子どもに、つい強く言ってしまった。
職場で相手の一言に反応して、きつい返事をしてしまった。
家族に協力してほしかっただけなのに、気づけば責めるような言い方になっていた。
その場が過ぎて、少し落ち着くと思う。
「本当は、こんなふうに伝えたかったわけではない」
「次は穏やかに話そうと思っていたのに」
そんな夜に、自分の言葉を何度も思い返してしまうことはありませんか。
相手を大切にしたい。関係をよくしたい。その思いがあるからこそ、自分の対応が気になることもあると思います。
ただ、後悔を繰り返すだけでは、次に何をすればよいかが見えにくいことがあります。
そこで今回は、一つの出来事を書き出し、次の関わり方を考えるための小さなワークをご紹介します。
紙とペンでも、スマートフォンのメモでも構いません。落ち着いて振り返れるときに、最近の一場面を思い浮かべてみてください。
「いつもこうなる」を、一つの場面にしてみる
「私は、いつも怒ってしまう」
「相手は、全然分かってくれない」
気持ちが強く動いた後には、このような言葉で出来事をまとめたくなることがあります。
そんなときは、振り返る範囲を少し狭くしてみます。
いつ、どこで、何があったのでしょうか。
例えば、
「今朝、出発時刻の五分前になっても子どもが着替えていなかった。私は『何回言えば分かるの』と大きな声で言った」
ここまで具体的にすると、振り返る場面がはっきりします。
朝の時間に余裕がなかったのか。
着替えを始める合図が曖昧だったのか。
子どもに手伝いが必要だったのか。
自分自身が、すでに別のことで疲れていたのか。
どこから考えるかを選べるようになります。
最初に書くのは、**「実際に何が起きたか」**です。
自分や相手の性格について結論を出す前に、その場で見聞きしたことを短く記録してみてください。
**気持ちの中に、いくつかの言葉を見つける**
次に、そのときの気持ちを書いてみます。
怒り。
焦り。
悲しさ。
不安。
寂しさ。
困惑。
一つだけに決める必要はありません。
「腹が立った。でも、遅刻しそうで焦ってもいた」
「強く言い返したけれど、本当は話を聞いてもらえず悲しかった」
そんなふうに、複数の気持ちが見つかることもあります。
うまく言葉にならないときは、「もやもやした」「余裕がなかった」でも大丈夫です。
このワークで大切にしたいのは、今の自分に近い言葉を探すことです。
そして、もう一つ問いを置いてみます。
「あの場面で、私は何を大切にしたかったのだろう」
時間を守りたかった。
協力してほしかった。
自分の話も聞いてほしかった。
子どもに安全でいてほしかった。
安心して仕事を進めたかった。
すぐに分からなくても構いません。思いつくことを一つ書くだけでも、伝えたかった内容を考える材料になります。
思いが分かると、伝える言葉を考えられる
例えば、家族に「どうして何もしてくれないの」と言ってしまったとします。
振り返ってみると、その日は仕事が長引き、帰宅後の家事も重なっていた。本当は、少し手を貸してほしかった。
そこまで整理できたら、次に使う言葉を考えます。
「今日は疲れているので、夕食後の食器をお願いできる?」
「今、二つのことを同時にできないので、どちらかを手伝ってもらえると助かる」
相手が必ず応じてくれるとは限りません。それでも、自分が何に困り、何を頼みたいのかは、具体的に伝えられます。
職場なら、こんな言葉も考えられます。
「この部分の認識が違っているかもしれないので、確認してもよいですか」
「今日中の対応は難しいため、優先順位を相談したいです」
子育てなら、子どもの年齢や、その場でできることに合わせて考えます。
「次は靴下を履こう。手伝ってほしいところはある?」
「出発する前に、あと何をするか一緒に確認しよう」
正解の言い方を一つ覚えるというより、自分の思いと相手の状況に合う言葉を探していきます。
自分の言い方と一緒に、生活の条件も見直す
振り返っているうちに、「もっと優しく言えばよかった」と、自分の対応だけに目が向くことがあります。
もちろん、伝え方を見直すことには意味があります。同時に、無理が重なっていなかったかも確認したいところです。
予定が詰まりすぎていた。
一人で担当することが多かった。
必要な情報が共有されていなかった。
相手と話す時間を取れていなかった。
こうした条件があれば、言葉に加えて、準備や役割分担を変えることも選択肢になります。
朝の支度なら、前の晩に服を用意しておく。
家事なら、誰が何を担当するかを話し合う。
仕事なら、締め切りや優先順位を先に確認する。
自分の気持ちを整理することと、負担を減らす工夫は、一緒に考えてよいのです。
相手を理解しようとすることも、自分の困りごとを伝えることも、どちらも大切にしていきます。
今日使える、四行の振り返りメモ
ここまでの内容を、四つの問いにまとめます。
①何が起きた?
②そのとき、何を感じた?
③何を大切にしたかった?
④次に一つ試すなら、何をする?
例えば、次のように書けます。
①朝、子どもの支度が終わらず、強い口調になった。
②焦りとイライラを感じた。
③時間を守って、落ち着いて出発したかった。
④今夜、明日の服を子どもと一緒に用意する。
最後の一歩は、自分が実際に試せることにします。
「絶対に怒らない」と決めるよりも、「前の晩に服を用意する」「返事をする前に、相手の意図を一度確認する」といった行動のほうが、実践したかどうかを振り返りやすくなります。
すでに相手を傷つける言い方をした場合には、その言い方について謝ることも、選べる行動の一つです。
「さっきは大きな声で言ってしまって、ごめんね」
そのうえで、伝えたいことを改めて話す時間を考えてもよいと思います。
一度うまくいかなかったら、どこを変えられるでしょうか
新しい方法を試しても、思うように進まない日はあります。
そのときは、次の三つを振り返ってみてください。
・少しでも役立ったことは何か。
・難しかった条件は何か。
・次は、どこを小さく変えるか。
前の晩に準備しても、朝の支度が進まなかったかもしれません。
それでも、服を探す時間は減っていた。次は、着替えを始めるタイミングを考えてみよう。
そんなふうに、一つずつ確かめていきます。
習慣化でも、感情との付き合い方でも、実際に試した経験は次の工夫につながります。
できた日だけを見ず、難しかった日の条件も含めて、自分に合う方法を探していく。その過程を大切にしたいと思います。
自分の場面に合わせて整理したい方へ
今回ご紹介した四行のメモは、一人で取り組める小さな振り返りです。
一方で、書こうとしても考えがまとまらないことや、同じ場面で何度も悩むこともあると思います。
私のコーチングでは、具体的に困っている場面を伺い、気持ちや考え、生活の条件を整理しながら、次に試す対応を一緒に考えます。
子育てのイライラ。
職場での伝え方。
家族との役割分担。
続けたい行動が続かない悩み。
話す内容がまとまっていなくても大丈夫です。「最近、こんなことがあって」と、一つの場面から始められます。
今日の振り返りで、一つでも試してみたいことが見つかったら、まずはそれを短く書き残してみてください。
その一歩を、自分の暮らしに合わせて育てていきましょう。
|習慣化と対話のコーチ