1on1で部下に「将来どうなりたい?」と質問することは、よくある光景です。しかし、それだけでは本当に部下のやる気を引き出すことができない場合があります。人が持つモチベーションにはさまざまなタイプがあり、その理解が1on1の質を劇的に向上させる鍵となるのです。
本記事では、「未来にモチベートされるビジョン型」と「日々の価値観を大事にする価値観型」という二つのタイプについて説明し、それぞれにどのようにアプローチすれば良いかを考えていきます。
部下に「将来どうなりたい?」と聞くだけでは不十分な理由
「将来どうなりたい?」という質問は、一見すると1on1で有効な問いかけのように思えます。この質問に答えられれば、その部下は将来の目標に向かって自ら進んでいけるかもしれません。しかし、すべての人が「未来のビジョン」に強くモチベートされるわけではありません。「Willハラ」なんて言葉もありますが、そうならないように気をつけなければなりません。
実際には、未来のビジョンに対して強く動機づけられるタイプの人もいれば、むしろ「今この瞬間をどう生きたいか」「どのような価値観を大切にしたいか」によって動かされる人もいます。この二つのタイプを無視して、ただ「将来どうしたい?」と尋ねるだけでは、相手の本当のやる気を引き出せないリスクがあるのです。
1. 未来にモチベートされるビジョン型
このタイプの人は、自分の未来に対する明確なビジョンや目標を持つことでやる気を引き出されます。たとえば、「5年後にはマネージャーになりたい」「将来的には自分の事業を立ち上げたい」など、未来に対して強いイメージを持つことがモチベーションの源泉です。
ビジョン型の部下に対しては、以下のようなアプローチが効果的です。
具体的な目標設定をサポートする: 5年後、10年後に何をしていたいのか、どんなことを成し遂げたいのかを具体化し、それに向けてのステップを共に描くことで、本人のビジョンをより鮮明にしていきます。
進捗を確認しフィードバックを与える: 目標達成に向けた進捗を定期的に確認し、小さな成功を祝い、フィードバックを与えることで、彼らが目指す未来に向かう意欲を維持できます。
このように、ビジョン型の部下には、長期的な目標とその達成に向けたサポートが必要です。彼らは未来の可能性にワクワクすることで日々の努力に励むことができます。
2. 日々の生き方を大事にする価値観型
一方で、未来に対して明確なビジョンを持つことが得意でない人もいます。彼らにとって大切なのは、「今日」「今週」をどのように過ごすか、どのような価値観を大事にするかです。例えば、「毎日成長を感じたい」「チームと一緒に達成感を味わいたい」といった、日々の充実や価値観の共有が重要なのです。
価値観型の部下に対しては、以下のアプローチが有効です。
価値観を明確にする会話を持つ: どんなことに喜びを感じるか、どんな価値観を大切にしているかについて話し合い、その価値観に沿った働き方やチャレンジを共に考えます。
日常の行動に対するフィードバックを与える: 日々の行動や取り組みが、その人にとって大切な価値観に合っているかどうかを確認し、共感やフィードバックを与えることで、やりがいやモチベーションを保てます。
例えば、「他のメンバーと助け合いながら仕事を進めることにやりがいを感じているなら、それを意識してチームワークを強化するプロジェクトを任せる」といった形で、部下の価値観に寄り添ったサポートが重要です。
部下のタイプを見極めるための質問例
部下がビジョン型なのか価値観型なのかを見極めるためには、いくつかの質問を活用してその反応を見ていくと良いでしょう。以下のような質問を通して、どっちに反応するか、盛り上がるかに注目します。
ビジョン型を見極める質問
「将来的にどんなキャリアを築いていきたいと考えていますか?」
「達成してみたい目標や夢は何ですか?」
価値観型を見極める質問
「どんな時に仕事に満足感を感じますか?」
「どんな価値観を大事にして働いていきたいですか?」
これらの質問を通じて、部下のがどちらのタイプに近いのかを理解し、それに応じた関わり方を選ぶことが大切です。
両方の視点を持つことの重要性
ビジョン型と価値観型のどちらのタイプも、完全に分かれるわけではなく、人は状況や環境によってその比重が変わることがあります。つまり、ある時は将来のビジョンに向かって頑張りたいと思っている一方で、別の時には日々の価値観にフォーカスして充実を感じたいということもあります。ややこしいですね。でも置かれている状況によって変わるというのはご自身を振り返ってみても思い当たるフシがあるのではないでしょうか。
そのため、1on1を行う上で大切なのは、どちらか一方に固執せず、状況に応じて部下のニーズを見極め、柔軟にアプローチを変えることです。これにより、部下の真のやる気を引き出し、より良いパフォーマンスを発揮するサポートができるでしょう。
部下のやる気を引き出す鍵
1on1において「将来どうなりたい?」と質問するだけでは、全ての部下のやる気を引き出すことはできません。ビジョン型と価値観型の二つのタイプを理解し、それぞれに合ったアプローチを取ることが重要です。
ビジョン型の部下には未来の目標を描き、それに向けた計画と進捗を支援する。一方、価値観型の部下には、日々の価値観に沿った行動や取り組みができるようにサポートし、その充実感を共有することが大切です。
こうした理解を深め、部下のモチベーションを最大限に引き出すことで、チーム全体の成長と成果を促進していくことができるのです。ぜひ、次回の1on1で、部下の「やる気の源泉」がどこにあるのかを意識しながらアプローチしてみてください。