の保険負担が増えたりする可能性があります。利息だけでなく、税額控除と保障費用も含めた家計全体の負担で比較すると、借入比率を変える効果を判断しやすくなります。
団信は、夫婦どちらに万一があった場合も確認する
通常の各自加入型の団信では、所定の支払事由に該当した人のローンが保障され、もう一方のローンは残ります。
夫の借入割合を増やすと、夫が亡くなった場合の妻の残債は小さくなりますが、妻が亡くなった場合には夫の残債が大きくなります。
残された人の収入だけでなく、家事・育児のサポート費用、勤務時間を減らす可能性、遺族への給付も反映し、両方の場合の家計収支を確認しましょう。また、病気で収入が減っても、団信の支払条件に該当しない期間があります。勤務先の休業中の給与、公的給付、手元資金で対応できる期間も整理します。
双方の残債を保障する連生型団信も選択肢ですが、加入条件、保障割合、上乗せ金利、税務上の取扱いは商品ごとに確認が必要です。
例えば、生存者側で免除された債務が一時所得となる取扱いを案内する商品があります。商品名だけで同じ保障と考えず、被保険者のしおり等で適用条件を照合します。
最適な割合は、控除を無駄なく使える範囲と、各人が将来も負担できる返済額を重ねて考えます。控除額の差だけで決めず、利息・保険の追加費用、教育費・老後資金への影響まで含めて比べましょう。控除を増やすために、必要以上に借入額を増やすことは避けます。
借入比率を決めるための進め方
最初に、住宅価格、諸費用、残す預貯金から総借入額を整理します。次に、各人の収入・税額と今後の働き方を確認し、候補となる割合を複数作ります。それぞれについて控除の実額、毎年の返済負担、夫死亡時・妻死亡時の家計を比較し、資金負担に合う持分と手続きの順序を確認します。
準備する資料は、夫婦それぞれの源泉徴収票や確定申告書、住民税の通知書、金融機関の金利・返済額の見積り、物件の性能を確認できる書類、頭金・贈与資金の内訳、加入中の保険内容などです。借入額や団信を変更する際の審査・期限も、契約前に銀行へ確認します。
ペアローンの割合を、ライフプランと一緒に考えたい方へ
PrivateFp合同会社では、借入割合の候補ごとに、住宅ローン控除の活用、毎年の返済負担、保障、教育費・老後資金を含めたライフプランを一緒に整理します。
お客様の最善の利益を考え、ご本人とご家族が納得して意思決定できるよう支えることを大切にしています。全国からのオンライン相談に対応しています。
お客様の最善の利益を考え、ご本人とご家族が納得して意思決定できるよう支えることを大切にしています。全国からのオンライン相談に対応しています。
相談者の条件に合う選択肢を一緒に整理します。お気軽にご相談ください。