自分の強みに注目して生きることは、行動に自信と方向性を与えてくれます。そして、その強みを見つけるためのツールとして多くのビジネスパーソンに愛用されているのが「ストレングス・ファインダー」です。
この記事では、ストレングス・ファインダーの資質の一つである「原点思考」に着目し、その特徴と、才能を“本当の強み”へと進化させるためのヒントをお伝えします。
原点思考の特徴:過去の分析から未来を切り開く
今回取り上げる「原点思考(Context)」は、過去を振り返ることで学びや洞察を得ようとする資質です。一見すると「後ろ向き」なイメージを持たれがちですが、実はこの原点思考こそ、ビジネスの現場で強力な武器になり得ます。
たとえば、新しいプロジェクトを始めるときにも「過去に類似の事例はなかったか」「どのような経緯で失敗や成功をしたのか」といった情報を積極的に集め、分析しようとします。そこから得られるレッスンやパターンが、今後の意思決定をより良いものにしてくれるのです。
具体的な特徴
歴史や背景を重視する過去の成功事例や失敗事例を参照することで、現在や未来の行動をより正確に見極めようとします。
伝統や文化への理解が深い「この企業文化が生まれた背景は?」というように、組織やチームのルーツを大事にするため、変化を推進する際にも過去の良さを活かしたいと考える傾向があります。
過去の事象を生かして計画を練る安易に最新トレンドに飛びつくのではなく、過去から続くデータやアーカイブを参照し、論理的に組み立てていく姿勢を持ちます。
一方で、過去を深く掘り下げるという資質ゆえに、新しい挑戦に対して「慎重すぎる」と受け取られることもあるかもしれません。しかし、原点思考を上手に生かせば、ただの慎重派ではなく“確実性と説得力を兼ね備えたアドバイザー”となれるのです。
原点思考を“本当の強み”に進化させるための行動・思考のヒント
原点思考を持つ人は、昔の資料を読み返したり、関連する過去の事例をリサーチしたりするのが得意で、むしろそれを楽しむ傾向があります。この資質を“本当の強み”として活かすためには、以下のような行動・思考を意識してみるとよいでしょう。
(1)「過去に学ぶ」から「未来をデザインする」へ意識をシフトする
過去のデータや事例を蓄積することに長けている原点思考ですが、ただ「学習」に終わってしまうと、その本領を十分に発揮できません。大切なのは、過去の知見をどう「未来の計画や戦略」に結びつけるか、というアクションです。
自分がリサーチした情報を、チームに共有して提案してみるたとえば「以前のプロジェクトで○○な失敗があったから、今回は別のアプローチを考えましょう」という具合に、過去の失敗を踏まえてリスクを回避できるアイデアを打ち出します。
過去の成功事例やノウハウを活かし、新しい挑戦へ応用する「前回はこういう方法で成功した。今回はどう変化や改善を加えられるか?」といった視点を取り入れることで、過去の遺産が“未来の武器”に変わります。
(2)ストーリーテリングで周囲を巻き込む
原点思考の人は、過去の出来事や歴史的背景を語るのが得意です。その特徴を活かして、「今ここに至るまでのストーリー」を周囲に伝えることで、チーム内のモチベーションや理解度を高めることができます。
新プロジェクトのキックオフで「私たちのチームがここに至るまで、こんな試行錯誤をしてきました。その過程で○○が課題でしたが、今度こそ乗り越えるタイミングです」など、過去を交えながら語ると説得力が増し、チームメンバーも共感しやすくなります。
(3)同じく未来志向や戦略性の資質を持つ人と組む
「原点思考」は、過去の事象から得た学びを活かせる一方、「明確な未来ビジョンを描くのはやや苦手」と感じる場合もあります。そこで、ストレングス・ファインダーの他の資質、たとえば「未来志向」や「戦略性」を強く持つ人とタッグを組んでみると、相互に補完し合う関係が生まれます。
原点思考 × 未来志向過去のデータや事例を踏まえつつ、遠い未来のビジョンを描くことができるので、抜け漏れの少ない計画を立案しやすくなります。
原点思考 × 戦略性戦略性のある人は、多様なシナリオを検討してベストな選択肢を選ぶことが得意。原点思考が提供する具体的な過去情報や知見があれば、戦略性のアウトプットがより的確になります。
(4)「学び」の記録と活用をクセにする
原点思考の人は、過去から学ぶ行為自体が好きです。ですから、さらに強みを伸ばすには、その学びを記録していつでも取り出せるようにしておくのが効果的です。メモやブログ、ナレッジツールなどを活用し、自分だけの“経験データベース”を構築してみましょう。
過去の成功・失敗例
プロジェクトで得た教訓
読んだ書籍や記事のレビュー
これらを蓄積していくと、自分の知見がどんどん増幅され、いざというときの“秘策”となってくれます。
もっと深く自分の強みを理解しよう
原点思考を含む34の資質は、あくまで「どんな才能の種を持っているか」の入り口にすぎません。才能の種は、周囲の環境や自分の行動、そして他の資質との組み合わせ方によって、まったく異なる花を咲かせるからです。
たとえば、原点思考と「調和性」の組み合わせを強く持っている人は、チームの意見をまとめるときに、過去の会議録を参考にしながら合意点を見つけるのが得意かもしれません。一方で、原点思考と「競争性」が高い人は、過去の成果データを駆使して目標達成のシミュレーションをし、自分が勝ち抜ける戦略を構築する力に優れるかもしれません。
このように、同じ「原点思考」という資質を持っていても、その人が持っている他の資質や価値観、経験によって強みの現れ方は大きく違ってきます。
「自分の資質をもっと深く知りたい」「組み合わせによる強みの可能性を知りたい」と感じた方には、Gallup認定ストレングスコーチによるコーチングをおすすめします。
ストレングスファインダーの結果をもとに、対話を通じて立体的にあなたの才能を見つめ直すことで、今まで気づかなかった“本物の強み”が浮かび上がってくるはずです。
過去を振り返る力は、決して保守的なだけの資質ではありません。むしろ、それを未来に生かすことで抜群の安定感と説得力をもたらしてくれる、ビジネスパーソンにとって頼もしい資質なのです。あなたも原点思考を本当の強みに進化させ、より豊かなキャリアと人生を切り開いてみませんか?