(1)問題
以下の文章を読み、問1)~問2)の設問に答えよ。
① 『研究をしようと志す若い人たちにとって、多くの場合、実際に研究をする最初の場所が大学院でしょう。ところが、「大学院で何をやるのか」を正しくイメージできる大学生は案外少ないようです。
② 「高校や大学まで、基本的には教科書や参考書を勉強し、章末についている練習問題を解いて、学習した知識や考え方をマスターするという「勉強」を続けてきた。大学院でやることも、その延長線上だろう。大学院でやることは、たとえば洋書の難しい専門書をたくさん読んで知識を吸収し、練習問題をたくさん解いて、まさに「博識」と言われるようになることだ」と、このように漠然と想像している大学生が少なくありません。
③ まったく違います。大学院は「勉強」するところではなく、「研究」するところです。それは組織の名前を見ればわかります。私が所属している組織は、大学生向けには、「理学部物理学科」ですが、大学院生向けには、「大学院理学系研究科物理学専攻」といいます。大学の「学部·学科」は勉強するところですが、大学院の「研究科·専攻」は、文字通り、特定の専門分野で研究するところです。
④ それでは、「勉強」と「研究」は何が違うのでしょうか。勉強とは、答えのわかっている問題や課題を考えることです。先人たちがすでに考えた課題や解いた問題をもう一度自分でやってみて、知識体系である学問を学ぶことです。これに対して、研究とは、答えのわかっていない課題を考えることだと言えます。ときには、答えがあるのかどうかさえわかっていない課題、あるいは、考える意味があるのかどうかさえわからない課題を考えます。研究してみなければ、答えがあるのか、あるいは意味があるのかどうかわからないからです。
⑤ さらに、「意味があるかどうか」は、それぞれの研究者の価値観によって意見が分かれる場合も多いものです。ですので、「研究」では、同じテーマであっても求めるる答えやそれへのアプローチの仕方が十人十色で違います。これこそが、あとで述べるように、研究の魅力のもとになっているのです。しかし、この事実はあまり大学生や一般の人々に認識されていないのが実情でしょう。
⑥ 答えの決まっている課題や問題を考える「勉強」では、自分の個性や独自の考え方を発揮することはできませんが、「研究」では、研究者自身の個性や価値観が色濃く反映され、大げさに言えば「自己表現」につながります。もっと言えば、分野によっては、研究すべき「謎や課題を発見する」ために研究するとも言えます。
(出典:長谷川修司 研究者としてうまくやっていくには 組織の力を研究に活かす、講談社、2015年、「第1章魅力的な職業「研究者」」より抜粋して引用)
問1)著者が述べている「勉強と研究の違い」について100字以内で要約しなさい。
問2)日本の医療現場における「研究で解決するべき問題·課題」についてあなたの意見を500字以内で述べなさい。
(2)解答例
問1)
勉強は答えのわかっている問題や課題を考える。研究は答えのわかっていない課題を考え、研究者自身の個性や価値観が色濃く反映され自己表現につながり、分野によっては、研究すべき謎や課題を発見するために研究する。
(100字)
問2)
明治時代、軍隊で脚気が大流行した。脚気の原因について論争が起こった。陸軍軍医で最新の西洋医学を学んだ森鷗外らは、その知見から脚気を感染症と考え細菌原因説を採った。これに対し、海軍軍医の高木兼寛は、データに基づき、軍隊内の食事での窒素と炭素の比率が原因であることを主張した。その後、栄養学の発展により脚気はビタミンB1欠乏症であることが明らかとなり、高木らの研究が引き金となって脚気が科学的に解明された。当時、軍隊では玄米から栄養豊富な胚芽などを除去した白米を食べていたため、兵士たちは栄養不足に陥り脚気を発症したのであった。
この論争での学びとして3点挙げられる。第一に医療現場での解決するべき問題は、森鴎外のように研究者の個性が表れている。第二にこの結果、食事の栄養バランスに配慮することが脚気の予防で重要であることが確認された。医学研究においては栄養学などの多角的観点も取り入れるという課題が発見される
ことで、症例の理解がより深まること。第三の論点が一番重要であるが、医学研究においてエビデンスベースドの思考を採り入れることにより研究者の思い込みを排除して、標準的で説明可能な医療を提供する基盤となる。(500字)
OK小論文では、順天堂大学保健医療学部学校推薦小論文のオンライン個別授業の受講生を募集しています。詳細は以下のココナラの講座をご覧ください。