それから約一ヶ月近く。私は免許取得のための勉強に励んだ。
夏休みも終わった頃で、新しい授業も取りつつでの同時並行。まぁ、夏休み前のテスト期間に被るよりは遥かにマジだが。
行きと帰りに問題集を解いては、間違えたところに印をつけてテキストを読み直す。
これまで学んできた勉強のやり方が、こういうところで役に立った。
人間関係がからきしだった僕にとって、学校とは勉強のやり方を学ぶ所だったと言える。
狩猟鳥獣の判別に関しては、罠猟は獣のみで見た目の違いが大き過ぎるので、数回テキストを見直すだけで覚え切れた。
鳥獣の特性は学校で習ったことが一部入っていたこともあり、これは問題集を何度か解いて、特に苦なく理解できた。
猟具である罠に関する知識は、そもそも覚えるべき量が比較的少ないため、これもまた問題集を解いて覚えられた。
問題は法律や制度だ。
これまでの人生で法律をガッツリ覚えたことなんてないし、軽く覚えるにしても高校二年生辺りでおさらばした倫理や公民くらい。
もちろんテキストに書いてあるものを全部覚える必要は無いし、講習で覚えるべき所は教えてもらった。
それにしてもそれなりの量で、法律に記されている細かい数字なんかは暗記するしかない。
仕方なく、テキストと問題集の往復て何とか覚えた。
そして迎えた試験当日。
何を隠そうガッツリ平日なので、学校は休んだ。
先生には予め伝えており、温かい言葉をもらった。
中には『普段からしっかり講義受けてるし、軽い補講出たら出席にしてあげる』と言ってくれた先生も。
普段から真面目にしてると、こういう時に得をする。
そんなわけでバスに揺られながら試験会場に向かった。
今年最後の試験ということもあって、受験者はその年で一番多かったらしい。
私と同年代っぽい人もいれば、私の両親、中には祖父母くらいの年齢の人もいた。
その時初めて気がついたが、模試も含めて、これまでの人生何度か試験というものは経験してきた。
ただ決まって同年代の人ばかりだった。学生が受ける試験は、大抵そうだろう。
だから様々な年代の人達と試験を受けるのは、これが人生初なのだ。
空いてた受付スタッフの席に、一人のお爺さんが腕を組んで座っていて、スタッフかと思ったら、実は受験者で休んでたなんてこともあった。
試験会場で何やってるんだか。
そんなこれまでの試験とは違う雰囲気の中、私も試験会場に入る。
午前中は筆記試験。それに合格した者が午後の実技試験に臨めるのだ。
そして始まった筆記試験。結論から言えば自信を持って合格出来ると言えた。
問題は過去問題集とよく似ているため、問題集をしっかり解けるようになれば、まず迷うことなく解けた。
もちろん応用が効く問題もあるが、それは問題集にしっかり書いてあるため、それはそれでしっかり覚えて対応。
結果的に満点じゃないかと思えるくらい、自分の中では満足のいく結果となった。
筆記試験が終わり退室した後、身体能力の試験に移る。
誰しも受けたことがあるであろう視覚検査などをした後、身体の動きを見る検査があった。
と言っても、そんなに過酷なものじゃない。というか、そんなに過酷だったら僕はともかく、ご老体の方々にはキツいだろうし。
指を曲げたり屈伸したり首を曲げたり、やたら関節の動きを見られた気がする。
そんなこんなで、午前中の試験は無事に終わった。
結果発表の前にお昼ご飯を食べようと、試験会場を出る。
この辺りは来たことがなかったので、近くにあるコンビニを調べてお昼ご飯を買う予定だった。
会場の近くをフラフラ歩いていると、何と講習の時も見かけた家電量販店の別支店があった。
当然のように吸い寄せられ、講習の時同様に特撮のコレクションアイテムにお昼代を溶かすと、やることもなくなり会場に戻る。
そして午後一時になり、筆記試験の結果が伝えられた。
結果は予想通り合格、というか見た感じほとんどの人が合格してた。
そんなわけで午後の実技試験に移る。
みんなで一斉に受けた筆記試験と違い、実技試験はいくつかの班に分かれた。
というのも、罠の試験なら罠の判別と仮設、そして鳥獣の判別など、やることが複数ある。しかも罠の判別と仮設は、一人ずつやらなければならない。
さすがに一斉にやってたら日が暮れるので、班ごとにそれぞれの項目の試験を受けて、空いた時間は筆記試験会場で待機となった。
正直、午後の試験時間の7割は待機時間だった気がする。
そして一時間弱待ち、ようやく私達の順番が回ってきた。
まずは鳥獣の判別だ。
問題集に書いてあったやり方は、試験官と一対一で鳥獣のイラストを見せられる。それを口頭で獲って良いかどうか、良いなら鳥獣の名前を言う、というものだった。
ただ実際には、班ごとに同じ部屋に入り答案用紙が配られた。それは問題番号とその下に空欄があるだけの簡単な紙。
教卓から試験官がイラスト一つずつを見せるから、狩猟鳥獣なら名前を、非狩猟鳥獣なら×を空欄に書くというやり方だった。
たしかに、こっちの方が効率が良さそうだ。
しかしここで気になるのが、イタチの判別だ。
イタチはオスなら狩猟鳥獣だが、メスは非狩猟鳥獣。そして見分ける方法はサイズしかない。メスの方が小さいんだと。
講習では『イラストの余白で判断してください』という、実寸大じゃないイラストを使うと考えると、何ともメタ過ぎるアドバイスを貰った。
ただイラストを一つずつ見せるなら、雌雄で比較なんて出来ないし、それが出来なければ判別も無理だ。
どうするのかと思いきや、ご丁寧にオスの時はメスの、メスの時はオスのイラストを端っこに載せてくれた。
おかげで難なく鳥獣判別の試験は完了し、またしばらく待機。
そして次は罠の判別と仮設の試験。これは同時に行われた。
一人ずつ部屋に入って行うため、面接のように廊下に並んだ椅子に座り、自分の番を待つ。
自分の名前が呼ばれて、私は部屋に入った。部屋にはお爺さんの試験官が二人いた。
私は講習で言われた通り、罠の判別を行い、仮設には箱罠を選んだ。
講習では苦戦したストッパーも一発でかけられ、ネームプレートも忘れずに置いて試験は終了。
実技試験が終わった者から帰って良いと言われていたので、私はそのまま帰宅した。
それから数週間後の試験結果発表日。
発表時間である正午を回り、二限目の授業が終わった瞬間、私はスマホで結果を確認する。
結果は合格。こうして私は、罠の狩猟免許を取得した。