【文章作法・忘れていませんか】問題提起に答える

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(1)減点になる答案の例:設問や問題提起から結論がずれている


 小論文では段落構成が重要と書きました。



 小論文初心者で、よくあるミスとして、結論がずれてしまうという答案をよく目にします。



 小論文の模試で本人はよく書けているつもりでも、返却されてきた答案の点数が以外に低かった。こういうときは、第1段落で自分でした問題提起にきちんと答えていないことが減点の理由になります。

 結論部分は次の2点が必須となります。



 ① 設問に正しく答えている。



 ② 自分が書いた答案の第1段落の問題提起に結論できちんと答えている。



 この2点をしっかりと押さえていないと大幅な減点となります。


(2)減点になる答案の例:設問に正しく答えていない


 それでは、設問に正しく答える、とはどのようなことか。



 まず設問や参考文の趣旨を正確に理解して、これを踏まえて考察した結果が結論になります。ですから、小論文では要約力が必要となります。



 志望校の小論文過去問を解く際、要約問題が出題されていなくても、日ごろから要約する習慣をつけておきましょう(200~400字程度、参考文の長さによる)。



 単に設問や参考文のキーワードから連想しただけの結論では中身が薄く、高い評価点をもらえません。



 したがって、設問に正しく答えるには、次の2点が重要です。



☞ポイント
① 設問文や参考文をよく読む。
② 参考文を要約し、内容を分析・評価する。

 入試ではどの教科にも言えることですが、設問文をきちんと読む、ということは正解を導く上で前提となります。



 急いで読んで、読み飛ばす。



 自分の勝手な解釈で誤読する。



 設問の条件をうっかり読み落とす。


 このようなことがないようにしましょう。② の「参考文を要約し、内容を分析・評価する」については、「<2>発展編(2)参考文がある問題②要約して参考文や設問を分析する」の回で詳しく解説する予定です。



(3)問題提起にきちんと答える


 次の文章は、1段落で提示した問題提起に対して結論部分(第3段落)できちんと答えていない悪文です。


【問題】自由について800字以内で論じなさい。

<解答例1>
1⃣好きなときに自分のやりたいことができるのが自由ではない。好きなときに寝て食べてでは、動物だ。動物は一見、自由に見えるが捕食や生殖活動など個体や種の維持に必要な行動の多くは本能に縛られている。自由とは人間特有の属性であり、自己の意思で「~できる」という能動性が前提となる。それは、単に「~できる」だけではなく、「より巧く」「より美しく」という向上性を伴った価値観に基づいて行なわれる。そこに自由の本質がある。それでは、人間はほんとうの自由をどのようにして獲得することができるだろうか。
2⃣創造者としての芸術家は、孤独に耐え、自己に向き合うことによってオリジナリティのある作品を創り出すことができる。彼らの多くは単独で創造的な作品を世に送り出しているが、私たちの多くはものやサービスを創造する過程において、組織の中で多くの人々との協労が必要となる。組織は異なる価値観の集まった集合体である。このような人間集団を秩序立ててまとめ、効率よく動かすには、ルールや規律が必要となる。このような規律は至るところで組織に帰属する者たちの行動を制限し、時間や身体までも拘束する。私たちはこのような状況に対して著しく不自由を感じる。そうなると、一部の天才的なアーテイストを除いて、自由は手に入らないものとなる。
3⃣このように、自由とは芸術家など限られたごくわずかな人たちだけが享受できる特権であり、私たち市井に生きる者の多くは、会社などの組織の厳しい規律に縛られた不自由な労働下に置かれ、そこには自由な意思や能動性は限られている。そして、労働の間に残された自分の自由になる、余暇の時間に趣味や仲間との娯楽を通して、わずかに自由の欠片、不自由の中の自由という、かりそめの幻想に浸ることができる。過酷な現代社会に生きる私たちにとって、自由とはかくも贅沢なものであることを実感する。(791字)

 <解答例1>では第1段落での問題提起は「私たちはほんとうの自由をどのようにして獲得することができるだろうか」という最後の1文になります。



 これに対する結論部分(第3段落)での解答は「余暇の時間に趣味や仲間との娯楽の中で、わずかに自由の欠片、不自由の中の自由という、仮初(かりそ)めの幻想に浸ることができる」とあって、「ほんとうの自由」ではなく、「仮初め」の幻想としての自由について述べていて、ずれてしまっています。



 このように第1段落での問題提起にきちんと答えていない答案は大幅な減点を覚悟しなければなりません。



 この<解答例1>の答案では、次のように第3段落を全面的に書き換える必要があります。



<解答例2>
1⃣好きなときに自分のやりたいことができるのが自由ではない。好きなときに寝て食べてでは、動物だ。動物は一見、自由に見えるが捕食や生殖活動など個体や種の維持に必要な行動の多くは本能に縛られている。自由とは人間特有の属性であり、自己の意思で「~できる」という能動性が前提となる。それは、単に「~できる」だけではなく、「より巧く」「より美しく」という向上性を伴った価値観に基づいて行なわれる。そこに自由の本質がある。それでは、人間はほんとうの自由をどのようにして獲得することができるだろうか。
2⃣創造者としての芸術家は、孤独に耐え、自己に向き合うことによってオリジナリティのある作品を創り出すことができる。彼らの多くは単独で創造的な作品を世に送り出しているが、私たちの多くはものやサービスを創造する過程において、組織の中で多くの人々との協働が必要となる。組織は異なる価値観の集まった集合体である。このような人間集団を秩序立ててまとめ、効率よく動かすには、ルールや規律が必要となる。このような規律は至るところで組織に帰属する者たちの行動を制限し、時間や身体までも拘束する。私たちはこのような状況に対して著しく不自由を感じる。そうなると、一部の天才的なアーテイストを除いて、自由は手に入らないものとなる。
3⃣しかし、自己の価値観や意思はしばしば独善に陥る。趣味の世界ならば許されよう。社会の多数の他者に受けいれられるには「より巧く」「より美しく」という判断に一定の基準が伴わなければならない。市場経済では、基準は市場の消費者によって決定される。こうして選択された商品が生産者に多くの利益をもたらす。イノベーティブな商品が開発されるには一定のルールや規律によって組織された企業労働者の協働が必要となる。このようなわけで私たちの自由を基礎に働く創造性は組織や規律と何ら矛盾するものではない。(800字)

 <解答例2>では、「私たちはほんとうの自由をどのようにして獲得することができるだろうか」という第1段落での問題提起に対して、第2段落で組織の規律が組織に帰属する者たちの行動を制限し、時間や身体までも拘束して自由を奪う、と自由の獲得をいったん否定します。



 ところが、第3段落では組織の協働によってイノベーティブな(創造性のある革新的な)商品が開発されて消費者に受け入れられて売れることでほんとうの自由を獲得する、という過程が説明されて、第2段落での矛盾点に反論を加えながら、第1段落の問題提起に答えています。

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(4)今回のまとめ

①設問に正しく答える。



②自分が書いた答案の第1段落の問題提起に結論部分できちんと答える。



③設問文や参考文をよく読む。



④参考文を要約し、内容を分析・評価する。



受験生のみなさん、小論文に関すること、何でも質問してください。



コメント欄に書いてね。



それでは、がんばってください。

以上、OK小論文塾長、朝田隆(りゅう)でした!

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